1-11 パックんちょ
1-11 パックんちょ
精霊の泉。それは水の精霊界とのゲートである。
俺がここに住むようになって、精霊たちと契約したのでここに精霊仙人が精霊界との門として泉を作ったのだ。
水が滾々と湧き出る豊かな泉…に見えるがただ泉ではない。
普通の水は地下水脈から出てくるわけだけどこの水は水の精霊界から直接わいてくる。
水の質もいいし力に満ちている。
この村が水に困らないのはこの泉のおかけだ。
以前も普通に農業できるぐらいには水はあったようだが、現在はふんだんに潤沢に水が使い放題だったりする。
水が持つ力の所為で農作物の生育も状態も良い。田んぼだってできる。
自分で暮らすのだからと俺も力を入れていたのだ。
だがもう必要ない。
こんな仕打ちをする村のために泉を維持する必要はないだろう。
「よし、行くよ」
『うむ、細かい制御は任せるがいい~』
俺の言葉に従って泉の水が大きく盛り上がり形を成していく。
これなら熊と言えどもいちころだ。
さて、姉ちゃんの方はどうかな?
俺は姉ちゃんにつけている精霊勇者チームに念話をつないだ。
なんでも精霊とのつながりというのは強固で、こことは全く違う水の精霊界にまで届くのだそうだ。それに比べれば同じ世界の中、その距離はあって無きがごとし。なんだって。
『ハロハロです?』
よし、つながった。
◆・◆・◆
さて、ここからは水の精霊たちの報告によるものだ。
姉ちゃんを連れて行ったのは村の村長と中心核の男二人、この一件に女たちはかかわっていない。たぶん反対されるのを嫌ったのだろう。
そして男たちは思った通りに下種だった。
クマが来るルートが特定されるのは山の地形の所為で通り道が限られるからだ。
野生であれば乗り越えられるような道であるが、野生であるがゆえにわざわざ困難を選んだりはしない。
そんなことをするのは人間だけだ。
なので熊も大きな岩と岩の間にできた隙間を来ると考えられるのだ。
村長たちはそこにつくなり話し合ったらしい。
「熊はいつごろ来るだろうか?」
「まだ来ないだろう」
「なら少しは楽しめるかな?」
「臭いが立ち込めているといいかもしれん」
三人で姉ちゃんをレイプにかかった。
やはり勇者チームをつけておいて正解だった。
そしてこいつらには勇者チームは見えない。
襲い掛かろうとしたら足になにか(勇者の剣)が刺さって激痛が走ったり。
股の下から鋭い衝撃(格闘家のパンチ)が飛んできたり。
尻の穴に水のドリル(俺の攻撃を見て覚えたらしい)の魔法が飛んできたり。
そんなこんなでパニックになりかけたところで森の奥から獣の声、そしてざわざわと揺れる森の木々。
「ひぃぃっ、クマが来た!」
「逃げろ!」
倒けつ転びつ逃げる村長たち。転げ方がすごかったから骨折ぐらいはしているかもしれない。
しかしそれは正しかった。本当に熊が出てきていたのだ。
なぜなら精霊クレリックが熊を呼びに行ったから。
突っついて怒らせて引っ張ってきたんだと。危ないことをする。
一方姉ちゃんは精霊たちと会話派ではないが姿を見ることはできる。加護があるからね。
精霊たちは素早く姉ちゃんの縄を切り、姉ちゃんは即座に木に登った。
この辺りは木が密集していて登るのはの簡単なのだ。
そしてとうとう熊が現れた。
前回村に来たときはよく見れなかったが今回はよく観察した。
身長は四mもある。
足が二本、腕が四本。そして外側を黒光りする装甲版でおおわれている。大小のタイルをぎっしり並べたような装甲だ。
頭から肩、背中。腕の甲がわが装甲でおおわれている。
父ちゃんの大剣の一撃すらはじく強靭な装甲版。これをもってこいつはシールドベアと呼ばれるのだ。
父ちゃんと母ちゃんの敵である。
「うーん、爪とかもすごいな…」
『うむ、あれは鉄の鎧さえも切り裂く極めて凶悪なできなのじゃ。まともにやれば勝ち目はない…かもしれない』
うむ、まあやりようはある。
だがわざわざ危ないことをする必要もない。
俺は現場に急行しながら熊の様子を精霊との視覚共有で観察する。
もし、こいつが村に行くのであれば一先ずは見逃してやってもいい。と思わなくもない。
父ちゃんたちの敵なので当然倒すが、村を守ってやる義理は、もうないだろう。
だが熊は村ではなく姉ちゃんを気にしている。
「ふっ、クマの死刑は決まったな」
俺が熊を倒すと決めた瞬間だった。
さて、クマはでっかいのでこの辺りの木だと倒されてしまったりもするのだが、そこは姉ちゃん。冒険者の修業をしていただけはあり、木に登ると上の方でひらりと隣の木に移る。
クマは当然姉ちゃんのにおいの付いた木を気にして、その巨体でゆっさゆっさとゆすったりする。
多分木に登るような獲物を捕ることもあるのだろう。
姉ちゃんは一生懸命木にしがみついている。
揺れているのは別の木だが、あんまり揺れるので他の木にも影響が出ているのだ。
頑張れ姉ちゃん、すぐに行くぞ。
◆・◆・◆ ちょっとアイナちゃんside。
私はここにきて自分の運命の急展開にめまいがする思いだった。
両親が死んだ。
優しい両親だった。
血のつながらない私を本当に大事にそして厳しく育ててくれた。
村を守って死んでしまった。
そこからは血が凍るような出来事が続いた。
村長の息子が私をレイプしようとしたのだ。
私はそれなりに鍛えているから力づくなら一対一で負けたりしない。
だけどかわいいカイトを人質に取られると困る。
カイトの無事と引き換えに股を開けといわれたとき本当に身も凍る思いだった。
はしたないけどちょっとちびりそうだった。
でもこいつらはあっという間にカイトに駆逐されてしまった。私も一撃入れたからよしとする。ちょっと恨みがこもっていたから腕は破壊してしまったけど。
そしたら次は村の男たちが私たちをクマの餌にして時間を稼ぐと言い出した。
何考えてるの? あなたたち本当に人間?
でもこういうことはよくあることだ。
もし冒険者が間に合ったとしてもきっと両親を亡くした私はその冒険者の性的なおもちゃとして差し出されていた。
地方の村ってそういうものだから。
それでも何とかカイトだけでも…そうおもった。でもカイトは平気、と目で語っていた。
うん、カイトを信じよう。
カイトと一緒に戦ってそれで死ぬならそれでいい。
そして森の奥に連れてこられて、そしたらまたレイプの危機、この村長一家は下半身でものを考えているわ。
でもこれも問題なし。カイトとよく遊んでいる精霊たちが村長以下をメタメタにしてくれた。
そして開放。でも時間がない。私は大急ぎで木に登り身を隠した。
クマは木登りをする動物だけど、この辺りの木はあの熊には細すぎてうまく昇れないはず。
案の定熊は木には登らず、木を倒すことにしたらしい。
ゆっさゆっと、メキメキと隣の木が倒れていく。
クマは倒れた木に走り寄り、枝をかき分けて何かを…というか私を探している。
でもこれからどうしよう。カイちゃん無茶しなきゃいいけど…
そんなことを思っていたらものすごいものが現れた。
巨大な蛇だ。
太さで私の身長より大きい。
長さなんか全然見えない。
表面は水晶のように月の光に輝き、体は真っ黒。とげとげでなんか痛そうな外皮。
こんな魔物が山にいたの?
えっとすみません、今度は本当にチビってしまいました。
というか本格的に漏れちゃいました。
ああ、これじゃ臭いでばれる…
ちょっと絶望していたらその蛇はクマに向かっていったわ。
クマもさすがに腰が引けていて、必死に鳴いて威嚇をしている。
どうなるのか…と思っていたら…
パックんちょ。
一口で熊、食べられちゃいました。
そしてやっと気が付いた。
蛇の頭の後ろに我が愛しの弟が乗っていることに。
すごい、なんか体の奥で何かがドクンと脈打った。
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