第61話 一華side
私は小さい頃から、他の子たちより可愛いしきれいだし、他の子より優秀だと先生にも言われてきた。
私自身もそう思うし、ちやほやされていきた。
当り前のように私はいつもクラスの中心にいて、誰があの子のことが好きとか、誰が嫌われているのかとか。
私が大体思うようにできるし、そういうものだと思う。
だって、私他の子より良い子だし、可愛いし。
中学校に入ってからは、いろいろな男子に告白された。少し男子に優しくすれば一か月後には告白された。『あなたのことが好きです』って。
サッカー部の先輩、テニス部の先輩、その他いろいろ。
私には、好きっていう感覚が分からなかった。確かにかっこいいとか思う事はある。けど好きになるというのは分からなかった。
私は最初、付き合うってどんなことなんだろうと思って試しに一人の結構人気な先輩と付き合ってみた。
そしたら、たくさんの人にちやほやされた、『いいなぁ』「あの先輩と付き合えるって流石一華』とか。
その時、思った。
あ、自分のステータスになるんだって。かっこいい人とか人気な人と付き合えば。
だから、私は自分に合う、自分のステータスになる人と付き合った。
そんなある日、たまたま委員会で一緒になったあの子。大峰裕也だ。
最初、軽く喋って普通の周りにいる子たちと同じようにどうでもいい友達関係になった。
でもいつからか、あの子が私の事を好きって分かった。私大体そういうの分かるし。
私はあの子の事を考えるともやもやした。
あの子に駅であった時には見知らずの小さい子を助けていたりして。その時の笑顔を見たときに胸に少しだけ痛みが走った。
他にもいろんな人を助けたり、ごみを拾ったり。
それは何の役に立つの?他の人がやってくれるじゃん。
学校でそういう事をするのは分かる。だって自分の評価につながるもん。
あの子の事を考えるといろんな感情が出てくる。イライラしたりもやもやしたり苦しくなったり。それに、あの子の純粋な笑顔を見ると、なんだかむずむずして不快な気持ちになった。
だから私は、あの子から距離を置いた。それとなくあきらめるように言った。けど分かっていなくて、段々ともやもやが膨れ上がってきて。
多分私はあのこのことが嫌いなんだと思う。
『私、先に行って高校で待っているから』
君は入れないようなところだけど。
『はい!』
その笑顔だよ。その笑顔。
だから私はあの子がこれないような偏差値の高い高校に行った。私は元から頭良かったので、少し勉強を頑張ったら入れた。
そうやって入った高校の初日。あいつが如月麗華が新入生代表挨拶をしたときみんなが一瞬であいつに目を奪われた。雰囲気に呑まれた。
その日からあいつのことで話題持ちきりだ。
あいつはいつも私にとって邪魔でしかない。
あいつは私よりモテて、私より可愛くないのに。愛想もないのに。
その席は今まで私の物だったのに。だから私はあいつにいろいろやったし、いろいろ根回しもした。
それから、さらに大峰裕也まで同じ高校に入ってきて、私に告白してきたが、私は断った。
その瞬間大峰裕也の顔が、歪み、泣きそうな顔になった。それはそうか。だって私が待っているといったんだもの。
私はその場から足早に去った。
少し経ち、あいつは大峰裕也のことが好きらしいという噂を耳にした。
だから、大峰裕也を巻き込んであいつを貶めようとしようとしたが、大峰裕也のあの笑顔が頭をよぎり踏ん切りがつかずに時間だけが過ぎ、夏休みの八月後半。
お祭りで大峰裕也を見つけた。見た目が変わり、印象がかなり変わったが私があの笑顔を忘れるはずがない。それにこの子がいるならあいつがいる可能性が高い。
私はあの子に近づき声をかけた。かなり動揺して、困惑して怯えていて、逃げるようにどこかに走って行った。
二学期に入り、突然あいつから話しかけてきた。
多分、あの子からこいつに話が行ったのだろう。
「これから先、裕也君に近づかないで」
「なんで?お前に言われる筋合いなくない?」
そう、その目が私は嫌いだ。その冷え切った目。入学当初からずっとイライラする目。
「じゃあ、今度の球技大会。バドミントンで負けた方が勝った方の言う事何でも聞くっていうのはどう?」
なんでも?
「分かった、でも嘘ついたら許さないからね」
「分かった」
それから、あいつに負けて大峰裕也に近づくことはできなくなった。
でもさ……。
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