第74話
「ゆー君♪ゆーくん♪私のゆーくん♪」
「や、やめてください、麗華先輩」
「...........ゆーくん、ゆーくん、私のゆうくん♪」
リズムにのりながら、僕の前を楽しそうにスキップする麗華先輩。
何故先輩呼びに戻したかと言うと..........あの後の事だ
『麗華、一旦離れよう?ね?』
『ゆーくん、ゆうくん。えへへ』
首に腕を回して、頬を僕の頬にくっつけてすりすりしている麗華。可愛い...........じゃなくて!!
公衆の面前でやっぱりこういう事するのは恥ずかしい!少し僕も調子にのってしまったのも悪いけれど。
どうしよう...........このままじゃ、何も食べずに午後の授業が始まってしまう。
...........ある意味おなかいっぱいだけど.....
『大峰君』
「なんですか」
近くにいた夕夏先輩が小さく声をかけてくる。
『麗華を戻したいなら、多分、先輩呼びに戻せばいいと思うよ』
「確かに」
『もぉーゆうくん。こっち向いて』
麗華.....先輩が自分の方に強引に顔を向けさせる。
『いつ見てもかっこいいよぉ』
蕩けた目でこっちを見てくる麗華先輩。その目に少しだけ吸い込まれそうになったけど、日ごろから鍛えている自制心でどうにか持ちこたえることができた
『麗華.....先輩。一旦離れましょう?』
『!!!ゆ、ゆうくん。名前!名前で呼んでくれないといやー!』
現実に戻ってきたのか、先輩がイヤイヤしながら顔を振って手を握って上目遣いで『おねがい』と涙目で訴えてくる。
くっ...........はぁ。僕はそっと麗華の耳元で囁く。
『家で二人きりの時の方が僕はいいな。麗華の可愛いところはあんまり他の人には見せたくない。ね?』
『う、うん!』
..........でこうなってるわけだ。
僕は呼び方を戻したけど、麗華先輩はそのまま、ゆう君呼びだ。
「久しぶりに公園行きますか?」
「..........ゆう君が家に帰らないと麗華って呼んでくれないから少し嫌」
「..........麗華、一緒に公園に行こ?」
「っ…うん!!」
僕の手を取り、そのまま公園に一直線の麗華先輩。もぅ、可愛くてしょうがない。
少し歩き、いつもの公園に着く。
「少し寒いね」
と言って、こっちにピッタリ寄り添ってくる麗華。
十一月に入り少しだけ肌寒くなったけど、多分麗華先輩はくっつきたいだけだ。
「あの......麗華先輩」
「......ぷいっ」
「麗華」
「うん、なぁに?」
ニコニコしながら、こっちを見る麗華先輩。
「僕、麗華にどんな風に告白すればいいか分からないや」
「……?」
首を傾げる麗華。それもそうか。意味わからないもんな。
今日一日考えてみたけど、どんな風に告白すればいいのか分からなかった。
抽象的な案しか出なくて。
情けないと思いながらも、本人に聞いた方がいいかなと言う結論になった。
先輩は「そっか」とつぶやき、
「そんなの......」
先輩は僕の顔を自分の方に向け、透き通った目でじっとこっちを見る。そして、はっきり、クリアの僕の耳にその言葉が届く。
「好き」
「っ......」
「私はこれだけで十分だよ、ゆうくん」
胸の鼓動が速くなる。今まで、たくさん言われてきたのに、なぜだか、麗華先輩を見れない。
それだけその言葉に気持ちが籠っているように思えた。それは......僕があのクソ女に告白した時と重なって見える。
そして、麗華が僕の耳で囁く
「告白のときは、私以上の好きが聞きたいな、ゆーくん」
「…頑張ります」
この人にはせめて、告白の時ぐらいは絶対に勝ちたいと切に思った。
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