番外編
時系列的には、夏休みが明けて球技大会が始まる前くらいです。
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「ねぇ、裕也君。これって今年買ったの?」
「えっと........これは二年前に買ったやつですね」
麗華先輩が持っていたのは手持ち花火のセットだ。
あれは確か、姉さんが気分で買ったはいいけど、結局やらなかったやつだ。
そういえば、結局あいつのせいで花火を堪能できなかったし........。まぁ麗華先輩がきれいだったのも十分すぎるほどあるけど。
季節外れだけど…
「やります?」
「え、やりたい、やりたい!」
麗華先輩が目を輝かせながら、こっちを見てくる。
今の先輩は尻尾を振って喜んでいる犬に見える。……可愛い。犬耳つけた先輩すごく可愛い。
「裕也君?どうしたの?」
「あ、いや、なんでもないです」
悟られないように妄想を引き出しの奥にしまう。先輩なら恥ずかしがりつつやってくれそうな気もするけど........。
僕は首をぶんぶん振り、雑念を消去する。
久しぶりにやりますか。
今の時刻は20時を回ったくらい。近くの公園にバケツを持って来た。別にそこまで都会というわけではないので、この時間帯に周りに人はいない。
「裕也君、早くやろっ」
「そうですね」
久しぶりに手持ち花火をやる。高校生にもなって花火くらいで喜ぶなんてと思うかもしれないけど、まぁそこは男の子ですし。
麗華先輩は多分家庭の事情で、こういう機会がなかったんだと思う。目の前にいる可愛い先輩は手に花火を持ってウキウキしている様子だ。
僕は先輩の花火に火をつけてあげる。
「わぁーー、見てみて裕也君。すごくきれい」
「そうですね。とってもきれいです」
どちらもきれいだ。
僕も花火に火をつけた。
「じゃあ、裕也君。次はこれやろう」
先輩が持っていたのは、線香花火だ。
「いいですね、やりましょう」
あれから結構遊び、残ったのは線香花火と手持ち花火数本。
「じゃあ、どっちが長く持つか勝負ね。勝ったらこの花火を使う権利が得られる。どう?」
「いいですね。面白そうです」
そっと火をつける。段々と形を帯びていき、ぱちぱちと時折音を発しながらきれいに花火が咲く。
「わぁー、とってもきれい」
先輩が喜んで線香花火がほんの少しだけゆれる。
「落しますよ、先輩」
「おっと、そういう作戦ね。ずるいよ、裕也君」
「何もしていないですけど........」
「ふふっ」
先輩が楽しそうに笑う。
「来年もこうやってふたりで遊べるといいね」
来年か........僕たちは付き合えているのだろうか。……まぁそれは僕次第だけど。
僕が勇気を出して踏み出すことができたなら、それは叶えられること。
「でも来年は先輩受験ですよ」
「あーそっか。じゃあ、再来年」
「再来年は僕が受験です」
「もー。そこは嘘でもいいから一緒にしましょうって言ってくれたらうれしくて抱きしめちゃうんだけどな」
線香花火が一際大きくなる。
「先輩が本当に抱きしめてくれるのなら、言いますけど」
ぼそっと、小さい声で言う。
「えっ............」
ぽとっと線香花火が落ちる。
「あ、先輩。線香花火落ちちゃいましたね。僕の勝ちです」
ポカーンとしている先輩に背を向けて、手持ち花火に火をつける。
「え、ちょ、ちょっと待って裕也君。それって............」
「きれいですね、先輩」
「作戦?それとも........」
「きれいですね、麗華先輩」
「もー、裕也君!」
本当に、可愛くてきれいです。先輩は。
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