第40話
麗華先輩を案内した日から数日たち、明後日には帰ることになる。
「っていう事で、ゆう。明日、麗華ちゃんとお祭り行ってきなさい」
「え?関係ある?」
「いいですね!私も裕也君と一緒に行きたいです」
先輩はにこにこしながら、こっちをちらちら見てくる。
はぁ…。
「分かりました。麗華先輩がいいのなら行きます」
「やった!」
「やったわね、麗華ちゃん。じゃあ、しっかり浴衣着ないとね」
「え!浴衣あるんですか?」
「あるわよ。麗華ちゃんにもばっちり合う浴衣が」
母さんと麗華先輩がワイワイと盛り上がっている。
麗華先輩のお母さんとはこういうやり取りできなかったんだろうな、と思うと今こうして麗華先輩が楽しそうにしているのを見ると、良かったなって思う。
「ゆ、裕也君。どうしたの?」
「なんですか?」
「ゆう。今あなた......」
「ごめんなさい、嫌でしたよね」
それもそうだよな、そんなにじろじろ見られたくないだろうな。
「すっごい優しい目で私を見ていたのでその......ドキドキするというか。少し恥ずかしいというか。だから嫌じゃない!」
「そですか」
「そだよ」
先輩は少し恥ずかしそうに、えへへっと笑うと手を握ってきた。
「一緒に楽しもうね、お祭り」
「気が早すぎますよ」
「待ちきれないよぉ」
先輩はふふっと笑うとそっと握っていた手を少し強く握ってくる。
「じゃあ、今日は布団に入ってこないでくださいね。いつもそのやり取りで寝るの遅くなっちゃっていますから」
「それはいやー」
先輩はイヤイヤと首を振って上目遣いで見てくる。
「それじゃあ、明日のお祭りは行きませんね」
「もっといやぁー」
「どっちかにしましょうね」
「うぅー。裕也君のいじわるぅ」
いつもはお姉さんというか、できる人なんだけど、こういう時は小学生みたいだよなぁ、と思っていると渋々、麗華先輩はこんな提案をしてくる。
「じゃあ、一緒にお風呂入ろ?」
「悪化してるじゃないですか」
「じゃあ、一緒に寝よ?」
「ううぅ。......はぁ、分かりました。少しだけですよ、少しだけ一緒に寝てもいいです」
「やった♪裕也君大好き」
「はぁ......」
そうして夜になり、寝る時間になったので布団にもぐる。
「お邪魔します♪」
「…少しだけですからね」
「はぁーい」
そうして麗華先輩は抱き着いて、胸に顔をうずめて、うれしそうな顔をしている。
「本当に、少しだけですからね」
「うん♪」
その日は結局一緒に寝てしまった。
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