カルテNo.2 三十路女。接骨院を開くまでの道のり。
ギックリ腰っていうのは急になるものじゃない。筋肉がある数値の限界を超えて、これ以上動くなよって言うサインだ。
簡単に言うと筋肉の限界の数値が100だとしたら腰の痛みや違和感での数値が98や99って仮定すれば、その痛みや違和感が日によって変わったりするから100の数値にはならない。
だけど、98、99の数値を彷徨い続けたある日に例えば重い物を持った。洗面台で歯磨きをしていて顔を上げようとした時、立ち上がった時などなど。ほんのちょっとした動作でギックリ腰になる時もあるのだ。
重い物を持ってギックリ腰になるって言うのは分かりやすいだろうけど。立ち上がっただけ、顔を上げようとしただけとかだとイメージし辛い。言ってしまえば身体の蓄積された疲れが一気に出てきたって言った方が分かりやすいと思う。
そんな感じで私はまず始めにゴウさんの股関節に関係する筋肉を治療する。
「だいたい押す強さは人それぞれなので痛気持ち良いくらいの強さで大丈夫ですからね。もし、痛かったり寝てる姿勢が辛かったら遠慮なく言ってくださいね。」
「分かった。」
ギックリ腰の場合は途中で寝てる姿勢が辛くなる事もあるし、手技治療に関して言えば痛すぎると身体が防御反応が出てしまうので筋肉の緊張が出る。
中には我慢してしまう人が居るので言ってあげた方が親切だと師匠に教えられた。
私はまず股関節の筋肉をアプローチする前に全体の硬さを診ていく。首、肩、背中、股関節、太ももの裏側、ふくらはぎの筋肉の順番で触診していき、治療する前と治療した後のビフォーアフターを確認するため。
そうする事で患者さん自身もやってもらった感を出せるパフォーマンスにもなる。股関節のアプローチはまずはお尻周りを軽めに全体的に押していく。
ん〜……やっぱ硬いな。股関節の筋肉って言うのは簡単に言えば人間の身体の土台になると言われている為、立っていても座っていても体重が掛かるので疲れやすいって言われている。
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