第30話

「お待たせ、裕也君」

「はい、すごく待ちました」

「もぉ、そこは全然待ってないよ、って言ってくれてもいいのに」

「全然待っていませんよ」

「すっごい投げやり!もうちょっと抑揚つけて言ってよぉ」

「今日の服いつもはきれいというか清楚のような服でしたけど今日は可愛いですね。とても似合ってますよ」

「もぉ、なんかごまかされたような気がする。でもすごいうれしくなっちゃた。ありがと」

「はい」


いつもの軽いやり取りをして、予定していたプールに行く。


僕は元から下に水着を着ていたからすぐに着替えが終わって今は場所どりをして麗華先輩を待っているところ。


なんか緊張するなぁ。僕麗華先輩の彼氏でもないのに。


カップルもいるから余計意識しちゃうし。


「裕也君お待たせー」


麗華先輩がこっちに走ってくる。


......周りの視線付きで。


「どう?似合うかな?」

「…。はい」

「裕也君顏赤いよ?もしかして意識しちゃってるのかな?」


先輩が顔を覗き込みニコニコしながらこっちを見てくる。なので


「はい。すごく意識してしまいました」

「..そ、そっか」


素直に感想を言うと麗華先輩は顔を赤くしてもじもじしてしまった。こういう事にはなぜだかもじもじしちゃうんだよなぁ、麗華先輩。



よしっ。日頃のからかわれているのをやり返せたような気がする。でもなんか微妙な空気になってしまった。


「じゃあ、いきましょう」

「う、うん。あ、ちょっと待って。裕也君日焼け止め塗った?」

「あ、すいません塗ってないのでちょっと待っててもらえますか?」

「待つのはいいけど、私が塗ってあげるよ」


先輩が日焼け止めを持ってニコニコ、なぜだか嬉しそうにしている。


「いいですけど、私も塗ってとか言わなければいいですよ」

「そ、そんな事言わないよ」


って言ってるけど、あからさまに落ち込んでるし。


はぁ、ほんっとこの先輩は。


「分かりましたから、落ち込まないでください。その…少しだけならやりますから」

「う、うん!ありがと」

「はいはい」

「じゃあ、先に塗ってあげるからそこに寝て」

「こうですか?」

「うん」


先輩の手が僕の背中に日焼け止めを丁寧に塗っていく。


なんか、なんかなぁ。こうゾクゾクするというかなんというか、不思議な感覚だな。いろんな感情が心で渦巻いている。


「はい、終わったよ」

「…ありがとうございます」

「じゃあ、私も塗って?」

「その、…あくまで麗華先輩が塗れないところだけですから」

「うん」


うつ伏せになり、水着のホックを外した。


なんか、なんか。いけないことしている気持ちになる。


「先輩、いいんですね?」

「うん、いいよ」


僕は背中に日焼け止めを塗っていく。


「あっ」

「大丈夫ですか!?」

「…うん。大丈夫だよ。だから、続けて」

「分かりました」


無心になれ、無心になれ。


僕は麗華先輩に変な気をおこしちゃいけないんだ。


あくまで、友達なのだから。


そうして神経をすり減らし、やっと塗ることができた。


「裕也君ありがとう。あれ?どうしたのすっごいげっそりしちゃってるよ!大丈夫?」

「...はい、大丈夫なので、早く遊びに行きましょ」

「うん」



プールに入る前にこんなに疲れて大丈夫かな?今日












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