第9話フードルの全貌

 鍛冶屋に着くと相変わらず厳つい強面の男が店の奥で座っていた。扉が開く音を聞きつけたのか、こちらを見て少し間をおき無愛想に笑った。


「よ!久しぶりだな、武器の新調か?それとも…」


 と濁しながら俺に問いかけてきた。


「どっちもなんですが、教えて頂けませんか?」


 恐る恐る返事を返すと、オヤジはゲラゲラと笑い出した。そして、少し落ち着くと笑顔のまま答え出した。


「まずは〈フードル〉についてだ!フードルは雷のドラゴン〈ライトニング〉の力を持つ魔王幹部だ。

 2.3メートルの巨体から大きな剣を振り回し攻撃してくる。HPが30パーセントを切ると雷を落とす遠距離攻略をしてくる」


 オヤジは強面の顔をもっと怖くして説明してくれた。


「ありがとうございます、フードル討伐頑張ります。」


「おぅー!頑張りな!よし、じゃあ武器はどうする?お前見たところ前と武器変わってないけど?」


「あー、これはここ以外の鍛冶屋で武器は買わないと決めていたので」


 と俺がヘラヘラと照れながら言うと、オヤジは感激していた。


「あー、もうそんなに照れないでくださいよ」


 俺が慌ててそうなだめるように言った。


「おうよ!お前には最適な武器を提供してやる」


 そう言って店の奥へと消えて行った。ガタガタと音を立てて汚れた姿で、一本のソードを持って来てくれた。そのソードは黒く所々白い模様の入った格好の良いソードだった。俺はそのソードを見て興奮していた、もう、これ以上良いソードは出会えないと思わせるほどのソードだ。そう思っているとオヤジが口を開いた。


「これは〈グラットディティール〉と言うソードでランクはS級だ、今のお前は持つのがやっとだろうが、一回くらいは振れるだろう」


 そう言って俺に手渡してくれた。〈グラットディティール〉は俺の手に乗った途端10キロほどの鉛が手に乗ったと感じさせるソードだった。


「いくらですか?」


「お代はいらねえよ!と言いたいところだが少しは貰っとかないと運営がうるさそうだからな4000Gでどうだ」


 俺は急いでお代を払うとウィンドウを操作してアイテムポーチにしまうとオヤジに挨拶をした。


「いろいろありがとうございます!えぇーと?」


 と口ごもるとオヤジが察してくれた。


「自己紹介がまだだったな、俺はガージと名乗っておくよ、本名は上から言わないようにいわれてんだ」


 と笑顔で教えてくれた。


「僕は春風…涼宮春風です」


「おいおい、春風敬語はやめてくれよ」


「分かりました…じゃない!分かったよガージさんありがとう」


 そう言って新しい武器と幹部の情報を持って扉を開け鍛冶屋を後にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る