別れ

いま僕はワン公たちと別れ、再び車を東京へと走らせている。


ワン公たち、僕を新しいご主人様としたかったのだろうか。別れ際はかなり名残惜しそうだった。

短時間とは言えこうも慕われると情が沸くというものだが、連れて行く訳にもいかない。

もちろん車には乗せきれないし、もし載せきれたとしても今後隠密行動にはなりえないだろう。

リスクが高すぎる。


そんな僕の心配は杞憂に終わったようで、車に乗り込み走り出しバックミラーをチラチラと見ていたが、ワン公たちは100mほど着いてきたところで立ち止まり、そこからは僕を見送るような形で立ち尽くしていた。

あきらめたのだろうか。

それとも、縄張りでもあるのだろうか。

実家の猫のミーも、僕と妹が買い物に出かけるときに縄張りの端までは着いてきていたが、そこから先は絶対に来なかったのを思い出す。


何にせよ、二度と会うことはないとは思うが、たくましく生きて欲しい。

願わくば再び、人間の敵ではなく友として戻ってきてほしいものだ。


ふと時計を見れば、時刻は22:30。

順調にいけば、0時過ぎには目的の出口に到着するだろう。

僕は気持ちを切り替え、真っ暗な道の先を見据えてアクセルを踏み込んだ。



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