第6話

「お、お邪魔します」

「はい、どうぞ」


あれから、いろんな話をしながら家に帰った。


「先輩、先にお風呂に入ってください。着替えは少し大きいですが、姉の着替えがあります。」


「う、うん。分かった」


ふぅ。僕はタオルで髪を乾かしながら、一息つく。


これから、いろいろ話すことがあるな。


僕はあの麗華先輩のことをまだ信用できていない。


過去のことで脅されるのかもしれないと考えているくらいだ。


はぁ、この性格はだめではないけどいい事ではないのかもな。


それより........改めて思うけどなんで先輩のような人が僕なんかのことを…。


「裕也君、お風呂いただきました」

「は、はい。僕も入ってくるのでゆっくりしていてください」

「うん」


麗華先輩いつもはきれいって感じだけど、姉がいつも来ている緩い服を着ているとかわいく見えるなぁ。


おっと。あぶない危ない。可愛さに騙されてはいけない。


僕はそれからお風呂を上がり、そこそこ長い髪の毛をドライヤーで乾かし、リビングに行く。


「先輩、お待たせしました」

「う、うん」


お互い緊張している




「「あ、あの」」


「…先にどうぞ」


「…じゃあ、裕也君はどうしてそんなに人を、というか女子を疑うの?私が教室に行った時も女子とできるだけ距離を取っているように見えました」


「高校入る前はそんなことなかったんですけどね........。」



そして、過去のことをすべて話した。


もちろんあの事も含めて


「まぁ、そんなわけで僕は今の性格になったんです」


「..........」


「別に同情しなくていいで…」


す。と言おうとしたが



「こんなことしかできなくてごめんね」


と言いながら僕のことを麗華先輩は抱きしめ、頭をなでていた


離れようと思ったけど、落ち着くというか、あったかいっていうか。力が抜けていく


「裕也君は頑張りました。他の誰が見ていなくても、認めなくても、私が見ています。」


「........。」


優しい声音で僕の心を溶かしていく。


「裕也君頑張ったね」


「…はぃ」


ほんの少しだけ報われたような気がした。

僕は泣かないようにするのが精一杯だった。



少し時間が経ち、麗華先輩が聞いてくる


「裕也君。今でもその人のことっていうか一華のこと好きなの?」

「全く、微塵も。会いたくも声も聴きたくありません。先輩あいつのこと知っているんですか?」

「同学年だし、知っているよ。」


確かにそうか。


「次は先輩の番ですよ。何で僕のことなんかが好きなんですか?」



「それはひ・み・つです。私と付き合ってくれたら教えてあげます」


「え、えーー。それはないですよ」


「そんなに大した理由じゃありません」


なんか若干不機嫌のような気がする


(やっぱり。覚えてなかった)



先輩がボソッと言う


「何か言いました?」


「何も言ってません」



やっぱり若干不機嫌なんだよな。



「あ、先輩。もう結構外暗いですよ」

「あ、ほんとだ」


時計を見ると七時になるところだった。


「もしよかったらですけど、ご飯食べていきますか?」

「え、いいの?」

「親とかは大丈夫なんですか?」

「共働きで遅くまで帰ってこないから。それより裕也君が作ってくれるの?」

「あんまり期待しないでくださいね」

「大丈夫です。例え毒が入っていても裕也君が作ってくれたなら食べます」

「さすがにそんな事しませんよ!?」



それから簡単に作れるカレーとスープを作り一緒に食べた。


「裕也君って料理できるんだね。いつ私のお婿さんになっても大丈夫だね」

「そんなことは多分ないです」


まぁそんなやり取りをしながら食べて、夕飯は終わり先輩を駅まで送る。


「ここでいいよ。ありがとう」

「いえいえ。先輩」

「ん?何」

「ありがとうございました。そしてごめんなさい。先輩を疑ったりして。でもまだ先輩のことを信じ切れていない自分がいます」

「うん。裕也君、私は裏切らないよ」

「…はい」


だめだ。心の奥底で信じるなという自分がいるのが分かる。


「私は裕也君のこと好きだから。大好きだから。裕也君も私と同じように私のことを大好きになってもらいたい。っていうかもらいます」

「信じ切れないかもしれませんし、疑うと思います」

「それでも好きだから」


「........。明日もここに一時でいいですか?」

「うん!また明日」

「はい」

「楽しみにしてます」


明日のスケジュールが決まった。









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