カルテNo.4 仕事ばっかりの日々では疲れてしまう
なるほど、そういう事なのね。確かに環境の変化によって何かしらの心の闇やトラウマがリクト君にとっては耐えがたいモノだったのかもしれない。由緒ある貴族の家系なら恐らく厳しく育てられたのだろう。
厳しく育てられたが故に自分の弱味を周りにさらけ出す事が出来ず尚且つ他人に甘える事が出来ない結果、心を閉ざす事で周囲と必要以上に関わりを持たなくなってしまったのだろう。
「この子は大戦が始まる前は誰よりも優しくお姉様を尊敬していました。だけど、お姉様が殉職を知らされた時、みんなの前では悲しむ様子もなく貴族の家系らしい凛々しい顔をしていました。」
「……」
「だけど、私は見てしまいました。この子が誰も居ない部屋で声を殺して『姉さん、姉さん。』って声に出して泣いていたのを。」
「……」
お母さんを早くに亡くして、お父さんも病気で亡くなってしまい、唯一の肉親であるお姉さんも戦争で殉職してリクト君自身はまだ若いのに天涯孤独の身になってしまった。
だから、たった1人で生きていくしか無くなってしまったのだろう。この世の中を生きるにはお金が必要になってくる。生活にしろ何か公共のサービスを利用するにしろ、衣服を買うにしろ食べる事にしろ住むのにしろ、学校通うにしろ進学するにしろ。
この世の中は本当にお金で全てが決まってしまう。お金がないから選べないものが増えて選択肢を狭めてしまう事だって多々ある。
そう考えていると少し久しぶりにあのサイレンが鳴り響くのが分かる。またしても今まで聞いたことが無いような一大事や不安を煽るようなサイレンの音が街中に鳴り響いてくる。
『緊急事態発生。緊急事態発生。ミラージュファミリーが現れた模様。至急市民の皆様は安全な建物や地下室に避難したください。繰り返します。ミラージュファミリーが現れた模様市民の皆様は安全な建物や地下室に避難してください。』
「あら、大変。お嬢さんも逃げましょう!この建物の中なら安全ですので!」
「え?!えぇ!」
私は清掃員のオバチャンに言われるがままにワスア魔法学校の校舎へと避難する。
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