カルテNo.6 人生って1回きりだから悔いなく今を生きよう

「桃香先生は勝手に私の前から居なくなったりしないよね?」


そして、リリーナちゃんは不意に真顔になり私の目をジィーっと見つめながら聞いてくる。リリーナちゃんのその質問は真面目そのもので私の答えは聞くまでもない。


「当たり前じゃない?それに最後までリリーナちゃんのリハビリに付き合うって言ったじゃない?」


「そうだよね……さっき桃香先生と約束したもんね。なんでだろ?アハハ……」


「何かあったの?」


「ううん。何かね。近いうちに私と桃香先生が離ればなれになっちゃう気がしちゃってさ。私の考え過ぎなのかな?」


「……」


「それにね。私ってあんまり身体が強くないから桃香先生より先に……」


「そんな事ないよ。」


「え?」


「そんな事ない。リリーナちゃんにはまだ未来があるわよ。まだ私の半分しか生きていない15歳じゃない?たとえ病気がちで身体が強くなくても、まだリリーナちゃんには未来がある。その未来を自分から閉ざす様な事はしないの。良い?」


「うん……」


「それに、もし未来に不安があるなら、せめて今を精一杯生きるのよ。」


「今を精一杯生きる?」


「そうよ。今を精一杯生きていれば必ず未来は見えてくる。自分を信じてあげて。リリーナちゃん。」


「うん!ありがとう!桃香先生。」


その言葉にハッとしたのかリリーナちゃんの顔は何処か吹っ切れた様に明るくなり顔を縦に頷き眩しい笑顔を私に見せてくれる。まるでその笑顔は小さな太陽である向日葵の花の様に。


「そろそろ、時間だから戻ろうか?」


「うん!」


私はリリーナちゃんを乗せた車椅子を押しながら病室に戻る間も他愛のない話をしていた。美味しい食べ物屋さんに綺麗な景色、行きたいイベントに買いたいお店。


やっぱり、女の子なんだなぁって感じがしてくるし昔の私自身を思い出す。あっ!言っておくけど、ほんの少し昔だからね!そこは勘違いしない様に!


そして、私はリリーナちゃんを病室に戻してから帰宅する事にする。ちょうど明日は休みだから何をしようかな?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る