2話 黒竜
目が覚めた。朝になっている。
『カリア』と会っている間に朝になってしまったのだろう。
『カリア』との会話では今日馬車が魔物に襲われながら目の前を通るようだ。
死神のスキルやジョブの情報は秘匿しなければならないため、戦士の装備である両手剣をアイテムボックスから装備し軽く振ってみる。
以前使っていたキャラで装備していたメイン武器だ。
軽く振ってみて気づいたが
戦士のスキルは発動できない。
ステータスのジョブの欄は表示が変わっているだけで
実際は変わっていないのだろう。
戦士ではないことがすぐにバレる可能性がある。
「これは困ったな。」
しかし、どうにもならないのは事実だ。高レベルのステータスを活かしてスキルなしで魔物を倒すしかない。
よくある必殺技の物理で殴る以外に選択肢はないだろう。
「ドドドドドド」
2時間ほどはたっただろうか。ご飯を食べ終え、装備もしっかり構えた状態で、待っていた。
遠くからすごい音とともに馬車が走ってくるのが見える。
とても高級そうな見た目の馬車が全力でこっちに向かってきている。
さぁ、手筈通りに魔物を狩ることにしよう。
いらないものを全てアイテムボックスにしまい、馬車に向かって走り出す。
しかし、あることに気づいた。
馬車の後ろについて飛びながら追いかけてきている魔物がとてつもなく大きなことに。
「黒竜……?」
ソネストアではエンドコンテンツ系のイベントボスの一つだ。
急にマップにポップし、周りを破壊し尽くす最悪のボス。
初心者マップだろうと上級者マップだろうとどこにでも現れる災害みたいなボスである。
「いやいやいやいや、待て待て。これは無理だ。流石にソロでは倒せない。一旦引くしかないが、引いてるあいだにあの馬車に乗っている人たちがやられるのは間違いないぞ。」
このまま放置しても人のつてがなくなる。今の現状からは良くならないことは明確だろう。
倒すか諦めるかだ。
諦めるのであれば馬車がきた方向か、向かっていた方向にひたすら歩くしかない。
だがどれくらい先まで歩くのかは分からず体力や気力が持つかも分からない。
じゃあ倒すか?
間違いなくスキルなしでは倒せないだろう。
やるのであれば鎌を装備するしかない。
エンドコンテンツのボスを一撃で葬り去る絶対切断しか勝機はない。
「はぁ〜…」
ため息も吐きたくなるものだ。
死神として召喚されたことがバレれば打ち首になることも考えられるのに。
「しかし、このままだとまずいな。何より人が目の前で死ぬのは見たくない。覚悟を決めるしかないよな。」
いくぞ。と自分を鼓舞し、装備を一式死神にかえる。
顔は見えないようにフードを深くかぶる。
準備はできた。馬車の方に走っていく。
馬車を通り過ぎたところで黒竜と向かい合う。
流石に黒竜もこちらが只者ではない雰囲気を感じたのか、空中で静止した。
後ろを振り向くと、馬車はまだ離れていっている。
「くっそ、このままじゃ置いていかれる。仕方ないから一気にやるぞ。」
アシナは鎌も構えて走り出した。
だが飛んでいる黒竜に対し地面からでは有効な攻撃ができない。
まずは、邪魔な翼に傷を負わせて地面に落とすしかない。
そのためにもスキルを発動する。
「『
スキル『調鎌』は鎌の大きさを自由自在に操る。
まずは大きな鎌でバッサリと狙う。
「『
横に大振りし、斬撃属性の衝撃波を飛ばす遠距離攻撃だ。
黒竜もまさか斬撃を飛ばすとは思っていなかったのだろう。空中にいることで、慢心していたのだろう。気を張っていなかったようだ。回避行動が遅れている。
「よし、あたった。」
衝撃波が黒竜にあたった。
ものすごい音を周りに響かせる。
「ギャアアアアォ」
黒竜を一刀両断…とは流石にいかなかった。首元から血が滴っている。かなり傷は深そうだ。
怒った黒龍が黒炎をはいてくる。
頭を上に一度上げて火をためていたから時計回りの薙ぎ払いブレスで間違いない。
このまま逃すわけにはいかない。
「もう一回だ。くらえ『衝鎌撃』」
時計回りに走りながら鎌を連続で振り、衝撃波を4つ飛ばす。
黒竜は黒炎をはいているので、よけきれないようだ。
この隙に鎌の刃を大地に刺し、柄を一気に伸ばして空高く飛ぶ。
そのまま黒竜の近くまでたどり着き瞬時に鎌を振り抜く。
「じゃあな。エンドコンテンツのボスをソロ討伐したのは俺が初めてだろう....『斬鎌閃』」
音速を超える速さで鎌を振り切る攻撃。攻撃が軽いため柄の部分であれば止められることもある技だが
鎌部分であれば『絶対切断』により黒竜の首を切り落とすことが可能だ。
音もなく黒竜の首を切り取る。
断末魔すら上げることができなかったのだろう。
黒竜と一緒に地面に落ちていく。
鎌を伸ばし、事前に先端を地面にさしておくことで、長さを調節していき地面に到着する。
黒竜の死体が落ちているので全てアイテムボックスにしまう。
「ふ~。思ったよりは、楽に戦えたな。さて、馬車はどこだ・・・?」
周りを見渡すと遥か遠くに馬車が止まっているのが見えた。
とりあえず会って話した方がいいかもしれないが、
攻撃される可能性もある。
少し距離を取ったところで様子を見ることにしよう。
そう思いながらアシナは馬車に近づいていった。
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