第15話

「あのー麗華先輩」

「はい!なんでしょうか?」

「当り前のようにくっつかないでくれませんか!?」

「えーやだよー。今日は特別な日だしね♪」

「…僕の誕生日っていうだけじゃないですか」

「あーお義母さん。裕也君を生んでくれてありがとうございます!」

「…。そこまで大げさな話じゃないし。僕の母は麗華先輩のお義母さんじゃないですから」

「今は、まだ…ね?」

「この先ずっとです」

「ふふ…」


ちょっとやめてください。その不気味な笑い方。


まぁそんなわけで、今日は六月十五日。


僕の誕生日なんですが........。


麗華先輩は朝からずっとこんな感じにくっ付いてきたり、朝ごはんはいつもと違い豪勢になっていた。


........朝ごはんなのに。


でも、先輩の行為を無下にしたくないし、おいしかったから、そんなに苦ではなかったけど。


そんなこんなで今は学校の帰り。


それも学校の近く。


周りがひそひそなんか言っている。


はぁ。なんか慣れたなぁー。


最初こそほんとに恥ずかしかったり、イライラしていたりいろんな感情が募ったが今はそうでもない。


慣れって怖いなぁ。


「今日は裕也君のしたいことなんでもしちゃいます」

「じゃあ離れてください」

「それはー無理です」

「何でもしてくれないじゃないですか」

「物理的に無理なことは言わないでください。私と裕也君は一心同体ですよ?」

「........はぁ」


ほんとこの先輩は真顔で何を言っているんだか。


特に今日の先輩はなんだかいつも以上に甘えてくる。


「麗華先輩、なんで今日はそんなに甘えてくるんですか?」

「裕也君の誕生日だからです」

「ほんとですか?」

「..ほんとですよ」


これは絶対になんかあるな。


ここ最近きずいたことだが麗華先輩は嘘をつくとき頬を触る


なんだろうか。


誕生日は特別な日。それは僕にとってだ。先輩にとっても多少は特別かもしれないけど。


そして妙に甘えてくる先輩。


うーん。....あ、もしかして


「先輩、僕の誕生日にかこつけて甘えて明日からもそのまま甘えるとかじゃないですよね....?」

「うっ。そ、そんなことないよー」

「目をそらさないでください!」


さしずめ


『昨日あんなに抱き着いても大丈夫でしたから、しても大丈夫ですよね?』


みたいな感じだろうか。


麗華先輩いぃー。


「あ、それよりこれ」


話をそらしましたね。


「え?何ですか」

「誕生日プレゼントです。朝渡すつもりだったんですが」

「開けてもいいですか?」

「はい。いいですよ」


開けると中に手帳が入っていた。


「裕也君、かっこいいものとかより、実用的なもののほうがいいかなって」

「ありがとうございます!大事にします」

「よかったー。気に入ってもらえて」


っといって先輩は安堵する。


そうだよなぁー。人に贈り物するって結構勇気いるもんな。


「それを見ていつでも私のことを思い出してくださいね」

「…しません」

「えー」



それから少し歩きにくいので離れてもらって、特に何も話さず帰る。

不思議と気まずくはない。


「裕也君、今日は夜ご飯作りますよ」

「いや…そこまでは…」

「私がしたいんです」


こうなったら、先輩は折れないからなぁ。


「…分かりました。お願いします」


それから、朝より豪華な食事を食べ、少し話してから先輩は帰って行った。



先輩は僕の誕生日誰に聞いたんだろう??姉さんかな?


だとしたら、僕も麗華先輩の誕生日を誰かに聞いて、祝った方がいいよな。


今日は少し、いやかなり甘えてきたけど祝ってもらったし。


祝えなくても、プレゼントをあげよう。


でも、麗華先輩の友達って…誰?見たこともきいたことも無い。


はぁ、僕麗華先輩のこと何も知らないな。


せめて必要最低限のことだけでも知っておこう。








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