第4話 驚きの連続

第4話 驚きの連続


「こりゃ、驚いたわ。坊や、これは収納魔法かい? いや、これは全く傷んだ様子がないね…ひょっとして収納のスキル持ちかい?」


「これはちょっと驚いたね」


 ナナエさんとゴートンさんが驚いているが俺も驚いている。


「えっと、収納魔法てなに? スキルとどう違うの?」


 普通に水芸を使っていたから気にしなかった。

 姉ちゃんは魔法使いまくりだけど、あれもスキルだと思ってたよ…


「ふーむ。そうだね。こりゃ一回話をすり合わせないといけないようだね。まあとりあえず坊やが収納ができて、部屋の荷物がどこから出てきたのかわかって安心したよ。

 さて、一つずつ教えようかね」


 ナナエさんがその違いを話してくれた。


 彼女によると魔法というのはこれは技能で、練習すれば身につくものらしい。

 話を聞く限り練習すればピアノが弾けるようになる。練習すれば柔道が強くなる。というのと同じようなものだ。

 なのでもちろん才能の差というのは厳然として存在する。


 練習してもへっぼこな人はいるし、ものすごくうまくなる人もいる。

 姉ちゃんあたりは全属性の魔法をそれなりに使いこなし、水に関してはかなりの熟練者。

 魔法の才能に恵まれたといえるのではないだろうか。


 対してスキルとというのは『神様の贈り物』と呼ばれているものだ。


 大概は生まれたときに持っているもので、後天的に取得するにしても練習したから手に入るというようなものではなく、神様的な何かに贈り物としてもらうことが条件みたい。

 とすれば俺達地球からの転生組はかなり恵まれていたということだな。


 でこのスキル。スキルじゃないとできないことというのが厳然として存在する。


 すでに出た話だと収納魔法と収納のスキルだ。


 収納魔法というのは魔法なので練習すればできるようになる…可能性がある。

 これは大きなカバンレベルから馬車一台分ぐらいのものまでやはり才能によって差が出て、そして時間停止機能がない。

 ここ大事。


 それでもこれが使えるとかなり便利で生きていくうえでアドバンテージになるようだ。


 で、収納スキルというのは神様がくれるもので、現在確認されているだけでも10人ぐらいしかいないらしい。

 世界中で。


 すごい確率だ。


 魔法と決定的に番うのはその容量。かなり大きいらしい。

 そしてしまったものの時間が止まるので何を入れても痛まない。

 国などに雇われれば一生勝ち組決定だ。


 そういえば神様もどきの所でも見た記憶がある。誰がとったのかな?


 でもこれでわかった。


「じゃあ、僕のは魔法でもスキルでもないです。僕のスキルは『水芸』というやつで、水をこんな風にできます」


 と俺は水を弾にしたり噴水にしたりして見せてみた。あるいは魅せてみた。なかなか見事で二人とも拍手喝采だ。


「ありがとうございます」


「でもそれじゃこれは?」


 当然の疑問でしょう。


「えっとですね、これは精霊君たちに預かってもらっているんです」


「「ええーーーーっ」」


 あれ? これが一番驚かれた。


■ ■ ■


「つまりカイ君は精霊様と仲がいいわけね? それで水芸なんてスキルをもらったんだ…」


 ちょっと違うんだけどまあいいか。

 今まで気にしなかったけど『精霊』って神様の仲間みたいな扱いなんだってさ…びっくりだ。


「それで精霊様が荷物を預かってくれると?」


「はいそうです。精霊たちに預かってもらうとお肉とか野菜とかは傷まないんですよね」


「時間が止まっているということ?」


「いえ、そうじゃなくて精霊の世界だとものが痛むとかいうことはないんだそうです」


 これは完全に法則の違いだ。

 精霊世界、この場合は水の精霊界には『腐敗』『劣化』という法則がない。だから生ものを入れておいても痛んだりはしないのだ。


「でもそれって時間停止と同じなんじゃないのかい?」


 確かに一見そう見える。だが全く違うのだ。


「つまり、温かいものをしまってもらうと冷たくなります。あそこは水の世界です。火の付いたものは入れられません。消えるんじゃなくて火というものが存在できないんだそうです」


 熱が全くないわけではないのだが水として安定できるレベルですべてが落ち着いているのだ。

 溶岩とかも液体で水属性と言えなくもないのだけれど、標準はお水が安定する状態。


「なるほどね。つまり精霊様の都合が優先されるというわけだね」


 あれ? そうなるのか?


「まあとりあえずいろいろ分かったよ。しかし扱いが難しいね」


「そうだね、当面は内緒にしてくしかないだろうね」


「いろいろ違うのは分かるし、頼んでしまってもらう以上スキルのような自由が利くわけでもないのは分かったけど、はたから見ればスキルに見えるかもしれないからね、ここ以外では大事さ」


「そうですね、できれば収納魔法が覚えられるといろいろごまかせるんですけどね。こんな感じで」


 ゴートンさんの振りでナナエさんは熊を自分の収納にしまって見せてくれた。

 黒い穴に熊がずるんと飲み込まれていった。


 精霊に頼む場合もがま口の中にずるんと飲み込まれていくわけだし、がま口は見えないから収納魔法みたいにも見える。

 でも俺は水芸のおかげでほか属性の魔法が全く使えないのだ。


「だったら私が覚えます。母ちゃんに魔法はいろいろ教わったんだけど、母ちゃん収納は使えなかったから、教われなくて」


「そうかい、だったらあたしが教えてあげるよ。ただこれは結構難しいよ。容量の大きいものとなると…」


 とナナエさんは首をひねった。でもたぶん…


「大丈夫だよ、姉ちゃんは全属性の魔法が使えるから。それに魔法のコツとかすごいし」


「「ええーーーーっ、なんだってーーーーっ」」


 また驚いたよこの人たち。

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