第22話

「キャー、裕也君こわーい」

「ちょ、麗華先輩わざと当ててますよね?」

「えー?何をかな?」


っく。入園して麗華先輩がお化け屋敷にどうしても行きたいと言ってきたわけだが......このようにさっきからずっとくっ付いてくる。


…。絶対にくっつきたいからだよね…。お化け屋敷入ったの。


「はぁ、麗華先輩。少し離れてください。手を…。」


と言って恐る恐る手を差し出す。


…。まぁくっ付かれるよりマシだしね。


「…う、うん」


そうして若干顔を赤らめながら手を取り指を絡ませてくる。


「これくらいならいいですよね?」

「…はい」


それから若干ドキドキしながらもお化け屋敷を楽しみ、ジェットコースターをしに行く。


依然、手をつないだままだ。


「麗華先輩、怖くないんですか?」

「え?うーん。乗ったことないから分からないかな。でも多分大丈夫だよ」

「......その心は?」

「裕也君と一緒なら何でも楽しいからです」

「......お後がよろしくないですね」

「ふふっ。照れてるのかな?」

「......。別に」


ほんっとこの人は。


でもなぁ。そんな事言われたら引き下がれなくなった。


実は僕は高いところと絶叫アトラクション系が苦手だ。そう、ジェットコースターはその二つが合わさって不愉快がコラボレーションをしている。でも…麗華先輩が楽しそうだし我慢するか。


それから緊張を紛らすため麗華先輩のことを聞いたり家について話したりいろいろ話し順番が来た。


「麗華先輩そろそろ手を放してください」

「…でも、戻ってきたらまた......ね?」

「分かりました」


そうしてゆっくりジェットコースターは動き出し......。





はぁ。はぁ。はぁ。し、死ぬかと思った。


「ゆ、裕也君大丈夫?」

「はい、何とか」


もうだめかと思った。


「裕也君、飲み物買ってくるよ」

「…すいません」

「大丈夫だよ。裕也君はそこに座っていて」

「…はい」


はぁ。ダメだな。情けないなぁ。


自分がリードしなきゃいけないのに。


「裕也君ー。お待たせ。はい」

「ありがとうございます」

「いえいえ」


......。麗華先輩は僕といて楽しいのだろうか。



「麗華先輩、麗華先輩は僕なんかといてたのし......。」

「裕也君、その続き言ったら私少し怒っちゃうかも」


麗華先輩の人差し指が僕の頬をぐりぐりする。


「なんか、とか言っちゃだめだよ。裕也君のことが本気で好きな私に失礼だよ」

「...ごめんなさい」


はぁ。この先輩には敵わないなぁ。


「…よしっ。僕はもう大丈夫です。麗華先輩。改めてデートしましょう」


僕は鬱な気持ちを追い払い手を差し出し、


「うん!」


とられた手に指を絡ませ、歩き出す。




「はー。楽しかったね裕也君」

「はい。とても楽しかったです」

「うん。うん」


入園時間ぎりぎりまで遊び、今は麗華先輩を送っている。


先輩はニコニコしながら僕の手を前後にブランブラン振っている。


「あ、あと先輩」

「え?なぁにー」


本当は電車の中で渡す予定だったけど


「これ」

「裕也君。…そういうとこずるい。」

「なんかすみません」

「でも、うれしい。大好き。もっと好きになっちゃう」

「...離れてください。歩きづらいです」

「嫌です。もう絶対に離しません」

「はぁ」


姉にお土産を買うついでに花柄のハンカチを麗華先輩用に買っていた。


…。特に深い意味はない。


そう、強いて言うなら誕生日が一週間も過ぎてしまったからその利子だ。



「また、大事なものが増えました」

「…そうですか」

「裕也君には貰ってばっかりですね」

「そんなことありません。僕も麗華先輩からもらっているものがあるので」

「え?私何かあげたっけ」


これは本当だ。麗華先輩にはいろいろもらっている。


本人には言わないが。


「もうすぐ着きますね」

「裕也君、はぐらかさないでよぉ」

「はいはい」


そうして、麗華先輩の家に着き


「また、デートしてくれますか?」

「…」


…。今日は普通に楽しかった。


なら、


「デートじゃなくて、遊びになら行ってもいいです」

「そこはいいですよ、でよかったのに」

「はいはい」

「もぉ。でもいっか。」

「何がですか?」

「しーらない」

「...はぁ。じゃあ先輩さよなら」

「うん、また明日」


また明日?明日は日曜だけど。


…。


まぁいっか。明日のことは明日の僕が何とかしてくれる。


僕はゆっくり帰り道を辿った。






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