第45話

麗華先輩と少し走って学校に行き、お昼を屋上に行く静かな階段で一緒に食べる約束をして、先輩とは別れた。


教室に入り、唯一の友達である夏樹に声をかける


「夏樹、おはよう」

「....お前、誰だ?」

「大峰裕也だけど?まさか....忘れたのか?」

「裕也?あの前髪が伸びてて少しもやっとしていた裕也か?」

「夏樹、僕の事そんな風に見てたのか....」

「いや、ちがっ....わないけど」

「…違わないのか。まぁいいけどさ。雰囲気が変わったのには、いろいろあったんだよ」

「ふぅーん」


事情を察したかどうか知らないけど何も追求せずにいてくれるところは、夏樹のいいところだと思う。


ところで....


「ところでなんで、こんなにざわざわしているんだ?転校生でも来るのか?女子がちらちら見てくるのはいつもどうり夏樹目当てだろうけど」

「ちげーよ。ある意味転校生だけどな。お前が急にさわやかイケメンになったからみんな戸惑ってんの」

「夏樹、時に謙遜は嫌味になるんだよ?」

「はぁ....前から思ってたけど裕也は自己評価低すぎな」

「これでも、随分高く見積もっているんだけどね」

「どこが!?」


夏樹は僕の事を買いかぶりしすぎだ。そんな高スペックだったら一華あいつ

にも振られることはなかっただろう。


でも今は振ってくれて感謝しかない。おかげで....僕の気持ちを変えてくれる、充たしてくれる、前向きにさせてくれる。きれいでいつも甘えてきて笑顔でたまにわがままでつらい時は支えてくれる最高な人を好きになれたから。


「おーい裕也ー。どうした急ににやけて」


気付くと、僕が起きているか確認するようにぶんぶん手を振っている夏樹がいた。


「え?にやけてた?」

「うん」


....どうしよう。無意識だった。....あんまり麗華先輩の事を考えすぎないようにしよう。勝手ににやけてしまうらしいし。


そんな事を考えていると、ドアが開き先生が入ってくる。


「席に着けー。えーっと....」


帰りは麗華先輩と帰れるといいなぁ。



「あのさ、裕也君、私たちクラスメイトだけどLIKEつないでないし、交換しない?」

「あ、私もー」

「えっと、そのーあはは」


どうしてだろうか、入学始まって以来初めてこんなにクラスの女子と話している気がする。


事は、三時間目が終わった後に起こった。


この学校は午前三時間、午後は四時間か、たまに三時間授業である。

授業を終え少し浮かれた気分で、筆記用具を片付けていると、いきなり知らない女子から声をかけられ、だんだんと増えて行き、囲まれるくらいには増えてしまった。


まずいな、先輩との約束時間に間に合うかどうか。


頼みの夏樹は購買に全力で走って行ってしまったし。


こう、女子に囲まれると僕は緊張で喋れなくなってしまう。

はぁ、やっぱり女子は苦手みたい。あんなに楽しく流暢に僕が喋れるのは麗華先輩とだけみたいだ。


うーん。どうしようか。無視して行ってしまうとか?流石に少し断りを入れてから行った方がいいのかな?いくら女子が苦手とはいえ。


そんな事を考えていると、不意に視界が閉ざされる。


「だーれだ?」

「麗華先輩です」

「あたり♪でも裕也君?これはどういう事かな..?」


麗華先輩は不満そうな、どこか心配そうな声を上げて、椅子に座っている僕の事を後ろから抱きしめ耳元で囁く。


「えっと、これは…あとで説明しますから早く一緒にご飯食べましょう?」

「むぅー。分かった」


やっぱり、少し遅れちゃったな。僕が早く対処しておけばこんな事にならずに済んで、先輩も余計な心配をせずに済んだのに。


先輩はまだ不満そうだったけど、一緒に食べられることがやっぱりうれしいのか少し機嫌がよくなったように見える。


「じゃあ、ごめんなさい。ご飯食べてくるので」

「えっと、うん」

「じゃあ、行きましょう」

「うん♪」


麗華先輩は僕の手を取り、指を絡めてくる。それにこたえて僕も絡めると嬉しそうに笑ってくれる。


やっぱり、他の女子とは全然違う。麗華先輩は特別であると、再認識した。







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