カルテNo.6 人生って1回きりだから悔いなく今を生きよう

「リクト君。黙りながら、こっち向かないでくれる?」


「……」


「リクト君。もう一度だけ聞くわよ?貴方、学校はどうしたの?平日だから学校はあるはずだよね?」


「……」


「リクト君、無視してないでこっち向きなさい?じゃないと……」


「単位ならもう取ってあるから大丈夫だよ。それにテストも楽勝だしな。」


「そうなの?」


「あぁ、それに俺が学校に行っても周りからしたら嫌だろうしな。」


「そ、そっか……」


確かリクト君は元々はワスア魔法学校の中でも唯一の肉親であるお姉様も亡くなってからアペディグリー(血統)クラスから、フォルザ(強さ)クラスにクラス替えされてから彼には居場所がないんだったけ……


給付金でアペディグリークラスから給付金が払えなくなった事でフォルザクラスに移されてから、どちらからも煙たがられてるって事だよね。


本当は何かフォローとか言ってあげた方が良いのかもしれないんだけど正直、言ってまだリクト君の事をあんまり知らない様な気がするから知ったような口を言わない方が良いのかも。


「まぁ、取り敢えず日野先生は学校の事では心配しなくて良いって訳さ。だから気にしなくて良いよ。んじゃ、俺は休憩してから午後の仕事に行ってくるから。」


「うん。頑張ってね。」


リクト君は席を立ち上がりお盆を食堂のカウンターに返しに行きながら後ろから手をヒラヒラとして立ち去って行く。


考えてみたらリクト君ってクールな顔立ちで落ち着いているけれ大人っぽいけど、まだ学生なのよね?本当だったらもっと甘えても良いのかもしれないけど……


きっと、アレなのかしらね?人に甘える事も嫌な事から逃げる事も弱味を見せる事も許されない環境の中で全部1人で抱え込んで生きてきたのかもしれない。


そう言う人には下手に甘やかしたりすると返って良くないのかもしれないわ。下手に甘やかそうとすると、その人は意固地になって人と距離を離す事にもなる。


私はそう考えているとスクラブの中にある懐中時計を見ると、そろそろ午後の診療時間になるので私は食堂から出て仕事に戻る事にする。

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