スワンソング

@ROTA77Z

スワンソング

 地上に出ることがかなわなくなって長い時間が過ぎた。


 我々は地底に潜らなければならなかった原因(戦争、疫病、それとも侵略?)さえも忘れてしまう月日の間潜伏し続けていた。


 そこに住んでいるものには、地上と言う天井の無い空間が有ることは知られているが、伝承でそこにたどり着いたものは、感動の余り一言発して仕舞うが、その一言を発すると死んでしまうと伝えられている。


 定かではないが誰もがそう信じていた。


そう俺も信じていたが、この頃やけに地上の事が気にかかる、同期の仲間に聞いても皆何かを感じ取っているようだ。


 気の早い奴は見てくると言って、地上への道を探索しに行ってしまった。


 無論、帰ってはこない。


 その後もちらほらとそういった奴が出てきたが、同様な結果だった。


 しかしこれが引き金となって行くんならみんなで一斉に見てくる方が、相互で助け合えるから、と言う意見が大半を占めたので、明日決行となった。


 先人の作った道や新たに道を作ってたどり着いた地上は、地下と同じく暗い世界で伝承の通り何処までも天井の無い所だった。


 周りを探索するために、高いところへ昇る。地下と違って空気が大量に流れている、それを感じるとより高い所から地上を見てみたくなる。


 やがて、世界が少しずつ鮮明さを増してきた。地上と言う空間の広さを認識しつつある自分の中で、何かが変わろうとしていた。


 より大きな存在、この広大な空間を支配する、と言ったような感覚に囚われる。これが誇大妄想ってやつか、と自己認識したところで大きく延びをしたら、服が避けてしまった。


 窮屈な服を脱ぎ捨てると、解放感と身の軽さを感じる。それにあおられてか、思わず声を出してしまった。


「ミーン、ミーン」


 よし、この軽くなった体で地上の隅まで見てこよう、もう声を発してしまったのだから、命続く限り……













「「ミーン、ミンミン」」


 そうか、俺はひとりじゃ無かったんだ。

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