第19話

「ですから麗華先輩くっつかないでください」 

「えー。少しくらいいいじゃないですかー。」


この人朝ごはん食べてから一応勉強の用意はしたが、ずっとこうしてくっ付いてくる。


「麗華先輩、成績落しますよ」

「大丈夫。毎日予習、復習しっかりすれば大丈夫だよ」

「.....まぁ、そうですけど。今回のテストで僕に負けちゃいますよ?」


っと少し挑発的に言ってみる。


「それはそれで、裕也君にどんな命令されるのか気になりますし」

「って言いながらさらにくっつかないでください」

「えへへ」


なんか今日は積極的だなぁ。なんかあるのか?


「麗華先輩今日はなんかあるんですか?」

「うんうん。何でもないよー」

「.....はぁ、そうですか」


絶対に何かあるなぁ。


でも今日は僕が何かあるわけでもないし。


うーん。


「で?そこで姉さんは何してるの?」

「んー?ゆうに膝枕されながらスマホ触っているのー」

「はぁ。はぁー。」


このままじゃ先輩にまた負けちゃうかもしれない。


でも勝ったところで要求は特に何もないんだけど。


「麗華先輩、そろそろはじめましょ?」

「はーい。でも、あと五分だけ」

「それって増えたりしませんか?」

「.....えへへ」

「はぁ」


それから、何とか先輩に離れてもらい勉強して、昼ご飯を食べまた勉強をして今はゆっくりしている。


「ちょっと席を外しますね」

「あ、はい」


多分トイレだろう。

ちょうどいい。姉さんに聞こう。


「姉さん」

「うーん?」

「今日って麗華先輩何かあるの?」

「うーん。ゆうー。知らなかったの?」

「え?何」

「今日、麗華の誕生日」

「え?........。」


え、あ。........。


ヤバい。ものすごい罪悪感。


自分は祝ってもらったのに。


…っ。クソっ。どんだけ馬鹿なんだよ。


でもどうすればいい。何をすれば先輩は喜んでくれる?


僕は先輩のことを知らない。


........。あ。


「戻りました。ん?どうしたの裕也君。そんな顔して」

「自分が情けなくなっただけです」

「えー!?どうして?何があったの?」

「いや、とくに」

「ほんとに大丈夫?」

「はい。麗華先輩ありがとうございます」

「え?ど、どうしたの」

「いえ」


先輩の頭を撫でる。


「嫌じゃないですか?」

「いえ、いつまでも続けてほしいです」

「それは、流石に無理ですね」

「えへへ」


僕は苦笑いしてしまう。先輩はテストが近いし迷惑をかけたくなかったんだろう。

多分。僕になんて祝われたくないとかじゃなければ。

はぁ、絶対にテストで負けちゃいけないな。


「ありがとうございます麗華先輩」

「ほ、ほんとにどうしたんですか?」

「いえ、特に何でもないですよ」


それから、先輩を甘やかす時間になった。

........ほんとに嫌じゃないよな?心の中で吐きそうとか思っていたら........。

流石に少しくらいは先輩を信用しよう。

そんなことない。きっと。


「じゃあ、先輩さようなら」

「うん。最後にもう一回頭撫でてくれますか.......?」

「はい」

「えへへ。...ふふ」

「じゃあ、先輩また明日」

「うん!」


…絶対に負けられないな。



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