第3話 ナナエさんは分かっている
第3話 ナナエさんは分かっている
「おれほれ、いつまで寝てるんだい、もう昼だよ。いくら疲れているからっていくら何でも…」
そんな声で俺の意識は覚醒に向かっていった。
入ってきたのはナナエさんで、どうやら起こしに来てくれたみたいだ。
そしてなぜか部屋の中を見て固まっている。
「あんたら…この荷物どこから出てきたんだい?」
ああ、そういうことか…昨日までとガラッと変わって家具とか置いてあるし、布団も部屋に置いてあった煎餅じゃなくて羽毛やら綿やらをふんだんに使った自作(といっても作ったのは母ちゃん)の物に代わっている。
そりゃびっくりするか。
「ん? おかあちゃん…何?…」
ついで姉ちゃんが起きだした。でもちょっと寝ぼけている。
「なっなっなっなっ…何やってんだいあんた達は裸で!」
おおう、そういえば姉ちゃんも俺もすっぽんぽんだったぜ。
■ ■ ■
「いやあ、田舎もんだねえ」
ゴートンさんがそう言って顎髭をこすっている。
俺たちが住んでいたあたりは結構寒いので、裸で抱き合って眠るのは結構普通だったりするのだ。
今までそれが当たり前だと思っていたが…
「にしたってねえ…アイナはもう十二だろう? 見た感じすでに女の子だ」
「え? 私は女の子ですよ」
姉ちゃん意味わかってない。
多分初潮のことだろうと思われる。
確かに先日、姉ちゃんはお赤飯の日を迎えて、母ちゃんにいろいろ教わっていたのだ。
だがそこで反応してはいけない。
俺はその手のことは知らないことになっているのだ。
知らん顔してジュースをずずずっと。
「いいかい、田舎じゃそういうのもあるかもしれない。だけどここは都会なんだ。どんなに貧しくったって、夜寝るときに裸で寝たりはしないんだよ」
「そんな…カイちゃんを抱いてダメなんて!」
姉ちゃんが雷に打たれたみたいに衝撃を受けている。ほんとにずががーんて感じ。
「いやいや、あんたらの状況だからね、一緒に寝るなとか言わんよ、兄弟だしね。でも裸はダメ。いろいろまずいだろう? 女の子の日とか? ね?」
「えっと特に気になりませんけど…」
うん、姉ちゃんは全く気にしてないな。
でも父ちゃんは蹴り飛ばしていたなあ…俺はいいみたいだけど。
「とにかく、年頃のレディーが裸で弟とは言え男の子と抱き合っているのはよくないの。わかりなさい」
「えー、でも父ちゃんも母ちゃんもいつも裸でいろいろやってましたよ」
姉ちゃんかそう言ったらナナエさんは頭を抱えてしまった。
全くあの子たちは…とか言っている。
でも田舎って本当にそういうのあけすけなんだよね。
結婚式とかあると俺たち子供に新婚さんがアンアンギシギシやっているのを覗かせに行ったりさせるし。
だから田舎のガキは男と女がどういうことをするのか、どうなっているのかみんな知っているのだ。
ふっちゃけそういう性教育なんだよ。
だから親だって子供が小さいうちはあまり気にしないしね。
多分姉ちゃんはそろそろ恥じらいとかそういうのを教わる年齢だったんだと思う。でも母ちゃん死んじゃったしね。
「はー、このままではいけないね。私に任せておきな、ちゃんといろいろ教えたげるから」
いや、性教育的なものはかなり進んでいるとおもうが…まあ、姉ちゃんもそろそろ恥じらいとか覚えるべきなんだろ。
こんな無防備では姉ちゃんの将来が心配だ。うん。
「とりあえず服を買うよ。さあ、出かける準備をおし!」
おばちゃんやる気になってます。
でもお金がありません。
「あの…さすがにお金が心もとないんですけど」
「子供がそんなこと心配するんじゃないよ」
「そういうわけには…」
借金を作ってはいけません。
これは母ちゃんの教え。
父ちゃんも母ちゃんも借金というのはしたことがないそうな。
この世界は基本的に金利が高いんだよね。
一度借金をすると癖になって、借金を返すために謝金をするようになって、そうなれば後は破滅コースがあるだけ。と俺たちは教わった。
母ちゃんの友達なんかにもそうして娼婦にまで落ちてしまった人もいたらしい。
「うーん、確かに言うことは正しいんだけど、ちょっと悲しいねえ」
「まあ、ナナエさん、子供達にしてみれば昨日あったばかりの知らないおばさん、知らないおじさんだからね。
信頼という木は育つのに時間がかかるというじゃないですか」
そう言ってくれたのはゴートンさんだ。
「それに、今は換金できそうな素材がありますから、それを買い取ってもらえればお金を借りなくても済みます。
借りなくて済むお金ですから」
「ああ、確かにね。借りなくていいお金を借りるのはバカのするこった。
で? 何があるんだい。あたしゃこのギルドの敏腕営業部長だよ。よそよりもいい値で換金してみせるよ」
俺と姉ちゃんは頷きあい。どんと獲物を取り出した。
父ちゃんたちを殺したアーマーベアーだった。
ナナエさんが飛びのいた。
しぇーのポーズだ。
うん、この人は分かっている人だと俺は信じていたよ。
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