9話 報告と今後


「「「セシア」」」




ドアが開くとその先に3人いた。




1人目は見るからに王様な髭がはえているおじさん。


髪の毛は金髪。けっこうがっしりしている。王様は椅子に座って偉そうにしているのが仕事だと思っていたが、


かなり鍛えているようだな。完全に武闘派な感じが見えている。




2人目はたぶんセシアの母だろう。


セシアと同じ銀髪でおっとりしている雰囲気だ。


髪の毛は長く、腰ほどまでありそうだ。




3人目はセシアの姉だろう。


セシアは第3王女ときいているしな。


金髪でつり目、この王女様も剣とか似合いそうな感じ。


ってかきづいたら腰に剣を携えてるし。




「父様、母様、リシア姉さま」




うんうん。あっているようだな。




リシアにセシアかもう一人の姉もシアってつくのかね。




セシアがいなくなってしまったので、ドアを閉めて回りを見渡す。


完全に王様の私室のようだ。




普通に考えて、こんなところに通していいのだろうか。


応接室とかじゃないのか?


俺が悪い人だったら王様の私室わかっちゃうとか攻撃してくれと言っているようなもんだぞ。


まぁ信じてくれているのかもしれないが。




セシアが抱き着いている。


うんうん。感動の再会よかったね。俺どうしたらいいの?




「それで、何があったんだい?」






王様がセシアに聞いてる。


置いてけぼりで話が進みだしちゃったよ?


俺どうしたらいいの?




ってか皆座ってるじゃん。ほんと俺どうしたらいいの…。


悲しくなってきた。帰ろうかな。




「最初はね、レティアと一緒にテスタに向かって真っすぐ東に向かっていたの。そしたら、黒竜が現れてね。」




「なっ…。黒竜か…。」




王様の反応を見るに黒竜はかなりやばい存在だったようだな。




「私を守るために兵士さんたちが立ち向かって逃がしてくれたんだけど、結局すぐに黒竜が追いかけてきたの。だからたぶん兵の人たちは…」




「なるほど。そしてその黒竜はどうしたんだい?」




「黒竜に追われて、死の森の横を抜けたところの湖の前に行ったときに黒いローブの人がいてね。その人が1人で黒竜を倒しちゃった。」




「は…?黒竜を倒した?そして、そのローブの人はどうしたんだ。」




「あっ…」




ここでやっと俺のことを思い出したようだ。


セシアがこちらを振り向き、周りのみんなもこっちを見た。


恥ずかしいな。




「どうも…」


とりあえず、挨拶する。




「ごめん。アシナ忘れてた…。」




うん。知ってたよ…。




「セシア。そちらの方は?」


王妃様が聞いてくる。




「この人が、黒竜を倒して私をここまで連れてきてくれたアシナだよ。」




「アシナです。こんにちは。」




「あ、あぁ…。私は、レピュナ王国の国王シルファだ。娘を助けてくれてありがとう。」




「いえ、たまたま居合わせただけですので。」




セシアが話すといった以上あまり情報を漏らさないほうがいいかもしれない。


できるだけこたえはシンプルに行く。




「このアシナはね。先日の『ヴェリアスト』が召喚した死神なんだよ。」




あ、そんな普通にカミングアウトしていくんですね。


これ下手すると死にますね。




シルファが敵をみるような目でにらんでくる。


なんならもう完全に戦闘態勢だ。


部屋にいた護衛っぽい兵士たちも剣抜いてこちらを警戒している。




とりあえず、両手を挙げて無害アピールする。


どうしたいのかわからない。


困った目でセシアを見る。




「アシナは、敵ではないです。私の姫巫女の力を使って確認したから間違いないよ。」




「確認したといってもしょせんスキルだ。スキルがすべてではあるまい。」




シルファの声のトーンが下がっている。




「私の姫巫女の力が信じられないの?父様。何度も助けられているはずよ。」




「セシア。規模が違うんだ。ほかの国が私を殺すのと、死神が世界を滅ぼすのでは大きな違いだ。」






どんどん、会話がヒートアップしていく。


このままだと収集が付かなさそうだな。


ここは無害アピールでもしておいたほうがいいな。




そう思い口を開いた瞬間。




「あの…「いい加減にしなさい。」」




王妃様がかぶせてきた。


というより、王妃様おっとり雰囲気なのに怒っているのか笑顔が怖い。




シルファもセシアも静かになり、王妃様のほうを見ている。




「あなたたちいい加減にしなさい。特にあなた。黒竜を1人で倒す人から逃げ場なんてありません。覚悟を決めたらどうなんです。」




「母様、アシナは黒竜を1人で倒したのではないわ。瞬殺よ。怪我なども追わずに、一瞬で倒したのよ。」


なぜかセシアがどや顔で反論する。




「まて、黒竜すらもこの死神が呼び出した可能性がある。召喚した魔物を自ら倒したことにし、こちらを信頼させるつもりかもしれん。」




どれだけ俺疑われてるんだろう。


死神というジョブの重みを改めて感じる。


俺が本当に悪いやつだったらすでにここで暴れているだろう。




「どちらにしても今ここでもめることではありません。では、セシア。彼を紹介して頂戴?」




「彼の名前はアシナ。『ヴェリアスト』が召喚したときに偶然巻き込まれた迷い人みたい。私に天啓をくれている神様が介入して、彼を助けたと聞いたわ。だから彼は自我があり、自らの意思で行動ができる。おかげで私やレティナを黒竜から助けてくれたわ。助けてくれた時に、私は彼と取引をしたわ。私たちがこの城に戻ってくるまでの間に護衛を務めてくれたわ。おかげで魔物や冒険者から無事にここまでくることができた。その代わり私は彼の身の安全を保障する。この世界に彼がいる間、私は彼の味方よ。」




「黒竜だけではなく、冒険者?冒険者と何かあったのかい?Bランクの『紅蓮の焔』ってやつらが私とレティナに乱暴しようとしたわ。月夜花という花を使ってね。私はあの程度なら状態異常無効のスキルがあるから大丈夫だったけど。」




え?状態異常無効?何それきいてないんだけど。


ということはセシアはあの時の記憶があるってことか?




「あっ…」


セシアがアシナのほうを一瞬ちらっとみてきた。そしてばつが悪そうに苦笑いしてから前を向きなおした。






シルファはそのやり取りに気づかないほどにキレている


「その冒険者どもはどうしたのだ。」




「アシナがとらえてくれたから、連れてきているわ。今は地下の牢にいるはずよ。」




「なるほど。あとで私が直々に話を聞きに行ってやろう。それにしても、アシナといったな。信用しきったわけではないが、信頼に値する人間だということはわかってきた。娘を助けてくれてありがとう。」




「いえいえ、裏がなかったわけではないので。この世界では私は何もしらない人間です。そこでセシアと知り合えたのはとても大きな出来事です。その縁を失いたくなかっただけです。」




「セシア?呼び捨て?」


「あ、セシア姫様です。」


「私が、セシアと呼んでとお願いしたわ。」




シルファがさらにキレそうになっている。


わかった。その話はあとで闘技場で聞くことにする。




「それで彼はこれからどうするのかね。」




「アシナのこれからについてだけど。本当は私の直属の護衛になってほしかったのだけれど。彼はこの町で冒険者をやると言っているわ。ただ、私が護衛をお願いしたいときは、相談させてもらえることになってる。冒険者ランクが低い間は直接お願いをして、Sランクになったら城からの指名依頼という形を取らせてもらうわ。彼が言うには、ここから西にあるダンジョンで未踏の階層を攻略し、冒険者ランクを上げてくるそうよ。」




「なぜ、そんな回りくどいことをする?」




シルファがにらみつけるようにこちらを見てくる。




「私が護衛に入っては、いろいろなところから不満が上がるのは間違いないでしょう。ですが、Sランク冒険者ともなれば、だれも文句は言わないです。いえ、言わせないです。周りを納得させるための材料として、これ以上のものはないと思います。


また、打算もあります。私の人となりを知ってもらえば、死神と知っても裏切られることが減るのではないかと思ってもいます。」




とりあえず、考えていた言い訳をすらすらと述べる。


本当は、1線を越えてしまったセシア姫から距離を取るためなんて言えないだろう。




「なるほど。そういう理由か。私はてっきりうちのセシアに手を出してしまってきまづくなったとか言い出すのではないかとドキドキしたよ。」




シルファのカンが良すぎて怖い。




「とりあえず、分かった。セシアよ。彼、アシナのことはお前に任せる。」




「異論はないな。メリナ、リシア。」




なるほど。王妃様はメリナというらしい。




二人とも問題はないようだ。


やっと話し合いは終わりか。


まずは、宿に行って明日以降の予定を立てよう。




「では、行くぞ。」




急にシルファが立ち上がり、ドアの前に立ってる俺のほうに向かってくる。




「どこに行くんですか?」


俺が聞くとシルファは俺の首をつかんで言った。




「決まっているだろう?闘技場だよ。」




うむを言わさず、連れていかれる。


あぁ、今日はなんて日なんだろうか。














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