<<民主党の夜>>
入院生活の前半戦は、今まで処方されていた大量の余計な薬を抜くことに主眼が置かれたようだった。
しかし、抗うつ剤というもの、急に服薬を止めたら、離脱症状というキッツい副作用が起こりやすい。私の場合、入院初期の隔離室で暮らしていた頃は、殆どいつも、起きてるんだか寝てるんだか、治る方向に行ってるんだか遠ざかっているのか、よく解らなかった。
いろいろな夢を見た。
「例えばどんな感じですか?」
じゅり退院後、じゅり家に定期的に出入りして家事のお手伝いからライフスタイル再構築まで何でもできる介護ヘルパーのNさんが興味津々で訊いてきた。
「例えば、民主党とか」
「民主党? じゅりさん民主党好きなんですか?」
「うん、私は民主党支持。そのせいか民主党の主なメンバーが私の病室に勢揃いしていたの」
「その人たちは一体何をしていたんですか?」
Nさんの少女のような切れ長の眼がまん丸くなっている。
「そうねぇ、政権を自民党に奪還されたことへの反省会、それからイメージ戦略…」
「イメージ戦略?」
「うん、野田さんは服装で失敗していたとか言ってたわ」
今となっては細かいことは忘れてしまったが、民主党の代議士たちはオーケストラのような配置になっている椅子に腰掛け、真面目に、かつユーモラスに談笑していた。
その内、民主党だけでなく、他の党の若い代議士が混じっているのに私は気づいた。女性だ…あれ?
鳩山由紀夫(だったかな?)が彼女の肩に手を載せる。
「紹介しよう。O渕Y子君だ」
いや、その彼女は自民党の大臣(当時)じゃないんかい…。
「彼女は籍こそ自民党に置いていますが、総裁の安倍氏のやり方に違和感を覚え、超党派での研修によって日本の政治を変えたいとひそかに…」
夢の中で私は茫然としていた。
「それで? それからどうなったんですか?」
Nさん、夢中である。
「それがね…。変なのが出てきたのよ」
「誰ですか!?」
「山本一太」
そう、自民党の安倍氏の盟友、山本一太氏がその場に飛び込んできたのだ。
「僕は真新しい情報が大好きさっ! 僕は生けるインターネット、例えるなら『真夏の夜の夢』のパック。地球をひとっ飛び!!」
夢の中の私の目玉は多分飛び出していた。
Nさんはというと、床の上を転げるようなポーズで笑い転げていた。
…とここで終わるなら、まぁキリが良いと言えるかもしれないけど、民主党の夢と幻影はその後も何度か見ることになった。
その辺の話は、また後日。
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