第53話 麗華 過去 2
私はいつもどうり学校に来て、下駄箱を開けると一つの手紙が入っていた。
何とも、古典的だけど私のLIKEのアカウントを持っている人なんて指を折って数えられるくらいだ。しょうがないのかもしれない。
はぁー。またかぁ。何度もこういう事があると好意だと分かっていてもめんどくさいと思ってしまうのは許してほしいな。
手紙の内容を確認し、要約にすると、放課後に中庭に来てほしいとのこと。名前からして男の子だし、この名前どこかで見たことがあるような気がする。
……。思い出せない。………思い出したのは…あの安心して笑った裕也君の顔。
うぅー。うぅ~~。裕也君……。
ダメだ。考えるだけでなんだか頭がふわふわしてくる。顔が熱くなるし、顏がだらしなくなってしまう。
やっぱり私、彼のことが……。
っとこんなところで立ち止まってたら、邪魔だね。早く教室に行こう。
そうして、いつもどうり午前中の授業を終え、夕夏とお昼を食べ午後の授業をして、放課後になった。
はぁ、少し憂鬱だ。告白を振ってしまった後少しだけ罪悪感があるし何より、またどこからか情報が洩れて、一華に伝わるとなると面倒くさい。気にはしていないけど、ネチネチ絡まれるのはなぁ。
私は、スタスタと廊下を歩き、中庭に行く。すると私の目から見ても顔が整っている男の子がいた。
……。あ、思い出した。この人二年生で、この学校で一番モテるっていう人だ。
「すいません。遅くなりました」
「全然大丈夫だよ」
屈託なく笑ってくれる。
「えっと、麗華さん」
「はい」
「好きです。俺と付き合ってください」
「ごめんなさい」
「……」
悪い人ではないのは分かった。けど、私はいまだに男の人が苦手なのは確かで。一人例外はいるけど……。
「……理由を聞いてもいいですか」
「好きな人がいるからです」
これまでは、適当にそう返していたけど今は……。
一人の顔を思い出す。少しだけ口角が上がるのを自覚して、少し笑ってしまう。
「じゃあ、ごめんなさい。失礼します」
私はその場を去った。
そうして次の日、放課後。
「あんた、賢人君の事振ったってホントなの」
「……そうだけど。もしかして、一華、その人の事好きだったの?」
「っち」
一華はこっちに近づいて、至近距離で睨んでくる。
私は冷たい、冷えた目しか送れない。哀しい目しか…。
そのせいか、一華は何か堰を切ったように怒鳴る。
「なんで、いつもあんたばっかりなのよ!私の方が可愛いし、きれいだし、あんたなんかより、あんたなんかより.....!!」
「……」
「私、あんたが大っ嫌い。許さないから」
キッっとこっちを見て教室を出ていく。
その次の日から、私の周りには女子は一人も寄ってこなくなった。喋ってくれるのは、夕夏や、前から仲良くしてくれていたひとだけ。
多分、やったのは一華だ。カースト上位の権力をフルに使ったんだろう。
でも、実力行使はされていない。ただ空気のように扱われるようになっただけ。
……………
……
…
「ふぅー」
私は息をつき、話を一旦区切る。
「それから、一華には彼氏ができて、裕也君はこの学校に来ても、不幸にしかならないのを知っていたのに私はそれを裕也君に言わずに……」
見ていないふりをしてしまった。心のどこかで裕也君と一緒に学校生活が送れると思ったからかもしれない。そんな事を思ってしまったのかもしれない。
「それに、今まで私はあの子に嫌われているから、裕也君にまで被害が出るかもしれないのに……」
私は、ようやくうつむいていた顔を上げて、裕也君の顔を見る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます