第72話

「あの、先輩。その……他に好きな人ができたんですか?」

「...............え?」


麗華先輩がぽかんとした顔をする。え?あれ?違うのかな?


「なんか最近僕に対して、変だからもしかしたら…って思っちゃって」

「ち、違うの裕也君!」


先輩が身を乗り出して否定する。


「えっと……あのね」

「は、はい」

「その……ね?私......」

「......」


私?


「もう我慢の限界なの」

「え、あ、......」


やっぱり僕が何かしてしまったみたいだ。我慢の限界ってことは結構前から何かやってしまっているらしい。


「すいません!僕が何かしちゃっていたのに、それにも気付けなくて。直しますから。本当にごめ.......「もう裕也君への愛が止まらないの!我慢の限界なの」


へ?


「だ、だから、今まで見たいに裕也君に抱き着いてしまったら私、止まらなくなっちゃう......」


へ?あ、あれ?


「じゃ、じゃあ、僕のことが嫌いになって訳でもなく、好きな人ができたわけでもないんですか?」

「え?私は裕也君の事が大好きだよ!ほかに好きな人なんていないよ!最近なんて、もう裕也君の事しか頭になくて、授業中も集中できなくて、あなたのこと以外考えられないの!!大好きなの!」

「は、はい!」

「あの日、裕也君が保健室でキスしてくれた時からもう思いが止まらなくて」



...............ん?


え、んー。あ、ちょ、ちょっと待って!!!


「あの......麗華先輩。…あの時起きてたんですか?」

「……う、うん。うっすらだけどね。私の唇に君の唇が触れたんじゃなかなって」

「っ……!!え、あ」


は、恥ずかしい……。


「だ、だって、しょうがないじゃないですか!あんなことがあった後だったので麗華先輩が可愛くて、愛おしくて仕方がなかったんです」

「はぁーーーー!もぅ......いいよね。いいよ.....ね」


何かが、途切れたように、そう言って僕に近づいてくる麗華先輩。頬が紅潮して、少し息が荒い。


「麗華先輩......」

「裕也君…。体が熱いの......」


先輩が僕の頬に手を置き、そっとキスをしようとする。


僕はそれを......。


「僕は......嫌です」

「え?」

「ちゃんと好きって言ってから、付き合ってからそういう事しませんか」

「じゃあ......言って?」


頬を染めて......上目遣いでそういってくる。


「え、あ、う......」


い、良いのか?こんななし崩し的に告白しちゃっても…。で、でももうお互いすきなのは間違いないし、麗華先輩に裏なんてない事は分かってる。すべて片付け終わっている。もう、いいんじゃないか。でも…。


言っていいんじゃないか……僕。じゃ...........あ。


「..............ふふっ」

「え?」


麗華先輩がクスッと笑う。


「少しからかっちゃったね」

「え?からかってたんですか」

「.......一割だけ」


それってほとんど本当ってことじゃないですか


「でも、裕也君にも.....タイミングがあるって言うのも分かってる」

「……すいません」

「でも、だからってもう私はほとんど我慢ができなくなってるの。……だからね」


先輩が僕の耳に顔を近づけ、囁く。


「次に私が襲っちゃう前に、告白してね、もう待てないよ♪」


そう微笑んで、僕の胸に顔をうずめる。


「はぁ、裕也君の匂い.....落ち着く.....」


……全然落ち着かない。






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