8話 登城


コンコン




ノックの音で目が覚めた。




「アシナ様。起きていられるでしょうか。セシア様がお呼びです。」


どうやら、セシアからの呼び出しのようだ。聞いたことがない声だから多分この船に乗っていた兵士が起こしに来てくれたんだろう。




「少しまってくれ。準備する。」


船に乗ってから2時間くらい寝られたか。


久々にしっかりとした睡眠がとれた。




ここ数日は気を張っていたこともあり、全然疲れが取れていなかったから。ありがたい。




大きく伸びをし、布団から体を起こす。


ドアを開けるとそこには小さい甲冑がいた。


「子供?」




思わず口からこぼれてしまった。




「子供ではない!これでも15歳だ。もう成人もしている。」


この世界では15歳から成人らしい。




「おぉ。それはすまないな。俺はアシナだ。」


「知っている。姫様からそう聞いた。」




かわいくないガキだな。まぁ大人な俺は怒ったりはしない。




「んじゃその姫様のもとに案内を頼むぞ。ガキ。」


「ガキじゃない!ライだ。」


「おうおう。んじゃ案内頼むぜ。ライ。」




ライはぶつぶつ文句を言っていたが、歩き出した。


その後ろをついていく。




最上階の一番奥、ものすごく広い部屋に通された。


入口には兵士が2人立っている。




真ん中にはソファが2つ向かい合うようにおいてある。


その間には横長いテーブル。


多分応接室だな。


偉い人通しの商談にでも使うような感じだ。




上座にはセシアが座っていた。その横にはレティナがいる。


ライはセシアの横に立った。




「ありがとうございます。ライ。」




セシアがライに声をかけた。




「いえ、それが務めですから。」


ライが答える。




「セシアはライと知り合いなのか。」




「んな…セシア様を呼び捨て!?」


「はい。」




2人の声が重なる。




ライのことは無視して話を続ける。




「それで?呼ばれたから来たのだが、何か用か?」


「はい。もうすぐギリアに到着しますので、この後の段取りをと思いまして。」




それはありがたい。日本に住んでいた以上国王の前に立つとかありえないからな。


粗相がないようにしなければ。




「まず、港に着いたらまた馬車に乗り城へ参ります。


そのあとは、そのまま父のところへ向かいます。


公式なものではないので、謁見の間ではなくて父の私室に向かうのでご安心を。」




なるほど、特に決まった段取りは通さなくて良いのか。


その方がありがたい。




「父の私室ついてからは、まず私にあった出来事を話します。その後、あなたの話になると思いますがある程度私が話します。何か問われたりした時はお答えをお願いします。」




基本は聞いてれば良さそうだな。


「わかった。」


アシナはそう返事をした。






船がついてからまた馬車に乗る。


相変わらずの御者台だ。




ゲームの時はマップによる転移があったから移動は楽だったが、毎日毎日こうも馬車に乗ってくると流石に飽きてくるしケツが痛い。




遠かった城が少しずつ近づいてくる。




「大きい…」


「すごいだろう?これが姫様が住まわれている城だ。この街は円形でな。中央に城がある。


城を中心に来たから時計回りに区分けされている。貴族が住んでいるのがちょうど真北の第1区だな。冒険者などの固定の家を持たないで宿暮らしのようなものは北西に暮らしている。何か貴族に問題が発生した時は貴族がお金を出して冒険者に守ってもらうのさ。冒険者ギルドはちょうど北西のほうだな。我々は今東側についたから、反対側だな。」




レティナが横で教えてくれる。




数分後、馬車が止まった。


目の前には大きな城門がある。


呆けてしまった。


大きな門、大きな城。


さすがの異世界。


日本にこんな城を立てようとしたらいくらするんだろうか。たとえ建てれたとしたと固定資産税でもっていかれそうだが。






「では参りますよ」


セシアの声で我に帰る。




「あ、あぁ。」


「動揺してらっしゃいますね。」


「いや、そんなことはないぞ。うん。」




セシアに離されまいとすかし小走りで追いつき後ろに並ぶ。




城門を過ぎると長い階段がある。


エスカレーターでもつけてくれればいいものを。




いつも思うんだが、ゲームとか異世界でよくあるこの城に入るまでの長い階段。


かっこいいとは思うんだが、王様とかを登らせるには苦行だと思うのだが。




昔やったことのあるゲームで、城門を過ぎたらアーチ型の橋をわたってからすぐに城とかあった気がするな。


そっちは周りが海だったから城に賊が入ったら逃げにくそうだが。




階段を登りきると少し息を切らしてしまった。


だがセシアもレティナも呼吸が乱れていない。汗もかいてなさそうだ。




「余裕そうだな。」




二人に聞いてみる。




「毎日のように上り下りしていれば楽になる。」


「何かスキルチックな裏技があるのかと思ったが、結局気合系なのか。」


「そうだ。」




レティナからの返答があった。


セシアも苦笑いしている。




「お疲れのところ申し訳ありません。もうすぐですのでついてきてください。」


「はいよ。」




再度俺たちは歩き出した。




長い廊下。俺らを見たメイドや執事のような人たちが頭を下げてくる。


正直居づらいことこの上ない。






城の中にはいってから10分ほど。どんだけでかいんだよ。


とあるドアの前でセシアが止まった。




「レティナはここで待っていてください。」


「はっ。」




どうやらレティナはついてこないようだな。




「アシナはついてきてください。」


「そういえば。今更なんだが、こんな急に来ても大丈夫なのか?国王様だろ?」




「先ほど、船が港についた段階で1人こちらにきていただいて、父に連絡に事前に話してくれているので大丈夫ですよ。」




「なるほど。なら大丈夫か。」


「えぇ。」




セシアがドアをノックする。




「お父様。セシアです。入ります。」




セシアがドアを開けた。




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