第36話

「だから、母さんはしゃぎすぎ」

「ごめん、ごめん。裕也と鏡花それに…麗華ちゃんも来てくれたしね」

「えへへ」


母さんはそういって麗華先輩に抱き着き、麗華先輩は麗華先輩でされるがままにされている。


車に乗って、家に帰ってから母さんがずっとこうだ。


「それより、母さん。僕の部屋まだそのままにしてある?」

「そのままよ。あと、麗華ちゃんも裕也の部屋で寝るから」

「分かっ......分からないよ!」

「分かりました。お義母さん」

「ちょっと待って、麗華先輩。勝手に承諾しないで。それに部屋余ってるでしょ」

「なんでよー。麗華ちゃんと、もう付き合っているみたいなものでしょ」

「まだ付き合ってないし!」

「へぇ。まだね?」

「ち、違うっ」

「ふふ、えへへ」


麗華先輩、顔を赤くして手で隠さないでください。


「じゃあ、僕がリビングに寝るから麗華先輩が使ってください」

「裕也君…私と一緒がそんなに嫌?」


麗華先輩が目に見えて落ち込み、泣きそうな顔をして僕の顔を上目遣いでのぞき込んでくる。


「せ、先輩。......それは卑怯ですよ」

「......だってぇ」

「分かりました!分かりましたから」

「…ほんと?」

「はい、ほんとですから。落ち込まないでください」

「うん。......えへへ」


麗華先輩が上目遣いで見たので様子を見ながら優しく頭を撫でる。


「母さん、来客用のお布団ある?」

「あるわよ。それにしても......」」


母さんがにやにやした顔でこっちを見てくる。

少し、うざい。


「じゃあ、僕が布団を使うので、麗華先輩がベットを使ってください」

「一緒に寝てくれないの?」

「流石に、無理です」

「前は一緒に....」


僕は麗華先輩の口を人差し指でそっと止め、耳に顔を近づけ囁く


「先輩、少し口をチャックしてください」

「…うん」


麗華先輩はなぜか顔を赤らめ、おとなしくなった。


「ほら、イチャイチャしてないでお昼食べちゃおう」

「してない」


それから少し遅くなったが母さんが作ったお昼を食べ、今は部屋でゆっくり本を読んでいる。


ちなみに麗華先輩は一時間前くらいから母さんと一緒に夜ご飯の買い出しに行っている。


そうしてゆっくりしていると部屋の扉が空き


「ただいま、裕也君」

「お帰りなさい、麗華先輩」


そうして、隣にそっと隣に座る。


「すいません、麗華先輩。少し母さんがうるさくて」

「うんうん、全然。私うれしい。こんな事して貰えなかったから」

「親と何かあったんですか。......嫌なら話さなくてもいいですよ」


麗華先輩は苦笑し


「そんなに、深刻な話じゃないよ。私の両親は仕事熱心で私にあまり構ってくれないし、ちゃんと私を見てくれなかったので、私の親とは違って少しびっくりしただけ」

「そうですか」



少しうつむいた麗華先輩をそっと撫でる。


「僕の両親はちゃんと見てくれますから、甘えていいと思いますよ」

「......えへへ。そうだね。将来私のお義母さんとお義父さんになるから」

「知りません」

「ふふっ、えへへ」

「なんですか?」

「何でもないよー」

「......そうですか」


僕は気恥ずかしくなりトイレに逃げた。







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