第46話

「はーい。あーん」

「麗華先輩、飲み物まであーんする人はいませんよ.....」


屋上へ続く階段に来て、昼ご飯を食べているんだけど......。

ずっと、こんな感じに世話を焼きたがっている。


「どうしたんですか?麗華先輩。そんなに世話を焼きたがるなんて」

「うぅー。だってぇ」


そうして、ぽつぽつと理由を話し出す


「裕也君がさらにかっこよくなって、みんなが裕也君に寄っていっているのを見て、『私』は裕也君の視界に入れているのか急に不安になって」

「みんな僕のイメージが急に変わったから、面白がってきているだけです」

「......わかってない。全然わかってないよ。裕也君。」

「麗華先輩......?」


麗華先輩がこっちをじーっと見て言ってくる。

もしかして、僕何かまずい事を言ったのかな?


そして「うん」っと呟くと意を決したように、麗華先輩が深呼吸をして口を開く。


「裕也君はかっこいいの!それにね、優しくてでも、たまに可愛い一面も見せてくれて」

「きゅ、急にどうしたんですか!?麗華先輩」

「私、気付いてるんだよ?さりげなく私の歩調に合わせたりとか、歩くときは車道側に回ってくれたりとか」

「ストップ、ストーップ!」


まずい、麗華先輩がブレーキを全然踏んでくれない。それどころか、ヒートアップしているような気さえする。


「あとは、私が段差でつまずいたときには支えてくれたり、あと高いところに在る物とかさっと取ってくれるし」

「麗華先輩!ストーップ!」


どうしよう、まったく止まってくれない。

何をしたら止まってくれる?


.....やってみるか?でも、今はそれしか思いつかないし。


「麗華先輩は、いつもきれいですよね。でも、可愛く見えて時々わがままで、大人っぽいと思ったら、少し子供っぽくて」

「ちょ、ゆ、裕也君」


よっし。先輩の顔が真っ赤になって止まってくれた。お返しもできたし、あとは駄目押しするだけ。

嘘ではない、僕の本心を吐き出していく。


「僕が落ち込んだ時にはしっかり支えてくれて、僕を前向きにしてくれる。そんな先輩は麗華先輩しかいませんので」

「え、ちょ、.....うん」

「だから、不安になんてならないでください。僕は相変わらず女性不信ですので。こんな風に喋れるのは、家族を除いて麗華先輩だけですので」


僕は、無意識に先輩の頭を撫でる。


「うん」

「ですから、『麗華先輩』は僕の視界にしっかり、くっきり入っています」

「うん!.....えへへ」


先輩は笑顔になり、僕の方に体を預けてくる。


......ふぅ。良かったぁ。あのまま続けられていたらどうなることだったか。


それにしても......冷静になるとかなり恥ずかしい事を口走ったような気がする。

そう意識したからか、急に熱くなってくる。


いや、分かってやったんだけど。実際にやってみると思った以上に恥ずかしい


「どうしたの?裕也君?顏赤いけど。もしかして風邪!?大丈夫」

「違います。なんか、その......麗華先輩を止めるためにやったとはいえ、本心ですから、構えてやっても意外と恥ずかしくて」

「.......確かにそうかも」


ほんのり、先輩の方も赤く染まり、少し俯いて体を僕の方に預けてくる。

こういう、小さい仕草さえ可愛く見えてしまう。


僕はぼーっと麗華先輩の顔を見て、頭を触っているとふと思った。


僕たち何しに此処に来たんだっけ?


.......。


「まずいです!先輩」

「ん?なに?何もまずくないよ。裕也君が頭を撫でてくれるのにまずいなんてないよぅ」


先輩は少しとろけた目でこっちを見てくる。


「今は、お昼休みで全然僕たちお昼食べられてないし、もう終わりそうです」

「え!?あ。ほんとだ。急いで食べちゃお」


こうして、昼休みはあわただしく終わった。






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