第48話

「あのさ裕也」

「ん?何?」

「もしかして、バドミントン部だったりした?」

「いや、違うけど」


やっと暑さが引いてきて、秋らしくなってきた今日この頃の体育の授業。

球技大会が近いという事もあって、授業はそれぞれの種目練習になっている。


そんな訳で、僕たちはバドミントンをしている訳だが。


「じゃあ、なんでそんなにうまいんだよ」

「なんで、って言われてもな」


子供のころに姉さんと一緒によくやっていたからだろうか。

それに、暇なときはたまにするし。


麗華先輩が聞いたら、私もやりたいっていうだろうな。


言うのかな?うーん......今度誘ってみようかな。


「夏樹はミドルに打ちすぎ、そんなんじゃ簡単に返されちゃうよ」

「そんな事言ったって、裕也の無駄に早い玉返すのに必死なんだよ」

「無駄とか言わないでくれ。試合には役立つと思うし」


僕のご褒美も懸かっているんだ。真面目に優勝狙いに行かないと。


^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^


「麗華、あんた強すぎ。前はいい感じに勝負ができてたのに。何でそんなにうまいのよ。私も一応元バドミントン部なのが恥ずかしくなってくるよ」


この子は夕夏。私の数少ない友達である。


「えっへん」


球技大会まで、あと数日。私は放課後の学校に(裕也君と一緒に帰れないのはすっごく悲しいが)残り全力で勝ちにいくため、今度遊びに行くとき駅前のクレープ一個と交換で夕夏に付き合ってもらっている。


「もしかして、例の後輩君?」

「えへへ~」


なんて言ったって裕也君のご褒美が懸かっているしね。

そのためなら私、なんでもできる気がする。


「恋は盲目っていうけど、ほんとなんだね」

「何が~」

「顔がにやけて、声まで甘くなってきてるし」

「え~そうかな」

「鏡見てみなさいな」


ダメだ。自分でもほんとは分かっている。頬が緩みきっていることぐらい。

でも、仕方ないじゃないですか!それも裕也君がかっこいいのが悪い。


「あの、学校一のイケメン君も振り、数多の男たちを撃墜させてきた麗華が男だなんて今でも信じられないよ」

「え~だって裕也君がかっこいいのが悪いんだよ~」

「あー、ハイハイ。何回もきいた」

「でね~裕也君とこの前....」

「聞いてない!?」



そうこうして、休憩を止めまた少し練習をして、九月だからか少し早く日が沈むようになり、暗くなる前に練習を止めて、夕夏は自転車で私とは帰る方向が逆だったため、送る事を遠慮されてしまった。


私は少し、なんだか一人で帰るのが寂しくて早めに歩く、そうしてようやく校門が見え始める。


あぁ。あの校門の前毎日のようにいたっけ。裕也君は最初全然話を聞いてくれなっかたから、無理やり話しをするためによくいたなー。


「あの、麗華先輩」

「..........え?」


ふとよく知った声に名前を呼ばれ、そちらに振り向く。


「ゆ、裕也君」

「はい。一緒に帰りませんか」


え、だって。


「裕也君、私今日用事があるから先帰っていいよって言ったよね?」

「でも、待っていちゃダメとは言われてないので、麗華先輩の事を待ってたんです。その...一緒に帰るために」

「え、え、えー!」


え、嘘っ。うれしい、すごくうれしい。


「ふぅ、少し寒いですね」


そう言って、手を差し出してくる。その割に顔が赤くて。


さっきまですごくかっこよかったのに、今度は急に可愛く見えてもう…もうっ。


私はその手を取り、そっと呟く。


「大好き」


大好き
















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