第9話 フクロウの森

第9話 フクロウの森


 俺たちは町に帰ってきた。

 冒険者ギルドに就職したので身分証で出入りできるのだ。


 今日はショーンさんはいなかった。

 立派になった(のか?)俺を見てほしかったのだが次の機会にしよう。


 ギルド本部に近づくと何か騒がしい。


「何か騒いでるよ」


「おう、予想通りだ。まあ心配するな。問題ないからな。お前らは裏から回って隠れて見とれ」


 うーん、俺も大体予想はついたな。

 しかし爺さんどんな手を打ったんだ?


「おう、やかましいぞ、何の騒ぎだ」


 爺さんはしかつめらしい顔でギルドの建物に堂々と入ってく。俺たちは裏の通用口から回り込んで…おっと、こっちにも見張りがいるぞ。


「泥棒じゃないよね」

「そうだね。たぶん騒いでいる奴らの仲間だよね」


 こんなところでぐずぐずしている暇はないぞ。いいいところを見逃がしてしまう。

 よし。俺は気にせずにすたすたと歩いていく。


「よう、ガキ、ここになんのようだ?」


「ここは僕のうちだよ。うちに帰るんだ」


 俺の返事が意外だったのか見張りはびっくりした顔をして互いを見かわした。

 まだ若い高校生ぐらいのやつらだ。

 森であったやつらより少し若いぐらいか。


「わりいな、ここは通すなって言われてるんだ。表に回れ」


「いやだね」


 俺はいきなり駆け出して裏口にとりつく。


「このガキ!」


 見張り二人は慌てて俺のことを追いかけてきて、俺の襟首をつかんだ。

 うんうん、正当防衛成立かな?

 とか思っていたら追加で殴りかかってきた。

 おお、これでももう言い逃れはできない。


「あ゛?」


 俺は攻撃をひょいとかわす。

 まともな訓練も受けてないガキの攻撃なんか当たるわけないだろ。


 これなら伸しちゃっても…


「あががっ」


 ばたばた…


「まったく、うちのカイちゃんに手を上げるなんてなんて人でなしなんだろう…」


 姉ちゃんの魔法でした。

 電撃系の魔法から電流を下げて電圧を上げた魔法。つまりスタンガンみたいなやつだ。


 電撃系は教えるの苦労したんだよね。


 この世界には電気がどういうものか、そういう概念がなくて、水の精霊に手伝ってもらって電気を起こしたりして姉ちゃんになじんでもらったのだ。

 それでも電流を害のないレベルにするのは難しく、姉ちゃんのスタンの魔法だと回復した後もひどいめまいや吐き気に苦しむことになる。


 まあ、いいけどね。こいつらがどうなろうとも。


「よし、回収」


 俺は水精霊勇者パーティーに指示して見張り二人を裏口から運び込んでそこら辺に転がす。いいの。どうせしばらくは目を覚まさないから。

 そして探してもまともに動けないから。


「さあ、姉ちゃん急ぐんだ。いいところを見損なうぞ」


「うん、そうだね」


 俺は除きの準備を始めた。


 ■ ■ ■


「よーし、水鏡」


 水を使って遠方の景色を映し出す技だ。


 今回は音も聞こえる至近距離何だけどね。それでも水鏡の方がよく見えるから。


『というわけでね、あんたの所の新人の攻撃でうちの若いのが大怪我したのよ。腕のやけどはひどいものよ。他にも骨折とかあるのよね。どうしてくれるの?』


「おお、いい感じに盛り上がっているね」

「うん、どうなるかな」


『『『『わくわくです?』』』』


 話しているのはボンテージなお姉さんというかちょっとおばさんの女の人だ。もうちょっとで痴女である。

 せんだっての二人は若かったから許される雰囲気があったがこれは犯罪だな。


『ふーん、じゃが先に手を出してのはあの若いのだぞ、うちの新人はまだ幼い女の子だ。いきなり痴漢を働けば反撃もしたくなるだろう』


『あら、そういうことなのね。女の子が自分を守るために襲ってきた男を攻撃しても罪にはならないわよね』


 じいちゃんとナナエさんだ。


『さっきも言いましたが私たちはそちらがいきなり攻撃をしてきたと聞きましたよ。それに証拠もあります。

 念のためということでうちの若いのには「言の葉の記憶」を持たせてあるんです。

 知ってますよね』


『ええ、知ってますよ。自分の声とか周囲の話声とかを記録する魔道具だすね。なかなか高価なものですよ。よくそんな使い方できますね』


 と、これはゴートンんさんだ。

 相変わらずすべてを韜晦するようなとぼけた人だ。


 魔道具の話をした相手方はいかにも魔法使いといった風貌の男だった。

 大人だがまだ若く見える。青年といってもおかしくないかも。

 大きな杖を持っていて、大きくねじれた木の杖で杖の先端にフクロウが止まっているようなようなデザインの杖だ。


 そしてその左手にはペンダント。

 そしてペンダントから音声が流れだした。


 あの冒険者の声だな。

 つまりそのペンダントはボイスレコーダーだというわけだ。


 そしてその内容はちょっと下品ではあるが若い冒険者が新人を勧誘し、いきなり悲鳴を上げものだった。

 話の内容は覚えていないけど、なんか都合の悪いところは消されているような。


『ふむ、なるほど、確かにいきなり攻撃され地ように聞こえるな。

 だが不自然な間もある。まさか証拠品に手を加えたりは?』


『まさか、それは犯罪じゃないか。

 そんなことはしていないよ』


 今度口を開いたのは三人目。

 体格のいい男で、筋肉がすごい。マッチョだ。

 でもなぜかこいつが一番まともに見えるのが不思議だ。


 彼ら三人がフクロウの森のトップなんだそうだ。


 彼らが言うには『いきなり攻撃をかけるのは犯罪である』のだから犯罪者である新人を引き渡せというものだ。

 つまり姉ちゃんを。

 ふざけた奴らだ。天罰を…


 って、うちのギルドの三人が微妙に楽しそうなんだよな。

 その気配のせいか、ガタイのいい男、話からおそらく名前は『ビヨルン』らしい。

 魔法使いが『モンタギュー』ケバ女が『ドミニカ』のようだ。


 彼らの主張に対してゴートンさんは一つずつその主張を確認して行く。


 そしてそれが終わったとき、爺が言った。


『そんじゃ、これを見てもらおうか』


 反撃開始?

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