第41話
「裕也も、しっかり決めていかないとな」
「必要かな?」
「大事だぞ、こういうのって」
昨日言っていたお祭りに行くのだが、麗華先輩の事は母さんがいろいろやっていて、僕は父さんに遊ばれているっていうか、服装やら顔とかを整えられている。
父さんは、かっこいいい部類に含まれているためか、髪の整え方とかをよく知っている。素人の僕がやるより、かなりうまくできると思う。
僕が髪をセットしたのって、麗華先輩と最初にデートした時が初めてだっけ。それから一回もしてないけど。
僕にとって初めてのデートだったからいろいろ調べたりして、すごく緊張してたな。
昔の事を思い出しているうちに終わったみたいだ。
「んー。まぁこんなもんかな」
「ありがと」
鏡を見ると、長い髪の毛をワックスでがっちり固められてオールバックにされていて、多分、いつもよりはマシな顔になっていると思う。
流石父さん、僕が僕じゃないみたいだ。
「裕也にとって、はじめての彼女だからな。しっかり捕まえておかないとな。父さんと同じで顔のパーツはいいんだから」
「要らない気を回さなくていいから」
そんな事を言っていると、後ろから声が聞こえる。
「お、お待たせしました」
麗華先輩と目が合う
「「......」」
「......どうかな?」
「すごくきれいで似合っています」
「本当?」
「はい、とてもきれいです。見惚れてしまいました」
「ふふっ。やった!」
帯は白色で、浴衣は白地に青色の金魚の落ち着いた、大人びた印象を与えるもので、髪は結い上げていて簪でまとめているのか麗華先輩が喜ぶたびに銀鎖がゆらりと動く
僕の陳腐な語彙力では、似合っているとか、きれいだとしか言えないけど。
正直一緒に行く人が僕でいいのかっと思っちゃうくらい。
「さ、行きましょう」
「うん♪、でもちょっと待って」
「なんですか」
先輩は僕の耳に背伸びをして囁く
「私も裕也君がいつも以上にかっこよくて見惚れちゃった。言葉を失っちゃうくらい」
「…そですか」
「うん♪そうだよ」
僕は気恥ずかしくなって、早く家を出る。
「じゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃい」
母さんがにやにやしていたけど、無視して家を出て、十分くらい歩き会場に行く。
花火が始まるのは、一時間くらい先の七時くらいからだろうか。
「麗華先輩、何食べたいですか?」
「うーんっとね」
先輩はあたりをきょろきょろ見回して、
「たこ焼き食べたいな」
「分かりました」
「お兄さん」
「おう」
「たこ焼き二個くださ」
「一個ください」
「一個でいいんだな」
「はい」
そうして、麗華先輩はさっさとお金を払ってしまう。
「先輩、なんで一個しか買わないんですか?」
「秘密」
先輩はふふっと笑い僕の手を握る。
「離れないように…ね?」
「......分かりました。あ、でも僕かき氷食べたいです」
何年ぶりに食べるだろう。久しぶりに食べたくなった。
「先輩は、何味がいいですか?」
「じゃあ、いちごで」
「分かりました。前教えた公園のベンチに座っていてください」
「えぇ。離れたくないな」
「大丈夫です。できるだけ早く向かいますから」
先輩は、浴衣だから少し歩きずらそうだし、少し休憩したほうがよさそうだと思った。
幸いここから公園近いし。
それに、なんで一個しか買わないのか、分からないのが怖いっていうのもあるけど。
そうして、さっと用事を済ませようとするが......
「ねえ、そこの君」
ちょんちょんと背中をつつかれる。
ん?この声どこかで聞いたような。
振り返るとそこには
「私たちと一緒に花火見ない?」
......一生会いたくもない相手、一華がいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます