カルテNo.7 どの世界にも宗教や習慣があるもの

「そうなんですね。」


「そうですよ。それは、お嬢さんのお陰かしらね。」


「そうだと良いんですけどね。」


「きっとそうですよ。」


清掃のオバチャンは優しく微笑みながら私にそう言ってくれる。確かに言われてみると最近のリクト君は私と出会ったばかりに比べると表情が柔らかくなってきてる感じはある。


最初に出会った時は何処か冷たく、そして寂しそうな顔をして、ぶっきらぼうで吐き捨てる様な話し方だった。


でもリクト君は少しずつだけど、前に比べて表情が暖かくなってきた気がする。何かと私の事も心配してくれるし、いざって時には頼りになる。


クールで落ち着いていて大人な感じだけど、まだリクト君は10代なのよね。


本当はまだ、そんな大人ぶらなくても年相応の表情や態度が出やすいのに、きっと心の何処かで他人に弱味を見せたくないのかもしれない……


「お嬢さん。急に黙ってどうかしたの?」


「あっ!いえ!ごめんなさい。色々と考えてしまいまして。」


「あらあら、お嬢さんは、よっぽどあの子の事が……」


「違います!絶対に違います!」


清掃のオバチャンは何かと私とリクト君の事を結びつけたがる言動に終始、戸惑ってしまう。


「それよりもお嬢さん。あの子にお弁当を届けなくて宜しいの?」


「あぁ、でも、ここって学校ですから学校関係者以外の人が校舎に入るのはどうかと。」


「うふふ、大丈夫ですよ。ここは生徒の保護者さんや関係者の人が頻繁に出入りする事がありますので大丈夫ですよ。私から先生方にはお伝えしますので。」


「はぁ……」


そして私は清掃のオバチャンに言われるがままにリクト君が居るであろう教室まで1人で向かうが、ちょうど授業の休憩時間なのか学校の生徒さんが廊下で歩く私を好機な目で見てくる。


なんだか私を見てヒソヒソと話をしているのがアレなんだけど……


なんの話をしているのかな?物凄く気になって仕方ないわ。もしかして、『三十路処女が学校に来て歩いてるよwwwぷぎゃーm9(^Д^)』なんて言われたら暫く寝込むからね。

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