第62話

「麗華先輩、ちょっと恥ずかしいので普通に歩きませんか」

「それは、ちょぉーっと無理なお願いかな」


それにいつもより視線が痛い。学校の中で指を絡めながら一緒に歩くっていう事をしていないからかそれとも麗華先輩の目がいつもよりとろけているからか。


「さっきまで他の女の子にデレデレしてたんだから私を邪険にしないでほしいなぁ」


先輩が上目遣いで少しだけ頬を膨らませているので、興味本位で人差し指で頬を突っついて空気を抜く


「ぷすー。もぉ裕也君」


不満げな顔で抗議してくる割に楽しそうにしている麗華先輩。だめだ。先輩がなにしていても可愛く見えてしまう。


「そんな悪い裕也君には……えいっ」


腕に抱き着き嬉しそうに笑っている先輩と、さらに厳しくなった周りの視線....はぁもういっか。


今更といえば今更だし。


「じゃあ、麗華先輩どこ行きましょうか」

「うーんっとじゃあ、たこ焼き食べよっか」

「分かりました」


そういえば、夏祭りの時は色々あって結局食べられなかったしなぁ。


「じゃあ、私買ってくるから裕也君は待ってて」

「いいですよ、僕が買ってきます」

「私が裕也君に買ってきたいの」

「……お願いします」


そんなに可愛いくおねだりされたらこっちも買う気はうせる。絶対、麗華先輩男を甘えさせてダメにする系の人だ。


そうして、麗華先輩を待つこと五分くらい。


「お待たせ裕也君」

「ありがとうございます、先輩。……なんで一つだけなんですか」

「まぁまぁ」


と言って麗華先輩に連れていかれ、屋上まで来る。人は数人いるくらい。


「じゃあ、そこに座って」

「はい、あと麗華先輩」

「....もぅ裕也君。気が利きすぎ。裕也君は何もしなくていいのに」


先輩が買っているうちに自販機で適当に買ったイチゴミルクを先輩に渡す。

いつも先輩飲んでいるからぁ。


「……先輩は僕をダメ人間にしたいんですか」

「裕也君は駄目人間じゃないよ。……じゃあ、あーん」

「……」

「あーん」

「…あ、あーん」

「おいしい?」

「……おいしいです」

「じゃあ、もう一回、あーん」

「……」


もしかしてそれ全部僕用のたこ焼きですか。……そういえば麗華先輩僕のクラスで食べてたっけ。


「じゃあ、もう一回」

「その前に、一回飲ませてください」

「じゃあ....」

「なんで、麗華先輩は飲み物まで飲ませてこようとするんですか....」


前もあったなぁ。こんな事。


「裕也君が可愛いから」

「……飲み物は自分で飲ませてください」

「むぅ。分かった。でも良かった。前できなかった事が出来たし」

「....良かったですね」

「うん!」


楽しそうに笑う先輩。


文化祭中はずっと笑顔を見られたらいいな









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