4話 護衛


あれから2日たった。今は朝方。感覚的には9時くらいだろうか。


遅めの朝食をとっている。


この二日間基本的には、装備をアイテムボックスにしまっている。


どこでだれが見ているかわからない。


戦闘になるときのみ装備を付けるように心がけていた。




現在俺たちは、レビュナの首都『ギリア』にあるセシアの家(城)に向かっている。




道中は魔物がいろいろ出てきたが、特に問題もなくすべてを処理してきた。




この2日間で色々あった。




1つ目は、このセシア姫は実はかなりのおてんばであること。初対面の時の敬語や気品溢れる仕草はかなり気を使っていたようだ。




それでも俺が近くにいるときは気高く振舞ってるつもりのようだが、少し距離が離れるとすぐ気を抜いている。




こちらとしては気を抜いてくれた方が話しやすいので、もう少し楽にして欲しいところだが。




2つ目はレティナとある程度の話ができるようになったこと。




最初はかなり警戒していた様子だったが、セシア姫からの援護もあり、なんとか最低限の信頼を勝ち取ることができた。


今は最低限互いを呼び捨てにするくらいの話はできた。


ただセシア姫のことは姫をつけないと腰のレイピアに手を伸ばされている。


信頼を得られた理由はやはり、姫巫女の力が偉大なのだろう。




この道中2日間で、地球にいた時のことを少し話した。


といってもゲームとかはわからないと思うので、家族の話や、料理の話、帰りたいが帰れないこと、こちらに来て出会った神様のこと。




よくよく聞いてみると、俺が出会った神様とセシア姫が天啓をもらった神様は同一人物で『カリア』様だった。


多分神様なりの配慮だったのか。最初から死神と言ってはまずいため、死神ということを隠せといってきたのだろう。




「予定では明日の昼過ぎにつくんだったか?」


アシナがそうレティナに質問する。




「あぁ。この先に大きな川がある。明日の朝ごろに川につき、その対岸にギリアがある。まずはその川沿いにある船乗り場に向かう。」




この世界の地図だが、マップ機能は行ったことがある場所は表示されるようだ。




「なるほどな。まぁ、ここまでくればあと一息といったところだな。了解だ。」




『カリア』が別キャラから移してくれたアイテムの中に調味料や鍋や皿など料理に使えるものがあって助かった。


料理はもともとできたので困ることなく、この2日間をしのいでいる。


セシア姫、レティナ共に何を作ってもおいしいと食べてくれるので、よかった。








朝食を済ませ、鍋などを全てアイテムボックスに収納する。


御者台にレティナが、その横に俺が座るのが定位置となっている。




もちろん、セシア姫は馬車の中だ。


だが、暇なのだろう、いつも中の窓を開けてこちらと会話できるようにしている。




今日もゆっくりとした一日となりそうだ。


暖かい日光を浴び、居眠りをしてしまった。






★★★★★★★★




昼過ぎ馬車が止まり、その揺れで起きた。




「あ、おはよう。寝てしまったよ。」




馬と止め、水をやるレティナに話かける。




「あぁよく寝ていたぞ。姫様がいるにもかかわらず、ぐーぐーとな。命の恩人でなかったら二度と目覚めない体にしてやったんだがな。」


「まぁまぁレティナ。今日は天気も良く、素晴らしい日です。日光が気持ちよいので、寝てしまうのも無理はないわ。それに毎晩ほぼ夜通し寝ずに番をしてくれているのを知っているでしょう?」




セシアが会話に混ざってくる。


実は初日の夜、二人が、寝ているところに狼型の魔物が近寄ってきたのだ。


名前をレッドウルフ。特に好戦的で人間でもなんでも襲い掛かってくる。


マップに映った赤い点を一つずつ潰し、夜間が危ないことにきづいたので、ほとんど夜通し寝ないで警戒していたのだ。




「ばれていたのか。だが、すまない。護衛を頼まれていたのに寝てしまった。寝不足などは言い訳にならないのにな。」




「いいえ、ここまで無事にこれたのもアシナのおかげです。無理はなさらないように。あなたに倒れられてしまっては、私たちは城にたどり着けない可能性もあります。何かあれば起こしますので、寝ていてくださいな。」




ここまでセシア姫に言わせておいて、じゃあお言葉に甘えてとは言えない。


ここは男の見せ所だろう。




「あぁ眠くなったら寝かせてもらうよ。ありがとうな。」










★★★★★★


昼食を食べ終え、再度『ギリア』を目指す。




今日は本当に良い日だ。天気が良く日光も暖かい。


嵐の前の静けさにならなければよいが。


だが、俺のカンはこういうときに当たってしまう。


警戒を怠らないように気を付けなければ。






午後3時を回ったころだろう。


急にマップに反応があった。敵か味方かはまだ判別されていない白い点がいくつも出てきた。


この道の先からこっちに近づいてきている。




「まってくれ、何かくる。」


レティナに声をかけ、警戒を強めながら馬車を動かしてもらう。




少したったところでようやく視認することができた。


どうやら、冒険者のようだ。


こちらの馬車が見えたようで、冒険者が声をかけてきた。




「こちらはB級冒険者『紅蓮の焔』である。ギルドからのクエストで連絡が取れなくなったセシア姫を探しに向かっている。そちらはセシア姫の馬車で相違ないか。」




どうやら迎えのようだ。


アシナはセシアに声をかける。




「お迎えがきたようだぞ。どうする?」




セシナが窓から冒険者のほうを見る。




「あの方たちからは嫌な気配を感じます。合流しますが、気を抜かないでいただけますか?」




「ほう?嘘がわかる能力ではないのか。どんな感じだ?」




「言葉に嘘はありませんが、裏があるような感覚です。」




難しいな。だが、何か裏があるとわかっていれば対応はしやすいだろう。


冒険者の馬車に対し、大きい声で返事をする。






「あぁ。こちらにはセシア姫と王国騎士団所属のレティナ様がいる。」




「わかった。『ギリア』へ送り届けろと言われている。合流し城に向かおう」




馬車どうし合流する。


冒険者4人が馬車から降りてきた。




なんというか。見るからに悪い顔をしている連中だ。


本当にこのままだとセシア達が危ないことをひしひしと感じる。




「ここからは我々『紅蓮の焔』が姫様たちを護衛する。そこの名も知らない兵士は消えな。」




なるほど。そう来たか。


どう言い返そうか悩んでいたら、後ろからセシア姫の声が聞こえてきた。




「この方は私が直々に護衛を頼んでいます。城までついてきていただかないと報酬が支払えません。そのため、ここで別れる予定はありません。一緒に城に参ります。」




はっきりとした物言いに『紅蓮の焔』のメンバーが驚いている。




しかし、すぐにリーダー格の人間が返事をした。




「わかりました。ではこの兵士も一緒に城まで護衛しますよ。」




リーダー格の男はそのまま自分の馬車のほうに帰っていった。


途中で舌打ちが聞こえた気がする。




「これは何かありそうだな。」


小声でセシアとレティナに声をかける。




「あぁそのようだな。」


レティナが返事をしてきて、セシアもうなづいている。


何があっても対応できるようにしておかなければ。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る