第11話

「先輩、今日は何処に行くんですか?」

「え?うーん。特に決めてないですよ」

「え?てっきり決めているのかと思ったんですが」

「私は裕也君といられればどこでもいいんですよ」

「…はぁ。そうですか」


そんな事を話しながら歩く。


すると


「…先輩。さりげなく手を絡めないでください」

「えー。」


先輩が少し不満そうな顔をする。


「そんな顔してもダメです。離しますよ」

「それはイヤ。ダメです」


先輩は急いで元の普通に手をつないでいる状態に戻す。


それより、普通に手をつないでるけど考えてみたらおかしいよなぁ。

僕は女子のことが嫌いなのに。


「ん?どうしたの?」

「あー、いや何でもないです。それよりほんとにどこに行きますか?」

「うーん」


あ、そういえばこの近くに公園があったような気がする。


「先輩、公園ならこの近くにあると思います」

「いいね!そこにいましょう」


僕たちは公園に行き、ベンチに座る。


「なんか、こうしていると付き合っているみたいですね」

「........。」


僕は無言で先輩から離れる


「逃がしませんよ」

「ちょ、先輩」


先輩が僕の膝の上にまたがり肩に腕を回して抱き着いてくる。

ちょ、ほんとにまずい。先輩からいい匂いがするし、何よりこういう事を姉以外にされたことがない。

すごいドキドキする。鼓動がやけに早い。


「早く離れてください」

「嫌です。はぁ裕也君のにおいだー。安心する」


先輩はいいながら僕の胸に顔をうずめてくる。

やばい。汗ばんできた。僕臭くないかな。

ってそれより先輩に離れてもらえば全部解決するな


「先輩、どうしたら離れてくれますか?」

「うーん。あ、じゃあ私のこと名前で呼んでください」

「…ジュース買ってあげるとかじゃだめですか?」

「ダメです!それか…私の彼氏、お婿さんになってくれてもいいんですよ?」

「ごめんなさい。分かりました麗華先輩」

「先輩はいらないよ?」

「それは…だめです。じゃないと先輩呼びに戻しますよ」

「むー。分かりました」


そしてやっと先輩が離れてくれる。が結構距離は近い。

それから、特に何も話さずゆっくりとした時間が流れる

不思議と気まずくならなかった。僕が先輩のことをどうとも思ってないからか、それとも…

あーやめやめ。くだらない。僕は麗華先輩のことを先輩としか見ていない。それでいいんだ。

外も暗くなってきた。

麗華先輩はというと、寝ていた。いつものきれいな顔が少しあどけなくなっていて、かわい…年相応の顔になっている。

この先輩は危機管理がなっていないと思う。

僕だって男なんだけどな。女子嫌いだけど。


「先輩、麗華先輩」

「ん、んー。おはよ。ごめんね。裕也君が近くにいると心が安らぐというか落ち着いちゃって寝ちゃいました」


 先輩がえへへ、と言いながら笑っている。ほんとこの人なんで僕のことなんかを。

まぁ嘘かもしれないんだけどね。


「もう暗くなってきました。帰りましょ?」

「うん!」


先輩が自然に僕の手を取ってくる。

…まぁいっか。どうせ言ってもきいてくれないし。


「麗華先輩、家まで送りますよ。」

「え、ほんとに?裕也君から言ってくれると思いませんでした。うれしいです!」


先輩はそういって腕を絡めてくる。


「勘違いしないでください。結構暗くて、先輩も女の子ですから男の僕がいたほうがいいと思っただけです」

「ふぅーん。そっかー」


先輩がニコニコしながら、こっちを見てくる。


「そんなことするなら、おくりませんよ」

「えー」


それからたわいもない話をしながら先輩を送った。


「じゃあ、また明日」

「じゃあ、またいつか」

「もー、そこはまた明日でいいんですよ」

「はいはい、分かりました」


今の先輩と、僕との関係は自分でも分からないけど........。認めたくないしほんとに不本意だけど関係は前進していると思う。

少なくとも先輩のことを普通の女子とは見なくなった。


はぁ僕チョロいな。


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