10話 男の闘い


連れていかれること5分ほど。


途中からあきらめてついて行っていたので、


引きずられることなく、首から手を放してもらうことができていた。




「さぁ、ここが我が城自慢の闘技場だ。」




王様について行き、暗い道から明るい開けた場所にでると、


そこには客席に囲まれた真四角のステージがあった。




「あの、なんで客席が満員なんですか?」




そう、なぜか急に連れていかれたのに、客席が満員なのだ。




「あぁ、これは私が事前に告知した。これから試練を与えるから兵士たちは見届けに集まれと。」


「試練?」




シルファは無視してステージに上がり、こちらを振り向く。




「よく来たな。」




「いや、連れてこられたのd・・・」


「うるさい。」






理不尽に怒られた。




「さて、ここからは国王も死神も国も地位も何も関係ない。そしてはシルファと呼んでよい。対等な男同士だ。」




シルファは何を考えているんだろうか。


呆けた顔でシルファの顔を見てしまった。




「さぁ、皆の者よく来てくれた。ここにいるのはあの『天災』黒竜を屠った男だ。名をアシナという。」




客席が一気に盛り上がる。


周りを見渡すと、メリナ、リシア、セシア、レティナが客席に座っている。


あれ、あの小さいのはライか?


中世的な顔の少年も近くにいる。




シルファが続ける。


「そして、このアシナを、私の娘のセシアが惚れたようだ。」




一瞬で歓声がヤジに変わる。


あ、そういうパターンね。娘が欲しければ~みたいなやつのようだ。




「娘を軟弱な男にはやらん。黒竜は倒せたかもしれんが、大事な家族を守る一家の、そしてこの国の柱を折ることはできるか。」




客席がまた大歓声に包みこまれた。




「さて、まずはアシナよ。闘技場に上がり、黒竜を討伐した証を見せてほしい。」




ここまで盛り上がられたら、


男たるもの引けないだろう。


これこそ成し遂げたものの特別だろう。


そして、あとでセシアに詳しく聞かないとならない。




あの時意識があったのかどうか。何よりどうして、俺と一線を越えたのか。






ぴょんとジャンプし、闘技場のシルファの横に立ち闘技場の中央に向けて手を伸ばす。


アイテムボックスから黒竜の死体を出す。




「これが黒竜か。近くでみたのは初めてだ。」




うれしそうなシルファが黒竜をまじまじと見ている。




「ありがとう。ではしまってくれて問題ない。また、この黒竜の素材だが買い取らせてほしい。兵士たちの防具や武器を特別なものにしたいのだ。」




「私が使う分はいただきますが、それ以外は大丈夫ですよ。」


黒竜をアイテムボックスにしまう。




「ありがとう。」


シルファが再度礼を言ってくる。




「では、これから本番だ。」




そういえば、この世界はPvPモードなどあるのだろうか。




「さぁ武器を構えよ。」




PvPモードとかそんなのなかった。


本気でやるみたいだ。


しかし、鎌は当たり所が悪く切ってしまうと殺してしまう可能性がある。




仕方なく、セシアを助けるときに最初に持っていた剣を取り出す。




「ほう。良い剣だ。」




シルファが俺の剣の良さに気づいたようだ。ユニーク装備だからな。


シルファは部下たちが運んできた、武器や防具を装備している。




俺も防具を装備する。ローブは悪目立ちするので普通の甲冑を装備する。


シルファと向かい合い距離を取る。




その時気づいた。


シルファの剣が金色に光っていることに。




「シルファ様。その剣はなんですか?」




念のため聞いておく。




「これは国宝の剣だ。」




これはスキルなしで戦ったら死ぬやつで間違いないだろう。




「まって!ストップ!」


ストップの意味が伝わったかはわからないが、


慌てて装備を変更する。




黒いローブ、そして『収穫用の大釜』を大きくする。




「お前、もしかして手を抜こうとしていたのか。」


シルファの目つきがきつくなった。




「下手な当たり方をしたら殺してしまうかもしれないので…。」


装備を素振りしつつ俺が答える。




「良い。ここで私が死んでもメリナがこの国を支える柱になってくれる。本気で来い。」




そこまで言われたからには、手は抜かない。


男同士の本気だ。




「1つだけ。その国宝の剣が壊れることは覚悟してください。」




「ほざけ、簡単に折れるようなものではないわ。いくぞ。」




こちらの準備ができているのを確認したシルファが走ってくる。ものすごい速さだ。


まずは一閃、横に薙ぎ払われたシルファの剣を後ろにひらりと飛んでかわす。


速いが戦えないレベルではない。




シルファが間髪入れずに距離を詰めてくる。


そして、片手で剣を持ってすごい速さで切り付けてる。


横 横 縦 縦 横 縦。




俺は両手を広げて鎌を持ち、柄で受けていく。


この受け方は失敗だった。


素早い剣になすすべがない、鎌を触れるように握りなおせないのだ。




シルファが剣を両手で握り、真上から真下に一直線に振り下ろした。


それもなんとか鎌の柄で受けきる。




「教えてやろう。私のジョブは聖騎士だ。いつまでも受けきれると思うなよ。」


「聖騎士だって?」




俺が当たった『死神』と同列に存在していたジョブじゃないか。


一気に警戒度を上げる。




「オラァ」


腹から声をだし、力任せに柄を無理やり押し上げ剣をはじく。


シルファが距離を取り、剣を肩に乗せながら話しかけてくる。




「さぁどうした。かかってこないのか?」




本当に手を抜く必要はないみたいだ。


鎌を構えなおし、走り出す。


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