【幕間】火と水と土と、太陽 3



#4 リフィア


「……願わくば善き精霊と成りて、永久に神々とともにあらんことを」

 老神官のしわがれた声が、跪く人びとの頭上を響き渡る。

 神殿の最奥に並ぶ十柱の神々と主神ヘレス、その厳かな彫像が、祭壇に並べられた蝋燭の火の灯りを受けて、暗闇からほのかにゆらめき浮き上がって見える。

 跪いていた人びとはいっせいに立ち上がった。神殿内を衣擦れの音が覆う。そのざわつきに、所々で誰かの咳(しわぶ)く音が重なった。

 最前列で跪いていたリフィアも立ち上がった。

 彼女は年老いた神殿長に何事か声をかけると、数名の供の者を引き連れ祭壇の脇にある出入り口の方へ歩いていく。彼女からは金属の軽く擦れ、当たる音が聞こえてくる。リフィアは、かつてクシムに出陣した時と同じ軍装で身を固めていた。

 リフィアの率いる討伐隊が全滅し、赤帝龍がクシムを追われてから年が開け半年近く、クシムでの遺体の収集も進み、今回の戦死者の慰霊の儀で五度目になる。

 彼女は横から参列者に声をかけられると、その度にその者に顔を向け、ある時は慎み深く目礼し、ある時は微笑んでみせた。

 リフィアが神殿を出て控えの間に移ると、先に出ていた家令のルマンドらリフィアの供の者たちと、赤茶や紺色の衣服に白や灰色のトーガを巻き付けた男たちが数名、待っていた。

 そのひとりがリフィアに声をかけてきた。

「ご当主さま、ベーム債がすべて売れましたぞ。利率を一分(1%)引き上げたのが効きましたな」

「わたしは当主ではない。当主代理だ」

 リフィアはまったくの無表情で、その男に顔を向け言った。

「おお、これは失礼を」

 男はこれでもかと慇懃に、腰を折って頭を深く下げてきた。

 男の示した露骨過ぎる媚へつらい。そこには高い身分にあるとはいえ、まだ十代半ばでしかない少女に対する微かな皮肉もあったろうか。

 リフィアの眸がほんの微かに、細められる。

「リフィアさま、急ぎませんと」

 ルマンドが割って入ってきた。

 家令はただ気をきかしただけではない。この後も、リフィアには外せない大事な用事があった。

「うむ。そうであったな」

 リフィアはルマンドに答えると、彼女を囲む男たちに言った。

「当家債券の完売はまさしくそなたらの努力の賜物。わたしからも深く感謝する。その件に関してはあらためて後日、時間をいただきたい」

 そしてかるく頭を下げる。

「では諸君、今日は列席いただきありがとう。わたしはこれにて失礼する」

 リフィアは形だけの笑顔を取り巻きの男たちに向けると踵を返し、ルマンドら供の者を引き連れ、アルヴァの主神殿である、ベムストラ大神殿を後にした。

 いけ好かぬ連中だ。

 主神殿はアルヴァ城の南側の外堀に面している。リフィアは城の南門に向かって堀端の道を足早に歩きながら、さきほどの男たちのことを思った。

 彼らは、イシュルの指示に従いリフィアが相談役に選んだ、アルヴァの商人ギルドの幹部や豪商たちだった。

 辺境伯家は彼らの顧客であり、時に監督する立場にある。

 商人どもが自分に媚びへつらうのは仕方がない。商人とはそういうものであろう。

 そして、まだ年端も行かぬ小娘が、彼らも知らぬ資金繰りの方策を打ち出してくるのをどう感じるだろう。

 どれもこれも、たいして気にかける必要もないのだろうが。

 リフィアは今まで辺境伯家の兵事には関わってきたが、その他家政全般には積極的に関わろうとはしなかった。亡父からも強制されなかった。リフィアは今まで武人として生きてきた。だが、慣れぬこととは言え、彼ら商人が気に喰わぬ、彼らと接するのが嫌だなどという理由で、この大事な事業を家人どもに押し付け逃げるわけにはいかない。

 わたし自身が誓ったことなのだ。

 イシュルに。

 リフィアは視線をちらっとくぐもった空に向け、その眸を僅かに窄めた。

 たえず胸の奥を渦巻くもの。もうそれとつき合うことにも慣れた。だが、決してその複雑に絡まった鬱屈が消えることはない。

 イシュルが去ってからずっと、リフィアは胸中に渦巻く苦悩と激情と戦いながら、クシムで戦死した兵らの遺族の救済、クシム銀山の復興、そのための資金繰りに奔走してきた。

 辺境伯侯レーヴェルト・ベームが死去してから半年、リフィアの突貫でそれらの問題もみな解決に向け軌道に乗りつつある。

 銀山の一部を担保に領内とフロンテーラの豪商から、そして領内の中間層を中心とした、小口だが大量の債券発行で資金も集まり、先月から遺族への補償金の支給も始まった。そしてつい数日前、クシム銀山でまだほんの僅かだが銀の採掘が始まった。クシムの街の復興も着々と進んでいる。

 これらの取り組みがこのまま順調に推移していけば、自分の考えていた期間よりもずっと早く、種々の問題に決着がつくだろう。

 だがしかし、今までどんなに考えても、考えても解決できない大きな問題がリフィア個人にはあった。

「リフィアさま、以前から手配していた例の物、やっと入手いたしましたが」

 リフィアのすぐ後ろを歩いていたルマンドが身を寄せてきて小声で声をかけてきた。

「大公さまの御使者との謁見はどうされますか」

「御使者にはしばらくお待ち願おう。モーシェも同席させる」

 リフィアは間をおかずにルマンドに答えた。

 城の南門をくぐると、リフィアは家令のみを従え城の執務室に向かった。かつて父の使っていた執務室に。


「これは……。父上の書かれた書簡に間違いない」

 リフィアは広げた巻紙に視線を落とし呻いた。

 父、レーヴェルト本人の直筆ではなくとも、少なくとも当家の書記が父の口述にそって書いたものであるのは確かだ。

 リフィアが持つ巻紙は、さきほどルマンドがやっと入手したと言ってきたもの、かつて辺境伯がブリガール男爵宛に出した書簡の写し、ベルシュ村に対して風の魔法具探索を命令したものだった。

 あの時、イシュルが目にした、と言ったものとおそらく同じものだ。

 それは以前からリフィアがルマンドに入手するよう、命じていたものだった。王都やエリスタールに家人や影の者を派遣し、多くの時間と金を費やしてようやく入手したのものだった。

 当の書簡には、その文面の時候の挨拶に関し重要な文が二ヶ所、記されていた。

 それは「近頃、白亜城の庭園の池に小さな蓮の花が咲いた」と「西の回廊から見える、城内の椎の木の緑の色が最近、とみに濃くなった」の二文である。アルヴァ城の内郭、白亜城内の庭園の事物に触れた文章は辺境伯家の、「回廊」と「西」の文字は辺境伯本人の書簡であることを意味する隠語のひとつであった。本人のサイン、紋章の刻印以外にも、それほど大げさなものではないがこうした符牒が、貴族や領主間の書簡にはよく使われる。当然、偽造、偽文書作成を防止するためのものである。

 辺境伯家の当主の正式な書簡には慣例として、これらの隠語を二つ以上挿入するよう定められていた。当然、ブリガール男爵家の当主や家族、家令なども知っていたろう。

 イシュルが写しを見て辺境伯の出した書簡であると判断したのも、彼が貴族の出す書簡にかならず隠語めいた文章が挿入されることを知っていたから、その具体的な言葉までは断定できなくても、辺境伯の手紙にその独自の隠語らしき文章が含まれていることがわかったからだろう。

 リフィアはその巻紙から手を離し、彼女の座る机の左側に広げられた、ところどころ血で汚れた、ベルシュ家当主、エクトル・ベルシュの口述書に目をやった。

 その口述書は父の死後しばらくして、イシュルによって破壊された執務室の改装時に見つかった、父が秘密に保管していた書類のひとつだった。

 この二つの文章で、父がベルシュ村の事件に深く関わっていたことが明白になった。

「この写し、まさかそなたが偽造したものではないだろうな」

 リフィアは顔を上げ、机を挟んで彼女の左斜めに立つルマンドを睨んで言った。

 随分と露骨な物言いだった。

 家令なら辺境伯家の書簡に使われる隠語も当然理解している。

「そのようなことはございません。誓って」

 ルマンドは何の動揺も見せず、リフィアに向けて頭を下げてきた。

 リフィアは頭を下げた家令を眸を細め、いわくありげな目付きになって睨み直した。

 あの時、イシュルが回廊の南側から姿を消した後も、彼女の慟哭は長い間回廊に響き渡った。

 彼女が泣き止み、立ち上がって父の執務室に足を運んだ時には、ルマンドによって父の遺体はすでに片づけられ、アルヴァ近郊の辺境伯家の墓地に向かっていた。恐るべき手際の良さだった。

 彼女は気力を振り絞って北側の窓が吹き飛び、巨大な獣の爪で引き裂かれたように破壊された板壁の執務室の状況を検分し、その時控えの間にいたラドミラともうひとりのメイドから状況を聞き、父の遺体を埋葬する手配を異常な早さで進めたルマンドを詰問した。

 ルマンドは何事も包み隠さずリフィアに答えた。執務室での辺境伯とイシュルの様子、自身も加わった執務室の仕掛けと両者の攻防、結果上半身が消えてなくなったレーヴェルトの死も。

「ベルシュ殿の強さは姫君もご存知の通り人知を越えたもの。その知謀も侮れませぬ。父君の仇討ちをしようなどと、ゆめゆめご短慮は控えられますよう、申し上げます」 

 ルマンドのこの諫言で、リフィアは家令の考えていることを即座に理解した。

 ルマンドは、リフィアをはじめ辺境伯家の者にイシュルに対する敵討ち、報復をさせないよう、彼に対する感情的な恨みを抱かせないように腐心しているようだった。

 百聞は一見に如かず、レーヴェルトの死に対する衝撃は、言葉による説明と視覚によるそれとでは大きく違ってくる。ルマンドはさっさと前当主の遺体を誰の目にも触れぬよう処理し、一方で言葉による説明では虚言を弄するようなことをしなかった。

 ルマンドの対応はその後の辺境伯夫人、嫡男のモーシェへに対しても同様だった。家令は辺境伯家こそが大事、赤帝龍討伐で失われた兵力、クシムの銀採掘が不能の状態で、どうやっても果たせそうにない仇討ちにこれ以上辺境伯家の力を裂くことなど、絶対に許すべきでない、と考えているようだった。

 リフィアも、イシュルに敵討ちをしようなどとはもとから考えていない。彼女はルマンドの意と同じくして、この半年あまり、母と弟の怒りをおさめ、自家、自領の復活、興隆に力を尽くしてきた。ルマンドはリフィアの、赤帝龍討伐による戦死者遺族に対する補償にも反対はしなかった。領民に大いに報いることはそれこそ国家百年の大計、いつかかならず辺境伯家に大きな力となって帰ってくる。そのことをルマンドは承知しているようだった。

 この男は辺境伯家のために長年、異常とも思えるほど心血を注いできた。だからこそ、そのためには手段を選ばない、悪辣なことを平気でやってくる可能性もあった。

 この写し、父がブリガールに出した、風の魔法具探索の命令が記された書簡を読めば、ベルシュ村の事件で父にも非があったことがわかる。母も弟も、辺境伯家に連なる主立った者もイシュルに対する報復はあきらめざるを得ないだろう。無理に重ね仇討ちを行えば、かえって辺境伯家の体面を傷つけることになるであろうことは、彼らにもわかるだろう。

 いや、今はそれだけではないのだ。巷ではなぜか、実は辺境伯がブリガールにベルシュ村焼き討ちの命令を出していたのだ、という噂が広まってしまっている。噂を流したのはおそらく王家だろうが、そのことで心を傷め、イシュルや王家に対し怒りを再燃させている母と弟を、この、父がブリガールに宛てた書簡の存在がいやが上にも鎮静させることになる。そしてそれは、ルマンドにとって願ってもない状況なのだ。

 だからリフィアはルマンドに、亡き父のブリガールへの書簡がおまえの偽造したものではないか、との疑惑を向けたのである。

 リフィアはルマンドに向けていた疑惑の目を逸らし、執務室の北側の窓に向けた。

 修理改装された執務室は、部屋の南側に新しく従来型の十字の格子の窓がふたつ設けられ、北側の窓も同じ形のものに改められた。辺境伯の使っていた黒壇の机は、成人と同時に正式に辺境伯家の当主となるモーシェのためにリフィアは遠慮して使わず、その奥に同様の机を別に設置してそちらを使っていた。

 リフィアの祖父であるクラエスが設置したのか、執務室の壁の内側を覆っていた荒神の魔法陣は、イシュルによって引き裂かれずにすんだものも含めてすべて取り払われた。

 将来当主となったモーシェがどうするかはいざ知らず、リフィアにはそんなものは必要のないものだった。魔封の結界など、そんなものを使う時点でもう取り返しのつかない状況になっている、と考えるべきなのだ。魔封の結界は、人間自身の力を持って成す武術全般にはまったく効果がない。不完全は防御に頼ってもしょうがない。

 切所において完勝を望めないのなら、それに頼っても意味はないのだ。

「この写しは後で母上とモーシェにも見せることにする」

 リフィアは視線を窓の外に向けたまま言った。

「はっ」

 ルマンドが頭を下げてくる。

「ではさっそく御使者と面会しよう。謁見の間にお通ししろ」

 リフィアは再びルマンドに視線を移して言った。


「……むう」

 リフィアはまたも小さく呻いた。

 大公の差し遣わした使者が彼女から十長歩(六〜七m)ほど離れた先に、いつかと同じ無表情な顔つきで悠然と立っている。

 彼女の後ろには、明るいベージュの小さなマントを羽織った文官が一名、横に赤茶の上着に細い剣を吊るした平服の武官が一名、跪いていた。

「ひさしぶり。リフィア」

 マーヤがその無表情な顔で、いきなり型破りな挨拶をしてきた。

 リフィアの横の椅子に座るモーシェが、体をぴくっと硬直させた。リフィアと椅子に座るモーシェは、マーヤたちより一段高くなった上座にいる。

 リフィアは苦虫を噛み潰したような顔になって、その美しい顔を歪ませた。

「こちらこそ。エーレン殿」

 リフィアは前もって、大公の使者が、最近辺境伯家で施行された大胆な施策に関して説明を聞きに差し遣わされると知らされていた。大胆な施策とは辺境伯家で発行された債券のことである。

 確かにそれは王家からご下問あってしかるべき、重大事だった。

 前例としてあるのは過去に幾度か、中海の大船主が新しい船を造船する時の資金集めに、似たようなことを行ったとされている一例のみだ。リフィアも最近になってアルヴァの豪商のひとりからそれを聞いたが、その前例も今回辺境伯家で行った債券発行と比較すると、ごく小規模なものに過ぎなかった。

 だから大公の使者も、大公家の爵位を持つ高位の文官が遣わされてくるだろうと思っていたのである。

 それがどういうわけか、彼女の前に現れたのは、宮廷魔導師のマーヤ・エーレンだった。

 彼女が大公息女ペトラ・ラディスの乳姉妹で現在大公付き、フロンテーラに滞在しているのはわかる。

 だが、なぜ彼女が……。

「ベーム債券のことだけど」

 マーヤが唐突に、いきなり本題に入ってきた。

 そして爆弾を投げ入れてきた。

「イシュルに教えてもらったんだね」

「くっ」

 リフィアの眉がつり上がる。

 それか。

 彼女の背後に見える大公家の影。

 イシュルは大公女殿下と友達だ、などとふざけたことを言っていた。半ば嘘であろうと思っていたのだが……。

 そうか。いや、むしろ大公自身がイシュルに強い関心を持っている、ということなのだ。

 彼らは、イシュルの持つ風の魔法具だけに関心を持っているわけではないのだ。

「それが事実として、何かまずいことでも?」

 リフィアは薄く笑みを浮かべてマーヤに言い返した。

「むっ」

 今度はマーヤが表情を強ばらせた。

「イシュルはやさしい子」

 マーヤが攻め手を変えてくる。

「だから辺境伯を殺す罪滅ぼしに、あなたにいろいろと教えてあげたんだね」

「……」

 今度こそリフィアは怒りを露骨に面に表わした。

 父の死を出してくるとは無礼な。なぜそこまでして踏み込んでくる?

「そもそもイシュル・ベルシュは、辺境伯家自体に恨みを抱いていたわけではない。もちろん」

 リフィアはそこで意図的にひと呼吸、間をあけた。

「わたしにも、だ」

 マーヤが押し黙った。

 その何を考えているのかわからない眸をじーっとリフィアに向けてくる。

「フロンテーラからフゴに向かう道中は彼といっしょで楽しかった」

 マーヤが多弁になっていく。

「魔獣ともたくさん戦ったし、誰かからの刺客も襲ってきたけど」

 刺客だと? それはまさか……。

 リフィアの顔が真っ青になる。

「わたしは荒れた道を歩くのが苦手。道中はずっとイシュルにおぶってもらった」

 くっ、何だと!?

「はは、それならクシムで彼に助けてもらった時、わたしもおぶってもらった」

「!!」

 マーヤの眸が大きく見開かれる。

 彼女の持つ魔法の杖がぶるぶると震えだした。

「ゾーラ村に滞在していた時はよく、イシュルとともに馬に乗って遠出したものだ」

 もう四の五の構っている場合ではない。

 リフィアは多少の誇張もこめて攻勢に出ることにした。

「あいつは乗馬が下手でな。わたしが手取り足取り教えてやったのだ」

「くっ」

 マーヤの小さく呻く声がリフィアにまで聞こえてきた。

「……王家の魔導師でイシュルにはじめて会ったのはわたし」

 マーヤはあらぬ方に顔を向け、遠くを見る目つきになった。

「それはちょうど、ベルシュ村で多くの村人がブリガールによって殺されたと、彼が知ったときだった」

 そこでマーヤは大きな眸をリフィアに向けてきた。

「あの時のイシュルの姿、あの時イシュルはどんな顔をしていたと思う?」

「くっつつ」

 リフィアは歯を食いしばった。そこまで、そこまで言ってくるのか。

 イシュルにそんな顔をさせた、彼を絶望のどん底に叩き落とした出来事に、父も深く関わっていたのだ。

「……わたしは、わたしはイシュルを恨んでなどいない」

 リフィアは泣きそうにさえ、なっていたかもしれない。

「……父のしたことを申し訳なく思っている」

 マーヤをきっと、睨みつける。

「たとえイシュルが父を殺そうとも」

 リフィアは声を張り上げた。謁見の間に彼女の悲壮な声が響きわたる。

 大きなホール全体に異様な緊張感が張りつめた。

「わたしは、わたしは……父を殺したからといって、イシュルを、イシュルをあきらめたりしない!!」

 言った。言ってしまった。ずっと我慢していたことを。悩んでいたことを。

 父を殺した男なのに。父を殺した相手に想いを寄せるなど、絶対いけないことなのに。

 リフィアの目尻に涙が溜まる。

「……そう」

 マーヤはまさか今までの言動がすべて演技だったとでも言うのか、素の静かないつもの状態にもどっていた。

「そういうことなんだね」

「……!!」

 リフィアは呆然と両目を見開いた。

 やられた? まさか、彼女がわざわざ出向いてきたのはこのため……。

 ベーム債券のことではなかったのだ。

「大公さまがあなたに会いたがっている」

 恥辱に顔を真っ赤に染めたリフィアをよそに、マーヤはいつもの抑揚のない感じで言ってきた。

「フロンテーラに来て? ペトラもあなたに会いたがってる」

 大公女殿下……。そうか。彼女もか。

 王家の者が、年頃の娘がイシュルを欲しがっているということか。

 きっとそれは、彼を掌中におさめれば王権もたやすく手に入る、などという理由だけではないのだ。

 イシュルはブリガールと父を滅ぼした大罪人だ。だが一方で民衆だけでない、多くの貴族、領主たちが喝采を叫ぶ派手な敵討ちを果たし、赤帝龍を追い払った王国の英雄でもある。

 ペトラの結婚相手として、イシュルには充分な資格があるのだ。

 ペトラに会わねばならぬ。彼女の気持ちを見極めねばならない。わたしがこの、マーヤ・エーレンにやられたように。

 リフィアの頬に恥辱の色が消えていく。かわってそれとは違う、熱くたぎるものが彼女の全身を駆け巡りはじめた。

 これでリフィアはいやが上にもフロンテーラに出向かざるを得なくなった。

 

 マーヤたち大公の使者が去った後も、リフィアはずっと、その場に立ちつくしていた。 

 ……何が友達だ。

 イシュル、イシュル! イシュル? イシュル……。

 彼はわたしの父を殺した。わたしの父は彼の家族や故郷の人びとを皆殺しにする、大きなきっかけをつくってしまった。

 彼を愛するわけにはいかない。愛があれば何でも許されるわけではない。

 わたしは辺境伯家の娘なのだ。すべてをなかったことにして放り出すことはできない。

 自分の父を殺した男を愛していいのか? それは許されることなのか。

 イシュルだって同じ気持ちかもしれない。

 でも、彼をあきらめることはできない。はからずも、マーヤ・エーレンによって自分の気持ちを引き出されてしまった。あんなに簡単に。

 ……わたしはどうしたらいいのだ。 

 両手の拳を握りしめる。 

 リフィアの足許でぴきっ、と鋭い音が走った。

 彼女の足許の大理石に、ひびが入ったのだった。

「ひっ」

 どこからか小さな悲鳴が聞こえてきた。

 彼女の横の椅子がカタカタと細かく音を立てている。その椅子はとりたてて豪奢なものではないが、辺境伯家の当主のみが座ることのできる、由緒ある椅子である。いわば辺境伯家の玉座だ。

 その椅子にはぶるぶると震えているモーシェが座っていた。彼は両目に涙をたたえ、顔を真っ青にしていた。

「ん?」

 リフィアが、なぜおまえがここにいる? とでも言いそうな雰囲気で、視線を弟の方に向ける。

「あ、姉上、め、目が赤い、あ、赤いです……」

 モーシェが怯えきって、必死の体でリフィアに声をかけてきた。



「悪い話ではないと思うのだがね、ベーム卿」

 一度に数百人は入れそうなアンティオス宮殿の謁見の間、その中央に椅子がぽつんと二脚、世間話でもするような距離で、男女が向き合うように座っている。

「わたくしは辺境伯家当主代理。そのように呼ばわれるのは……」

 そして会話を続けるふたり。それはまったく奇妙な構図だった。

「ああ、これは失礼した。それで、ご覧の通り」

 大公は両手をさらっと広げ、言った。

「此度はうちうちの話としたのだ。これは公式に決まったことではない。きみも今すぐ結論を出す必要はないから、アルヴァへ帰ってからでもゆっくり考えてくれたまえ」

 ヘンリクはこれで用件は終わり、といった態で足を組んで背を後ろに伸ばした。

 リフィアは微笑を浮かべ、心の中を読まれぬよう気を配っていた。

 マーヤの挑発的な訪問から十日ほど、リフィアは護衛の騎士も含め十名にも足りない少人数で、フロンテーラの大公城に入城した。

 大公との謁見はアンテイオス宮殿中央にある謁見の間で行われた。行われたが、大公はリフイアの挨拶、口上もそこそこに、従僕に椅子を二脚もって来させ、互いの近臣、随員らを別室に下がらせて広い謁見の間でそのままふたりきりの会談をはじめてしまった。

 大公がリフィアが話してきた用件は二件、まずひとつ目は金銭の無償援助だった。一千フレート、金貨一千枚(一千万シール)を無償で譲渡する、というものであった。

 破格の金額、というわけではないが、今の辺境伯家にとっては馬鹿にできない額である。しかも譲渡であるから返金する必要がない。ただ、用途に関しては大公から注文がつけられた。

「今、辺境伯家では兵備が後回しにされている。貴家の現状を鑑みれば致し方ないところだが、聖王国も連合王国も、現在の隣国の状況は王国にとってあまり芳しいものではない。ぜひ、一日も早く兵力の充実を図ってもらいたい」

 大公の申し出はリフィアも予想していた通り、辺境伯家に対しより強固な、王家というよりもヘンリク個人が首輪をつけようとするものだった。大公は宮廷をどう納得させたのか、四名の宮廷魔導師の損失に対しても、特に辺境伯家の責任を追及するようなことは言ってこなかった。ヘンリクは恩を売りまくって、辺境伯家を大公家の前に這いつくばらせ、鎖でかたく縛り付けるつもりなのだ。

 だが、まさか大公の申し出を断るわけにもいかない。今の辺境伯家の状況で許されることではなかった。

 リフィアは大公の申し出に、なんとか喜色を浮かべ感謝して見せた。大公の援助を受け入れるしかなかった。

 二つ目の用件は、リフィアの婚姻の話だった。相手は王都の近郊、北部に領地を持つ、ベールヴァルド公爵家の嫡男とのことだった。ベールヴァルド公爵家も、レーヴェルト・ベームの先代、クラエスの頃に王家から王女が嫁いでいる。

「もちろん今すぐの話ではないよ。モーシェ殿はまだ成人まで間がある。今の辺境伯家の状況では当分の間、きみが家政を見なければならない。将来、きみがベールヴァルドに嫁ぎ子を成したなら、その子を王家に養子として迎え入れたいのだ」

 ヘンリクは臆面もなく、すでに決定事項であるかのように言ってきた。

 ヘンリクの言の意味することは明確そのもの、それはひと言でいえば、リフィアの持つ魔法具、武神の矢を王家に返せ、ということだった。ベールヴァルド公爵家も辺境伯家と同じ、血縁的には王家の遠縁にあたる家だ。両家の子どもに武神の矢を継承させ、その子を王家がもらい受ける。

 このことに関してはリフィアも予想はしていた。

 ただ、その相手がベールヴァルドとは意外な感じがした。今現在でも宮廷では王弟のヘンリクはもちろん、さまざまな派閥、勢力間で次代の国王をめぐって秘かに、緩やかな多数派工作が行われているが、リフィアはベールヴァルド家は現国王のマリユス三世か、ヘンリクのひとつ上の兄、デメトリオの側ではないかと睨んでいた。

 これは武神の矢のことだけではない。わたし自身も餌として使われるのだ。

 ヘンリクの話に、リフィアは穏やかな表情を自身の顔に貼りつけたまま、無言で通すことにした。どうせまだ先のことだ。今すぐはっきりと返事をする必要はない。

 リフィアは王国内外で広く、その美貌とめぐまれた資質を知られている。どの貴族家、領主らも彼女の嫁入りなら諸手をあげて歓迎するだろう。ヘンリクはリフィアを餌に、ベールヴァルド家を自派に取り込もうとしているのだろう。当然、ヘンリクがリフィアの嫁ぎ先を世話をする、ということは彼が辺境伯家に大きな影響力を持っている、ということを他に広く知らしめることにもなる。

 リフィアの脳裡にイシュルの顔が浮かぶ。貴族の家に生まれたのなら政略結婚は当たり前だ。だがそれでも、イシュルのことを思わずにはいられない。

 そこで姿勢を崩し、ゆったりした面持ちになったヘンリクが、意外な話をはじめた。

「きみはベールヴァルド家の嫡男など見たこともないだろう。だが心配することはない。夫婦の幸せというものは、いっしょになった後にどれだけ互いに歩み寄えるかで決まる」

 それは年長者なら誰でも口にするような、陳腐な前置きからはじまった。

 おおよそ二百年ほども昔のこと、王国へ連合王国の侵攻が本格化した頃、ベールヴァルド公爵家の北に隣接するオルベーラ伯爵家が、連合王国と内通しているとの嫌疑をかけられた。その真偽のほどは今はもうわからないが、この時、王家の命を受けベールヴァルド公爵が急ぎ軍を発し、オルベーラ伯爵の居城を急襲、城はまたたく間に落城、伯爵本人と息子たちは討ち死に、もしくは捕まって処刑され、伯爵夫人とひとり娘は囚われた。

 当然オルベーラ伯爵家は領地を失い、廃爵となる見込みであったが、そこで問題が起こった。他家の養子になっていた伯爵の弟が、王家の処分に異議を申し立てたのだ。通常は黙殺されるか異議を申し立てた者も罰せられて終わるところが、その人物が王国でも屈指の築城術を持っていたため、王家は彼の異議を無視することができなかった。

 王家や宮廷の首脳陣は、この時すでにイヴェダの剣、レーネを対連合王国戦に投入し、彼女が戦線を押し戻している間に、連合王国との主戦場である王国西北部に、互いに連繋した城塞群を築いて強固な防衛線を構築する青写真を描いていた。築城術に秀でたオルベーラ伯爵の弟は、その計画に絶対になくてはならぬ人物だった。王家は彼の要望を受け入れ、オルベーラ伯爵家の存続を認めることにした。

 王家はまず、生き残った伯爵のひとり娘に王家に近い、あるいは強い忠誠心を持つ家の者を選んで結婚させ、近隣の諸候からも同様の者を後見に選び、旧伯爵領の半分ほどをその娘に相続させることにした。だが折り悪く、身分や年齢の合う者がなかなか見つからない。彼女との婚姻に条件の見合う者は王国西部、王都近隣ではただひとり、オルベーラ伯爵家を滅ぼしたベールヴァルド公爵家の次男しかいなかった。

 王家は困り果てたあげく、何故(なにゆえ)か伯爵の弟が反対しなかったこともあって、伯爵のひとり娘と公爵家の次男、曰くのあるふたりの結婚を強行した。しかも、伯爵の居城を落とした次男の実家であるベールヴァルド公爵家に後見させることにした。

 今ではあきらかではないが、ひょっとすると領地が隣り合い、年齢の近かったふたりはすでに既知の間柄であったのかもしれない。伯爵の弟が反対しなかったのは、そのことを彼が知っていたからかもしれなかった。

 ふたりが結婚した当初はわからない。が、夫が妻の父や家臣らを殺した側であった、妻が夫に父を殺された側であったこの夫婦は、後に多くの子をもうけ、夫は他に側室も持たず、晩年までともに仲睦まじく暮らしたと言われている。

「……」

 大公は話し終わると、リフィアに僅かに含みのあるような笑みを浮かべた。

「ちょうどベールヴァルド公爵家の名が出たのでね。まぁ、きみも知っての通り、こんな話は我々のような王家や貴族の家の者には特に珍しくもない、よくあることだ」

「は、はあ」

 リフィアは自分の顔が少し熱を帯びているのを感じた。

 なぜ? どうして。

 大公は先に公爵家との婚姻の話をしておきながら、なぜこんな話をしてきたのか。

 確かに、わたしがイシュルをどう思っているか、マーヤ・エーレンを通じてすでに大公は知ってしまっているかもしれない。だが、それでなぜこんな話をしてくるのか。

 これではまるで……。

 リフィアは呆然となって、うっすらと笑みを浮かべる大公の顔を見つめた。

 これではまるで、イシュルと添い遂げることをむしろ奨励しているようではないか。

「あっ、の」

「それでは後ほど。今晩はうちうちで晩餐を開くとしよう。ね?」

 リフィアは自分で何を話そうとしたのか、わからなかった。

 ヘンリクはそんな彼女を煙に巻き、彼女をひとり残したまま、さっさと謁見の間を出て行ってしまった。

 大公のたてる高い靴音が、閑散とした謁見の間に寂しく響き渡った。


「誰もいないのか」

 リフィアは謁見の間の正面の観音扉を自ら開き、外に出た。

 外は宮殿の出入り口に面した吹き抜けの広いホールになっている。薄暗いホールには、リフイアの供の者も、大公のお付きの者たちも、誰もいなかった。

 リフィアは何とはなしにホールの中央の方へ歩きはじめた。

 すると、ホールの左隅の方に急にひとの気配が現れた。宮殿の出入り口から入ってくる光を逆光にして、小さな影がふたつ、奥にもう少し背の高い影がひとつ。

 リフィアがその影の方に近づくと、小さなふたつの影は少女に、奥の影はメイド姿の女性になった。

 リフィアは驚きに目を見開いた。ふたりの少女は彼女もおなじみのマーヤ・エーレン、いつもの黒いマントに魔法の杖を斜めにして持っている。もうひとりは……。

「ふむ。そなたがリフィア・ベームか」

 白いドレスに、頭には可愛らしい銀製のティアラをつけた、小柄な少女。

 リフィアは彼女に向かって跪いた。

 この少女はヘンリクの娘、ペトラ・ラディスだ。間違いない。

 彼女が大公息女に会うのははじめてだった。

「噂にたがわず、なかなか美しい娘じゃ」

「此度は、お初にお目にかかり恐悦至極……」

「よい、かた苦しい挨拶は抜きじゃ」

 リフィアが頭を上げると、すぐ目の前にペトラが立っていた。

 リフィアを見おろしてくるペトラの顔が案外に近い。

 ペトラは悪戯っぽい笑みを浮かべるとリフィアに言った。

「父がまたつまらぬことを申したであろう」

「あっ、いや、それは」

 言い淀むリフィアに、ペトラがその笑みを深くした。

「父の言うことなど気にせんでよい。いきなりあんな話をしおって」

 ペトラがくいっと顎をあげる。

「そなたもベールヴァルドに嫁入るのは気がすすまんじゃろう。それが嫌ならよい方法があるぞ?」

「……」

 いきなり大胆極まりないペトラの言に、リフィアは二の句がつげない。

「籍を抜くんじゃ。辺境伯家からな」

「!!」

 リフィアは呆然とペトラの顔を見た。

「そなたには弟がいよう。なら籍を抜いて、自由になってしまえばよい」

「……あっ、それは……」

 爵家から籍を抜く。それは珍しいことでもなんでもない。家を継げない次男以下の子らが成人した時、その家の女子が結婚した時。もちろん一族の者が何らかの罪を犯し、あるいは家を守るために追放される場合もある。

 地位に権力や富。さまざまなものを失うかわりに、統治する者としての責務からも解放される。また、籍を抜いたからといって、一族の、家族の血や絆が失われるわけではないし、状況により復帰することも可能だ。

「そなたほどの者なら王家の許可がいるだろうが、そこは妾が何とかしてやる」

「あっ、あっ…」

 リフィアは驚愕する自分の心の中に、明るい何かが広がっていくのがわかった。

 今は。今はまだだめだ。遺族の面倒を見なければならぬ。クシムを立て直さねばならぬ。

 イシュルに約束したことを果たさねばならない。

 でも、その後は……。

「わたしは自由だ」

 リフィアは小さく小さく、誰にも聞こえない声でつぶやいた。

 その声は彼女の心にこれ以上はない、大音響でこだました。

「今、イシュルがどこにいるか、そなたは知っているかえ?」

 大きな眸のペトラの目が、微かにすぼめられる。

「そ、それは……」

 リフィアも実は自家の影の者を手配して、イシュルの行方を探してはいた。だが、聖王国にいることは確かなものの、その足取りはまだ途中までしかわかっていない。報告が届いていない。

「かわりといってはなんじゃが、イシュルを妾のもとへ一度連れてきてくれぬか。どうしてもあやつに頼みたい大事なことがあるんじゃ」

 ペトラはイシュルの居場所をリフィアに話した。

「そなたも家のことがあろうし、今すぐでなくてもよい。今年の収穫祭のあたりでどうじゃ?」

 ただ見開かれていたリフィアの眸に、違う色が混ざり込む。

 ペトラも当然聖王家の動きは知っていよう。そしてビオナートの企みも。

「ではたのんだぞ。リフィア殿」

 ペトラはリフィアの返事も効かずに踵を返し、ホールに接続する宮殿の大廊下を東の方へ歩いていく。

 その場に跪いたまま、リフィアは無言でペトラを見送った。

 その目が付き従うメイドの足取りに向けられる。

「でも、独り占めは駄目だよ。リフィア」

 いきなり横から声がかけられた。

 マーヤがリフィアの横で、いつもの無表情に、ほんの微かな笑みを浮かべて立っていた。


 リフィアはひとり、アンティオス宮殿の外に出た。

 彼女の目の前に、美しい姿の樫や椚(くぬぎ)の木々の緑が広がった。遠く、三本の大きな尖塔を備えた城館が見える。風が濃い緑の匂いを運んできた。

「わたしはいつか、自由になる」

 いや、彼女が言ったことをそのまま、言葉どおりに受け取ってはいけない。

 ペトラは籍を抜く話をたとえに、もっと自由に考えろ、生きろと言いたかったのではないか。

 自由……。何から? どうやって?

 イシュルのやったこと。父の罪、そしてわたしの罪。

 そこから逃げることは許されない。

 でも、乗り越えることはできる筈だ。

 わたしの求めるもの。それはみなひとつなのだ。

 リフィアは目を窄め太陽を仰いだ。

 熱く輝く太陽に薄雲がかかっていた。その雲の淵から白く輝く光線が四方に伸びている。

 愛すればこそ。

 恩讐の彼方に、きっとイシュルがいる。


 

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