第63話
「そういえば麗華先輩は、ミスコンには出ないんですか」
毎年開催されるミスコン。結構な盛り上がりを見せているらしい。
「それがね、去年無理やり出されてなんだかんだで一位とっちゃたから、今年も出ないかって、言われて流れで出る羽目になっちゃって」
麗華先輩がすごくめんどくさそうな、残念な顔をする。ぼそっと「もっと裕也君と文化祭見て回りたいのにな」と言ったのを聞いて、頬が緩む。
それにさらっと一位取ったってすごい事言っているよな。
「ん?どうしたの裕也君」
「何でもないです。それより先輩。自分のクラスは大丈夫なんですか」
「え?あ、あとちょっとで時間だ。はぁ……もっと裕也君と一緒にいたいのにな」
「....僕もですけど。先輩の劇見てみたいので頑張ってください」
「……え?裕也君。今なんて言ったの?」
「良いから、遅れちゃいますよ」
「ちょっ、裕也君」
気恥ずかしさをごまかすように僕は先輩の背中を押す。
すると、くるっと振り返り笑顔で
「うれしい、ありがと。大好き」
「何の話ですかね」
「ふふっ。じゃあ、行ってくるね」
「期待してて」と言って麗華先輩が楽しそうに笑って、クラスに戻っていく。
僕は何をしようか。幸い夏樹からは麗華先輩の劇は見られるように調整してもらったし。ミスコンの時間はいつの間にか彼女を作っていた夏樹が彼女が出るというので一緒に行こうとしつこいくらい誘ってきたのが功を奏して空いているし。
クラスを手伝うか。まだ時間あるけど、特に見るものないし。
そうしてクラスに戻り、黙々と作業をして時間になり、一旦抜ける。
麗華先輩のクラスは、体育館で劇をやるみたいだ。近づくにつれどんどん人が増える。
劇が人気なのかそれとも.....。はぁ、意外と僕ってめんどくさいのかもしれない。
少し自分に呆れてぼぉーっと歩いていると、あまり見たくない顔、
お友達と楽しく喋っているあいつ。あっちは僕に気付いてないように見える。
僕は無言で何も見ていない、気付いていないふりをして歩く。
麗華先輩のおかげか、鼓動が早くなっているけど、以前みたいに訳が分からなくなるわけでなく、自分の気持ちを抑え込む事ができた。
そして、体育館に着き周りを見渡すと、麗華先輩たちのクラスだろうか、わたわたと、とても慌てた様子で忙しそうにしている。
何かあったんだろうか。もしかしたら麗華先輩のかかわることかもしれないし……
「あの、忙しそうにしていますけど大丈夫ですか」
「君は.....如月さんの彼氏の大峰君かな?」
「彼氏ではないですけど、そうです」
麗華先輩が有名だからか、ぼくの名前まで広がっている。
「うーん、.....ちょっと待ってて」
「あ、はい」
待つこと数分。
「裕也君!」
「どうしたんですか、先輩」
「それがね.....」
話を聞くと、麗華先輩が役をする白雪姫の衣装がなくなったらしい。
「朝にはあったんだけど、さっき着ようと思ったらなくて.....」
「どこに置いておいたんですか」
「演劇部の部室を借りて、まとめてハンガーに掛けておいたんですけど、それだけなくて.....」
それだけがない……って
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