包囲再び
高速道路を使用し、ひたすら内陸部を南下する。
意外に思うかもしれないが、高速道路には車両の放置は少ない。
時々事故車はあるのだが、完全に道を塞いでしまっていたり、破壊されて通れないパターンは東京に入るまで2カ所しかなかった。
その場合は戻って下道を一区間走り、再び高速道路に乗って対処した。
この放置車両が少ない件には推察できる。
ゾンビの特徴である帰巣本能は当初から健在だったってことだ。
「あの日」、騒動の発端が深夜だったのもあるが、感染者は昏睡状態に陥る前に、なんとちゃんと車を運転して「自分の家」まで帰ったのだろう。
信号とかもちゃんと守ってたらしいぞ。
なんとも奇妙な話である。
その為だろう。休憩の為に立ち寄ったサービスエリアも意外なほど車は少なかった。
ただフラフラと何体かのはぐれゾンビが出てくるので、その対処で休憩にはならなかったけどな。
結局、サービスエリアから離れた高速道路上の脇に車を止めて休憩したほうが安心なことに気付いたんだけどね。
眠気を感じたら無理をせずに10分程度の仮眠を重ねながら進む。
気は早るが、ここで事故でも起こしたら目も当てられないからな。
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そんな感じで、順調に南下してきた。
現在の時刻は20時を越えている。
ただでさえゾンビが活発化する夜間。
しかも最近の車は光センサーで闇を感知して勝手にヘッドライトを点灯してしまうので、これでは隠密行動もクソもない。
故に、普通に考えるなら日が昇るまで行動しないほうが良いと考えるところだが、僕の場合は安全地帯の確保もせずに一夜を一ヵ所に留まることより、絶えず移動し続けるほうがリスクが少ないと判断し、時速40㎞ほどで慎重に運転を続けていた。
……いや。違うな。
ただ単に、暗闇の中、知らない場所に留まることに底知れない不安を感じたから動いてるって感じかな。
流石に無計画すぎたと思うが、後の祭りである。
今後の反省材料としよう。
そして、東京まであと100㎞弱というところまでやって来た。
もう一息というところなのだが、ここまできてどうしても眠い。
「よし。最後の仮眠を取るか」
もう少しなのに我慢できないのかな、僕の脳は。
こうして僕は運転席のシートを倒して横になり、そんなことを思いながらウトウトと眠りに落ちて行ったのであった。
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どれだけ時間が経ったのだろうか。
数分かもしれないし、時間単位なのかもしれない。
いま何時だろうな?
僕は曖昧に混濁した意識の中、ガサゴソとした物音を感じ取りながら数秒何となくそんなことを考えた後、ハッとして急速に意識が覚醒して跳ね起きる。
そしてすぐに身を屈め、しばらくじっと周囲の気配を伺った。
……囲まれている?
そう。
音や息遣い等の気配から、車の周囲に複数の存在がいることを感じ取れたのだった。
クソっ、何てことだ!
油断したつもりはなかった。
しかしながら、現実はこれである。いくら言い訳したとしても現状は変わってくれない。
僕は小さく舌打ちしながら助手席のクロスボウと鉄パイプを手繰り寄せる。
そして暗視ゴーグルを装着し、恐る恐る周囲を確認する。
すると、そこには思いもよらない景色が広がっていたのだった。
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