カルテNo.2 三十路女。接骨院を開くまでの道のり。
ワタル先生から封筒のようなモノを渡される。何が入ってるんだろう?私は不思議そうな顔をして封筒を見つめる。
「これは……」
「アレ?言ってませんでしたか?私からのお礼です。ただ働きなんてさせたらいけませんからね。」
「こ、これは受け取るわけには!」
「……」
ワタル先生は私をの目を真っ直ぐに見つめて黙っている。長年、人と関わってきた私には分かる。その目は絶対に折れない目をしている。
「カラカラ。桃香様。差し出がましいようですが、遠慮というのは時として人の好意を無下にするのと同じ事です。なので素直に受け取るのも良いのでは?」
「そうね。ワタル先生。ありがとうございます。これは素直に受け取らせていただきます。」
「いえいえ!素晴らしい技術を見せてもらった僕の勉強代としてもあります!ありがとうございました!」
「カラカラ。ワタル様。もし何かありましたら、ここに連絡を書いてありますので。」
「あっ、はい。今日は本当にありがとうございました!」
ワタル先生が深々と頭を下げた後、私は取り敢えず封筒を落とさないように上着の内ポケットにしまい、キャビンと共に病院を後にすると外は日が傾いて夕焼けの空になっているのが分かる。
「ねぇキャビン。」
「なんでしょうか?桃香様。」
「家ってどうするの?もしかして野宿?」
「カラカラ。そんな滅相な。オズ様から桃香様と私が住むための二階建ての一軒家をご用意しておりますのでご安心を。」
「そう。あっ、あと家に帰る前にオズの所に行きたいんだけど良いかしら?」
「構いませんよ?では、私に着いてきてくださいませ。」
私は夕陽に照らされながらキャビンの案内の元、最初に来た市役所に再び来て建物内に入ると定時の退社時間であろう。職員の人達はちょこちょこと帰り始めてきて、人は少なくなってきているのが分かる。
キャビンに建物内を案内されながらエレベーターに辿り着く。それにしても昔の映画にあるようなクラシックなエレベーターだな。大丈夫かしら?
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