絡まる色と欲

「さようなら」


私の頬を濡らして一粒の雫が流れ落ちた


目の前に広がる真っ白で大きな湖の真ん中に浮かんだ少女

まるで水面に寝ているかのように静かにその時を止めている


眠る少女からじわりじわりと何かが溢れだす

ゆっくりとでも確実にその周りの水を赤く染めあげていく


私は湖の畔に立ち、足だけ浸かってただそれを眺めている


白い湖に広がっていく赤は段々とその質を変えていく


静かに絶え間なく押し寄せる波紋が、次第に足に絡み付く程のドロドロとした波

とかし重く暗い水へとその質を変える


数多の手のように水面に立つ波に浮力を奪われた少女の体は

暗い水の底へと呑み込まれ一つの気泡だけ残しその存在を消していった


パンッと小さく音をたて破裂すると、それにつられてゴポッゴポッと沸き上がり

また割れる


全ての泡が無くなる頃には静寂が辺りを包み赤が湖全体を染め尽くす


「フフフッ」私の横で誰かが笑う「ふふふっ」それにつられて私も笑った


ようこそ、吐き落とされた「赤の世界」へ

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