カルテNo.4 仕事ばっかりの日々では疲れてしまう
「どういう事ですか?」
「はい。この子のお母様は元々、身体があんまり強い方では無くて、この子を産んで間もなく亡くなってしまい、お父様も病気で亡くなってしまい、唯一の肉親である歳の離れたお姉様も先の大戦で殉職してしまいまして……」
「先の大戦?」
「カラカラ。桃香様。先の大戦と言うのは人間と魔人との全面戦争でございますよ。」
なるほどね。キャビンが密かに私に耳打ちしてくれて思い出したわ。前にクマ吉が言っていた人間と魔人との全面戦争の話ね。確かクマ吉が言うには犠牲者をたくさん出して終結した後味の悪そうな内容だったわ。
「その唯一の肉親であるお姉様も亡くなってからアペディグリー(血統)クラスから、フォルザ(強さ)クラスにクラス替えされてから彼には居場所がないらしくて……」
「それってどういう事ですか?」
「ワスア魔法学校では、家柄や血筋が通えるペディグリー(血統)クラスと将来を有望視される実力があるフォルザ(強さ)クラスに分けられます。ペディグリー(血統)クラスの場合は家からの学校への寄付金の額さえ払えば成績に関係なく学校には通えますが、寄付金が支払えなければ学校を強制退学にさせられてしまいます。」
「そんな……」
「しかし、この子の場合は実力もありましたので、学校の教員の方達の意向でフォルザ(強さ)クラスへのクラス替えで何とか退学せずに通学は許されているようです。」
「でも、どうして彼はあんまり学校へ登校していないんですか?」
「まぁ、あくまでも噂なのですけどね。この子はペディグリー(血統)クラスからフォルザ(強さ)クラスにクラス替えになってから周囲と孤立してしまいまして。」
「孤立ですか?」
「はい。この子は家柄も由緒ある伝統の貴族の家系でありこの子もこの子のお姉様も実力も兼ね備えていました。しかし、中にはそれを良く思わない生徒もいらっしゃいました。」
「周囲からの嫉妬ですか?」
「そうですね。ソレだけでなく、この子自身も周囲と打ち解けようとせず、他の教員からも腫れ物みたいな扱いで下手に関われないのです。」
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