帰路へ
こうして僕は、なんとか無事に本土に上陸を果たした。
そして、あらかじめ決めていたように、壊れていないハイブリッドカーを求めて彷徨うことにする。
後から思えば、東京に辿り着くまでの移動過程で最も苦労したのがこの時だった。
札幌の時の様にカーディーラーを漁ればいいと考えていたのだが、そのカーディーラーが見つからなかったのだ。
札幌でアッサリ見つかったので、軽く考えすぎていたらしい。
まあ、県庁所在地だし田舎ってワケではないからカーディーラーのひとつやふたつは徒歩圏内でも普通にあったからな。
それに比較し、ここは青森県の最北端。
人口密度も少ない故に、ありとあらゆる施設が遠いのだ。
結局は民家に止めてあったものを何件か試した結果、小型車ではあるが動くものを発見できたのはラッキーと言えるだろう。
そう言えば、キーを家探しする際に、その持ち主と思われるゾンビがぬーっと現れた。
流石に油断はしていないつもりではあったが、屋内で突然現れるとやっぱり普通にビビるな。
思わず至近距離でクロスボウをぶっ放した結果、右目から貫通した矢により漫画みたいに柱に釘付けになり、しばらくして動かなくなった。
僕は「車お借りします」と、動かない主に対して呟いた。
……返すアテは無いんだけども。
最近は随分、「
まあ、ゾンビからの窃盗が窃盗罪と言うならゾンビ殺しは殺人罪となるはずだから、何百人単位で殺している僕は大悪党の
そう言うことで、窃盗くらい、今更ってモノであろう。
そう勝手に納得したところで、この民家を離れて乗って来た港の船のところまで車を走らせた。
———————————————————————————————————
さて。東京へと出発しようじゃないか。
ガソリンは北海道から持ってきた予備タンクのものと合わせれば十分に間に合うだろう。
意外とアッサリと上陸できた為に食料に全く手を着けていなかったので、スペースの関係上、用意してきたものの半分も載せることはできなかった。
もったいないけど、食料についてはあまり心配していない。生き残った面々の数からすれば、現在食料は供給過多なのだ。最悪は途中でサービスエリアを漁るなりすればなんとでもなるだろう。
助かることがひとつ。
この車にはカーナビが付いていおり、しかもまだ生きていたのだ。
人工衛星はまだ死んでいなかったということだな。
僕は我が家の情報をインプットし、最短距離を表示させる。
うむ。800㎞ってところか。
行こうと思えば1日で走破も可能だな。
だが、ここで焦って事故ったりゾンビに囲まれたりとかは御免被りたいものだ。
「さあ、帰るか」
僕はふうと息をついて焦る気持ちを抑えつつ、ゆっくりとアクセルを踏み込む。
9月13日、時間は午前7時15分。
晴れ時々曇り。
気が付けば、風は秋の心地よい冷気をまといはじめていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます