6話 気持ち

セシア視点です。

=================



私はセシア。レビュナ王国 第3王女。




正直姫という柄ではないのは1番私がわかってる。


女の子は姫に憧れるというけど私は生まれながらに姫だったからか姫でよかったと思うことはない。




周りの大人の顔を伺い、自分を偽りいい子でいる毎日。


本当は服も着替えず寝巻きで一日中布団の上にいたい。




でも、そんなの許されるはずもない。


私は第3王女とはいえ、この国を代表する王族だから。




10歳になった日、私は『姫巫女』のと呼ばれるジョブを与えられた。


過去に発現したことがある人はいないと言われている。




このスキルの1つに嘘を見抜く力がある。嘘と言うよりは本音か見破る能力かな。




隠していること。やましいこと。なんとなくわかるの。なんとなくね。




この力で父様を手伝ったことも何回もあるよ。


父様の命を宰相さんが狙っているのを先に父様に行ったり。


他国の偉い人が取り入ろうとしてきてたのを父様に伝えたりね。




今回、久々に神様からのお願いがあった。


前回は1年くらい前だったかな。




前回は『ヴェリアスト』が暴れそうな場所のお告げがあったから父様にお話しした。




今回もきっとこの国のためになることだと思う。




え?今回は『テスタ』に行けって?


出会いがある?




ここから5日もかかるじゃない。。。




ほんとは行きたくないし、めんどくさいけど。




国がなくなるような生きていけないほどの事件があったら嫌だからね。父様に相談していくことにするわ。






★ ★ ★ ★ ★ ★




本当に後悔した。




まさか黒竜がでるなんてね。




付いてきてくれてた1小隊まんまやられるだなんて。




正直神様を恨んだわ。


神様が『テスタ』にいけなんてそんなこと言わなければ


誰も死ぬことはなかった。




私だって王族。


「国は民。」と父様から言われてきてたから、国民の大事さはわかってるつもり。




つらいよ。






必死に黒竜から逃げる。


横にあるのは死の森と呼ばれる森。


黒竜に追われ続けるくらいならいっそ死の森に入ろうかとも思ったわ。




でも逃げた。


『テスタ』にいけって言われたから。


出会いがあるって言われたから。




「姫様、前から黒いローブがこっちに向かってきています。」




レティナの声が聞こえた。


最近噂になった死神だったりしてね。


1000人も犠牲にしてくれて。本当に許せないわ。




「とりあえず、逃げ続けて」




黒いローブの人とすれちがう。


まさか、黒竜と戦うつもり?








★★★★★★




そのまさかだった。


黒竜を圧倒していた。




3年くらい前?の時は500人の死者が出た。


それでも討伐できなくて。




多数の死者がでたあの黒龍を一人で。


黒龍を倒したローブの人がこっちに向かって歩いてきた。


私たちも殺されてしまうのかな。




ローブの人は少し離れたところで止まった。


私たちを待っているのかも。




レティナが様子を見てくれるって


私にはでてきちゃだめって言って、外にでていったわ。






★★★★★★




少し経ったけど、全然進展はない。


いつまで待たせるのかしら。


でも、助けてくれた人に興味はあるわ。


あの黒竜を相手に一人で戦えるのだもの。




私が出ていけばいいのかな?なんてね。


そろそろおなかも減ってきたし、


私も出てみようかな。










★★★★★★




私の目の前にはローブの人が座っている。


正直怖いわ。


私を殺すなんて1秒もかからないでしょう。




この国の姫たるもの、礼もいえないとか言われても困るし、


お礼を言わないとね。






「取引をしたい。」




驚いたわ。


返事をしてくれるなんて思わなかったもの。




しかも、この国でも一握りしかしらない死神の召喚のことを知っているなんて。


この人は危険かもしれないわ。




と思ったけど、


聞いてみたら迷い人のようね。


死神として呼ばれてしまったのはかわいそうだけど。




嘘ついたりはしてないみたい。


この人のこと信じてもいいかなって。


どちらにしても敵対したら1秒も持たないからね。




でもおなかが減ってきたわ。


この人料理とか作れないかしら。




条件とか言って切りかかられたりしないかな。


なんて。


でも、お話をしてみるだけしてみようと思う。






★★★★★★




あの日から2日たった。


黒いローブの人はアシナというらしい。




アシナは黒い髪、黒い目をしていた。


身長は180センチといったところ?


高い身長に細い体、外からではわからないが実はかなりがっちりしている。




アシナはいろいろなことを話してくれた。


地球というところの日本という国のこと。


両親や大好きな祖母のこと。


料理はおばあちゃんにならった。なんて恥ずかしそうに言っていたのは、


ちょっとドキッとしちゃった。


笑顔がかわいいんだもの。




私に近寄ってくる男は、


皆『姫巫女』という立場を狙ってくる別の国の人。


私なんて誰も見てくれないの。




そうでしょう?


私といるだけで、暗殺のリスクが減るんだから。


私なんてそんな価値しかないのよ。




でもアシナは違った。


私を見てくれた。




多分私は、アシナを好きになっちゃったんだと思う。




★★★★★★




冒険者?すごく嫌。


冒険者自体が嫌なわけではないけど。


この人たちはいろいろ隠している。


私のスキル『直観』がそう告げている。




嘘がわかるとかいろんなことができるけど、


名前は直観なんてね。




あの冒険者たち私やレティナをものをみるような目で見ているときがある。


アシナも気にしてくれていた。






★★★★★★


アシナと冒険者が戦い始めちゃった。


冒険者がドアを少し開けて置いていった花。


これはたぶん前に図書館で見たことがある『月夜花』。




レティナがすごく暑そうにしている。


呼吸も乱れてまるで、発情しているみたい。


私のスキルの中にはこういった異物をはじく効果もあるから。


全然平気だけどね。




アシナが冒険者をやっつけたみたい。


本当にかっこいい。




アシナを私のものにしたいなって。


本気で思っちゃう。




この花の力があれば、


一夜の過ちになるのかな。




スキルをオフにし、深呼吸をする。




頭がぽわーっとしてくる。


アシナ。アシナ。アシナ。




最低限の意思は残るようにコントロールする。




アシナがドアを開けた。




「アシナ…」




アシナが何を思ったのか出ていこうとする。


待って。




「…アシナ」


後ろから抱き着きそっと首元で名前を呼ぶ。




アシナは止まってくれた。


これはOKのサインなのかしら。




このまま、アシナを馬車に引っ張る。




あぁ、私は本当にこの人が好きなんだなって。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る