# 2. かーかきんきんかーきんきん

「……タコ、よ」

「タコ……だと?」


 いつもと違って深刻そうに目を見開く様子はなんか面白いかも。


「もしや全長およそ十メートル、重量五百キロ、足の数は三十二本にもおよぶ、六次元浸蝕感染型多触筋腕水棲生命体。通称タコ、がこの時代にも存在するのか?」


 ろ、ろくじ?

 今なんて言ったの?

 早口??


 しかもなんで説明っぽい感じで言ったのかな?

 バカにしてるのかな?


 気絶してる間にこっそりフニフニしまくったこのほっぺた。

 それを、さらにムニムニしちゃってくれようか?


「なにその覚えにくいし食欲がなくなるような名前のタコ」

「食えないこともない。だが恐ろしくまずい」


 食べたんだー?


 聞き取りづらかったけど気色悪い名前のそれを、食べたんだー……?


「汚染なんとかとか言わなかった?」

「大丈夫だ、問題ない」


 本当に?

 ただちに影響ない、とかじゃない?


「それに足三十二本って、なにそれ? タコじゃないでしょ? タコ以外のなにかでしょう?」


 それにそんなに足あって絡まったりしないの?

 というかそのタコ自身もその数の足、制御しきれるの??


「な……に……? この時代のタコは足の数がもっと多いのか?」

「逆! なんでよ! 八本だよ!!」

「む。少ないな。そんな脆弱な存在に負けたのか」


 足が多いと強いの!? というツッコミはこの際置いておく。


「正しくはタコじゃなくて、タコ焼きを持った子が、『ちこくちこく~!』って叫びながらすごい勢いであなたにぶつかったの」


 それはそれは、とてもベタな展開。


 その時の私は、何故タコ焼き!? と叫ぶしかなかった。


 ぶつかられたこの子は、勢いよく吹っ飛んで気絶した。


 だから物語にあるような出会いも何もない。


「火を繰り出し、相手の行動を阻害するスキルか……? 足が少なくとも技能はあると言うことか」


 うん? なんで納得してるの?

 タコが繰り出した技で気絶したことになってる?


 からかおうと思って、「タコに襲われた」って説明したから?


 いやいや。


「んなわけないでしょ!」

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