第43話
「またね、母さん、父さん」
「じゃあね。母さん、父さん」
「ねえ、もうちょっと泊っていかない?」
「そうだぞ、ゆう、鏡花」
「帰る、もう流石に帰る」
僕が決心した日から数日たった。
何故明日には帰る予定だったのに、数日なのかというと僕と姉さんは帰ろうとしているのだが母さんと父さんがこうしてごねてくるからだ。
それに......
「裕也君、もう少しいませんか?」
これだ。麗華先輩にこう言われると弱ってしまう。
僕は麗華先輩のしたい、やりたい事。お願い事とかはすべて聞いてあげたいって今なら思う。
もう決心したし、そのことについてもう目をそらさない。
でも......一回あんな振られ方をしてすぐに告白するのは......その、僕には流石に簡単にはできない。
だから、僕は可能な限り麗華先輩の事を尊重したい。
でも、流石にもう…家に帰らなきゃ。考査もあるし何より......
「麗華先輩」
「ん?なに?」
僕は麗華先輩の耳でそっと囁く
「僕は麗華先輩と二人っきりでゆっくりしたいです」
先輩がポッっと顔を赤らめもじもじしながら俯く
「......うん。えへへ」
先輩はちょこっと僕の袖を掴み嬉しそうに笑う。
「っていう事で、帰るから」
「もう、しょうがないなー。分かった。でもまたいつでも来なさい」
ニヤついている母さんが少しうざいが帰れるので結果オーライだ。
「うん」
「麗華ちゃんも」
「はい!」
そうしてようやく、家を出て帰路につき途中、コンビニなどにもよりながらもう一つの家に姉さん、麗華先輩と一緒に戻る。
「ゆう。姉さんはこれから友達と飲み会があるから夕飯はいらない。あと、帰るのも遅くなる」
「......分かった」
姉さんなりに僕に気を使ってくれたんだろうな。
「ありがと」
「…なんのことだろうね」
「なんだろうね」
二人して意味もなくふふっと笑ってしまう。
「ん、行ってきます」
「行ってらっしゃい」
「ん」
姉さんが気を使ってくれたんだからありがたく使わせてもらわなきゃな。
「むぅー。思わぬ伏兵?でも兄弟の関係に嫉妬するのもなんか違うから......」
先輩がぶつぶつ何か言って、抱きついてくる。
「先輩、そういうのは座ってからにしましょう」
「え!?座ったらいいの」
「はい」
先輩が驚いた顔をしているが、僕は先輩の手を掴み、リビングに行き抱き着く。
「あ、あの裕也君。まだ座ってないけど」
「そうですね。でも廊下でするよりはマシですから。それにリビングじゃないとクーラーついてないですし。あ、ごめんなさい、嫌なら二度としませんし、振りほどいてくれてかまいませんから」
「......その言い方ずるい..嫌な訳ない。このままでいい」
良かったぁ。嫌われたらどうしようかと思ったけど。
ここ最近、麗華先輩に自分から行くようにしているけど、嫌がられたり嫌われたりしたら次こそ立ち直れないかもしれないから反応を窺いながらしてるが......前したことでさえ、意識が変わるとこうも違ってくるんだなぁ。
こう、緊張するというか麗華先輩がいつも以上にその......うん。そういうこと。
それより何をしてくれればもっと喜んでくれるだろう。
…確か。
「んっ。それ気持ちいい」
「良かったです」
一緒に寝たとき、これが安心するとか言っていたから、してみたけど喜んでもらえて良かった。
こういう小さな気付き、喜んでくれるという事でさえ意識してからは僕の方がうれしくなる。
だから…もう少しだけ待ってください。せめてクリスマスには告白しますから。
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