喧嘩

「だからさ、俺は悪くないと思うんだよね」

「うーん。どっちもどっちだと思うけどなぁ」


僕は今何故か、クラスの陽キャの佐枝君の恋愛相談を受けている。なんでも彼女と喧嘩したんだとか。


あの麗華先輩と付き合っているんだから、もう恋愛マスターでしょとかなんとか意味が分からない事を言われて、今に至る。


なんでも、デートの時、佐枝君が遅れちゃったらしい。でもその彼女さんもいつも遅刻しているから、別にいいだろう。とかなんとか。


それで彼女が怒っちゃって、佐枝君も意味が分かんないから謝りたくないんだとか。


そう言えば、僕と麗華って喧嘩したことないな。




「そう言えば、僕と麗華って喧嘩したことないね」

「ん?そう言えばそうだね」

「世間では、喧嘩しないカップルは長続きしないとか聞くよね」

「...........」


麗華の料理をしていた手が止まる。


「...........それって、ほんと?」

「まぁ、喧嘩するほど仲がいいなんて言葉もあるくらいだし」

「...........ゆう君!」

「ちょ、危ない、危ない。一旦料理作り終えてからにしよ?」

「...........分かった」


それから、麗華は考え込むように下を向き、でも料理の手は止めずに作り終える。

そして、僕の部屋に行き、ぼくが座り、その上に麗華が座る。


「あのね、麗華。ただ一般的に言われていることだから、気にしなくていいよ」

「でも...........心配なものは心配なの。ゆう君が他の女の子にデレデレしているって思うと...........うっ」

「あーもう。泣かないで。僕はずっと麗華が好きだから」

「私も、好きだよ。でも...........」

「分かった、じゃあ、お互いにちょっと嫌だなぁとか思っているところを言おう」

「...........うん」


麗華の嫌なところ...........。……。・・・。どうしよう、何も思いつかない。

麗華を見ると、何も思いつかないのか、うーんと唸っている。


可愛いな。麗華。僕との事を考えて一生懸命になっているんだもんな。自然と頬が緩む。


僕が麗華の事を見ているのに気付いたのか、嬉しそうに笑って、僕の頬にキスをする。そして、はっとして


「あ、ゆう君のそう言うところがダメ!そんな優しい顔で私のことを見て、誘惑してる。それで、学校でイチャイチャしちゃダメは無理だよぉ」

「えぇ...........。それを言うなら、麗華が可愛いのが悪いと思うんだけど」

「もぅ...........ゆう君!!そう言うところ。ゆう君が素直に私に好きって言ってくれるだけでどれだけ私が嬉しいのか分かってない!!」

「もう、何回も言ってるんだけどな」

「それでも、無理なの!あと、ゆう君のさりげない気遣いもダメ。かっこよすぎるから。私を受け入れすぎ、私何処までもゆう君に溺れちゃうから。もっと自分を大切にして!」

「それを言うなら、麗華もだろ?僕の事さりげなく慰めたりしてくれたり、毎日料理作ってくれるし、可愛いし。麗華こそもっと自分を大切にした方がいいと思うよ」

「むぅーー」

「んーーー」


お互いがお互いのほっぺをつまんで...........二人して笑ってしまう。


「ふふっ」

「ははっ」

「でもね、麗華。僕はそんな甲斐甲斐しく僕の世話をしてくれる麗華も好きだから」

「もぅ、ゆう君!!そういうところ!!」


僕に勢いよく抱き着いてきて、すりすりしている麗華。



喧嘩?したのか分からないけど、喧嘩してもお互いを尊重して乗り越えられる。そう思った。

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