第5話鍛冶屋のオヤジ!
目を覚ますと目の前には沢山の人々が騒いでいたり、会話を楽しんでいる。
しかし妙な光景だ。周りには15歳くらいの男女のみ、景色は白、黄、茶の壁に赤い屋根の家が建て並んでいる。まさに少年少女が中世のヨーロッパにタイムスリップしたかの様な光景だ。
そうやって周りを見渡していると声が聞こえた。
「おーい!春風ー!」
そう言いながら金髪のチャラそうな男が走って来た。
「やっとログインしたのか待ちくたびれたぞ!」
そう言って爽やかな笑顔を見せた。
俺は学校での事を思い出した。こいつのせいで目立っちまったのに詫びもなしかよ。と思ったが仕方ないと自分に言い聞かせて返事を返した。
「あー、悪いな。設定に少し時間がかかってな」
そう答えて、次は俺から質問をした。
「この街の事は分かったのか?」
俺がそう聞くと、秋人は待ってましたと言わんばかりの表情を見せて答えた。
「あぁ!いろいろ分かったぜ。まずは俺について来いよ。ゲームの事は行きながら話すから」
そう胸を張って答えた秋人はサッサと歩き出した。
そうして道中にいろいろ聞いた。このゲームのクリア条件は4人の幹部を倒して魔王の城までたどり着き魔王を倒す事らしい。そしてこの世界はあちこちに町や村があり道中には魔物が沢山いる、その魔物を倒しポイントを稼ぐ事でステータスを上げていくという設定のようだ。他にもレベルアップすることでスキルポイントを獲得しスキルを覚える事も出来る様だ。
そうこうして歩いていると急に秋人が止まった。
「ここが鍛冶屋だ。町の中心部にもあるけど路地裏の方がワクワクしないか?」
秋人はそういうゲームやアニメの見過ぎだと思ったが、黙ってその鍛冶屋の扉を開けた。ギィーと建て付けの悪い音がして中に入ると、色黒の割腹の良い大男が重たげな腰を下ろして座っていた。
「いらっしゃい!何を買いに来たんだ」
そう言いながら重たげな腰を上げてゆっくりと近づいて来る。近づくにつれてその男がどんどんデカくなっている様に感じた。
そうして俺達の目の前で止まって、こちらを上から見下ろしていた。
「何を買いに来たのか聞いているんだけど?」
そう低くワイルドな声で質問を投げかけてくる。
俺はおどおどと、弱々しい声で質問に答えた。
「え〜と、武器と防具を買いに来ました」
自分でも情け無く感じるくらい声が震えていた。
「そうか!で、いくら持っているんだ?」
俺は慌ててウィンドウを開いて所持金を確認した。そこには5000Gと表示されていた。Gとはこのゲームの通貨の事だろう、と思いすぐさま答えた。
「5000Gです!」
そう答えると大男は店の壁に掛けてある大量のソードや刀、銃器を見ながらまた質問を投げかけて来た。
「どんな武器を使いたいのか?」
俺達は顔を見合わせてから、大男の方に向き直って答えた。
「ソードです」
「槍です」
そうする大男が大量の武器の中からソードと槍を取り出して答えた。
「金髪がこの槍だ!2000Gだ」
「そして、そこの弱々しい方がこのソード3500Gだ」
そう言って俺達の目の前に武器を突き出した。
「俺の武器高過ぎませんか?」
俺がそう聞くと大男の口元が少し緩んだ。
「ふん!俺に口答えする奴がいるとはな。気に入った。少しだけまけてやろう、3000Gでどうだ?」
俺はびっくりした。なぜならNPCが感情に流されたと思ったからだ。
「いいんですか?ありがとうございます!」
そう言って、俺達は所持金をアイテム化して代金を支払った。
「防具はどうしたらいいですか?」
そう質問すると、大男は先程よりも優しく答えてくれた。
「防具はまだ買わなくて良い。その程度の金じゃあろくな防具は買えない、だからまた金が貯まったら来い。その時はいい防具用意しといてやるよ」
そう答えると、笑顔で俺達を見送ってくれた。
俺は扉を出る前に疑問を投げかけた。
「なぜ、そこまでしてくれるんですか?」
そうすると、大男は笑顔のまま答えてくれた。
「俺はNPCじゃあない!」
そう言って大男は話しを続けた。
「俺はゲーム運営の1人なんだよ。そしてお前達だけがこの店で武器を買ってくれたんだ。俺は昔から、この風貌で怖がられるから店に来た人は全員すぐさま店を出て行ってしまってな。だからお前達が俺に値切ったりしてくれて嬉しかったんだよ。」
大男は本当に嬉しそうに答えてくれた。
「だからよ、何かあったらまたこの店に来てくれよ!」
俺達2人で大きく頷き店を後にした。
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