カルテNo.2 三十路女。接骨院を開くまでの道のり。

私の治療を見ていたワタル先生とキャビンはポツリと呟いたくらいだろう。それもそうだ。私と師匠と受付さんの術者2人っきりで9年以上も院内を回してたんだからこれくらい出来ないと師匠に顔向け出来ない。


これくらいの治療の腕を見せなければ折角、師匠から教わった治療技術を無駄には出来ないよ。


「ありがとう。姉ちゃん。痛みが嘘のように無くなったぜ。」


「腰が伸びて歩きやすくなったぜ。ありがとうよ!」


ダリウスさん、ゴウさんは私に『ありがとう』って笑顔で言ってくれた。施術者としてビフォーアフターを出せた時よりも『ありがとう』って言ってくれるのが何よりも嬉しい。


師匠がよく言っていた『俺達、施術者は患者さんから、お金と時間とありがとうを頂いている。だから俺達は治療は勿論。気遣いや振る舞いも気を付けなくちゃいけない』って教えてくれた。


あとはダリウスさんとゴウさんをワタル先生辺りに明日、明後日は様子を見てもらおう。最初のうちは間隔を詰めて通ってもらわないと痛みの引きが悪くなるから……


「では、ワタル先生。ダリウスさんとゴウさんなんですが、明日、明後日は様子を診て頂けます?」


「はい!こちらで予約を入れておきますので御心配なく。」


「残りの患者さんも骨折、脱臼、捻挫、打撲とかでしたら診れますので手伝います。」


「ありがとうございます!助かります!」


「キャビン。もう少し手伝ってもらえるかしら?」


「カラカラ。勿論です。桃香様。」


私はその後、ワタル先生との約束通り病院内で溢れてる患者さんのケガの手当てをしてきたが幸い転んで手をついた打撲や軽い捻挫の人ばかりだった。


多少の傷も居たけど本当はやっちゃダメなんだけど消毒してガーゼ貼って包帯で固定してざっと2〜3時間ほどではけたので帰る事にする。


「日野さん。今日はありがとうござました。」


「いえいえ。私は自分の出来ることをやらせて頂いただけです。」


「そんな謙遜しないでください。貴女の技術は素晴らしいものです。あっ、あとこれを。」

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