第20話

火曜日


今日は決戦の日。そして今はテスト開始二十分前。


絶対に負けちゃいけない。勝たなければならない。


受験の時並みの緊張がおし寄せる。大丈夫。


勝てる。あれだけ勉強したんだ。


僕は大きく深呼吸をして、最後のチェックをする。



そして黙々とチェックを進め、先生が来た。


「えー、テスト五分前だ.....」


僕はもう一度深呼吸をしてテストに臨んだ。





そしてテスト最終日。


キーンコーンカーンコーン。


ん。んー。あぁー。


声にもならない声を上げる。手ごたえはばっちり。

今度こそ負ける気がしない。


ってこれってフラグっていうんだっけ。


まぁ、なんでもいっか。


早く結果を知りたい。




それから、一週間ほどたちすべてのテストが返ってきた。


そして今は僕の家。麗華先輩は対面に座っている


今回は学年トップという成績を取った。


…ほんとにとれた。手ごたえがあったとはいえトップを取れるとは思わなかった。


だけど今回が前回より難しかったためか点数は前回より低くなってしまったけど。


「麗華先輩、今回のテスト何点でした?」

「ん?私今回も負ける気はしないよ?」

「へぇー。そうですか」

「どんなお願いしようかなぁ」

「じゃあ、先輩からお願いします」

「ふふ、私は…722点だよ」


…。........。


「ふふ…。ははっ。麗華先輩!」

「え?は、はい」

「僕は726点です!」


喜びが溢れてくる。ははっ。やった。ほんとに良かった。


「じゃあ、麗華先輩。僕のお願いを聞いてください」


よしっ。第一関門突破。あとは僕の勇気出すだけ。


そしてなぜか先輩の体がぷるぷるして先輩の顔が少しひきつっている。

そんなに悔しいのか


「........うん」

「麗華先輩。あのーそのー」

「…。うん」


何回も練習したはずなのにうまく言うことができない。


「えっと、ぼ、僕と....デートしてくれませんか?」

「…。え…。え?えーーーー!?」

「その、えーと?だめですか?」

「うんうん。そんな事無い。そんな事あるはずないよぉ」

「麗華先輩!?」


麗華先輩が泣いてる!?えっと。そのー。どうしたらいいんだろう。


「ひっく。裕也君から言ってもらえるなんて思ってなくて。もしかしたら「もう僕とかかわらないで」とか言われるかと思って」

「え?そんな事言いませんよ」


先輩はそんな事思っていたのか。


「ひ、ひっく。裕也くーん」

「......はい」


僕に抱き着いてきた先輩の頭を少し反応をうかがうようにゆっくり撫でる。


「裕也君、裕也君!もっと撫でてぇ」

「…はいはい」


嫌じゃ、ないよな?大丈夫だよな。


でも我ながら自意識過剰だと思う。

麗華先輩が僕のことを好きだから、デート、だなんて。


でも、それしか思いつかなかった。麗華先輩の言葉をうのみにするなら。


「麗華先輩、それから一週間遅れですみません」

「......ひっく。なに?」

「誕生日おめでとうございます。麗華先輩。これ誕生日プレゼントです」

「......裕也君。ありがとう。ありがとぅ。大好き。大好きだよぅ」


先輩は僕の胸に顔をぐりぐり押し付けてくる。少し苦しいが喜んでもらえてよかった。


それからかなりの時間先輩の頭をゆっくり撫で、やっと先輩が泣き止んだ。


「…ありがと。裕也君。これ開けていい?」

「はい。いいですよ」


大丈夫かな?先輩気にいってくれるかな?


「これって、ハンドクリームですか?」

「はい。先輩は料理をしてくれるのでいいかなぁと思って」

「ありがと!大事に飾っておくね!」

「いや、使ってくださいね!?」


でも、喜んでくれてよかったぁ。僕は女の子に贈り物をするのが初めてだから女性の姉さんに聞いてしっかり選んだものだ。


「…。あれ?まだはいってる。これ…。」

「えっと、それはー」


…それはくまのストラップで僕が勝手に入れておいたものだ。


僕の感性がくるっていなければかわいいと思って入れておいた。

喜んでくれるかは分からなかったが、僕からも何か送らないといけないと思った。


「おまけみたいなものです。要らなかったら捨ててください」

「そんな事絶対にしないよ!ありがとう。かわいぃ。これでいつでも裕也君のことを感じられる」

「…。」


送ったものが喜ばれると嬉しいな。


「それで、そのー,今週の土曜日でいいですか?」

「うん!楽しみー」

「そうですか」

「うん。えへへ。裕也君」

「はいはい」


まだ終わってはいないがようやく肩の荷のような、不安のようなものが消えた












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